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日本株と相性の良い資産は?
皆さんこんにちは。
今回は、皆さんの資産を分散投資することにより、本当にリスクを抑えることができるのか、という事について考えてみたいと思います。
ここのところ日本株の調子がいいので、多くの皆さんは株式投資のお話を期待されているかもしれませんが、こういう時期だからこそ敢えて分散投資について考えてみたいと思いました。

そもそもリスクにはいろいろな種類があります。

・流動性リスク(金融商品が売却できないリスク) ・信用リスク(金融商品の発行母体が破綻するリスク) ・カンントリーリスク(これも一種の信用リスクかもしれません) ・為替変動リスク

などなど・・・

なかでも金融商品を所有するという事において、最も私達が敏感になるのは「価格変動リスク」だといっていいのではないでしょうか。
あるいは、信用リスク、カントリーリスク、為替リスクなども大きな意味(価値がゼロあるいは極めて小さくなるという意味での)で、一種の「価格変動リスク」に丸め込んでしまってよいのかもしれません。

このようなわけで、金融の世界で「リスク」という言葉を使う場合、「価格変動リスク」を指す場合が多いようです。
従って、今回は「リスク」=「価格変動リスク」という考えに立ってお話を進めてゆきたいと思います。

さて、そのリスクです。
まず、(以前もご紹介したことがあるのですが)リスクの正体は「値動きのブレ」であり、「標準偏差」という数値で数学的に表現する事が出来ます。
興味のある方は下記のサイトをご覧下さい。
http://www.ginzafp.co.jp/info/16.html

例えば、Aという架空の国の株の

・リターン(年間の平均収益率)が+10%
・リスク(標準偏差)が18%

いずれも過去20年間の実績値、ただし架空ですよ。リスクは小さいほうが値動きのブレが少なく、安定した金融商品だということになります。

これに対し、Bという国の債券は

・リターンが+5%
・リスクが10%

だったとしましょうか。

では、皆さんが仮に100万円のお金をもっていて、

・A国の株に50万円
・B国の債券に50万円

投資したとしましょう。

果たしてこの場合、資産全体のリスク/リターンはどうなるのでしょうか?
実は「A国の株」と「B国の債券」の間の「相関係数」によって随分と変化してしまいます。 「相関係数」についても何度か取り上げましたが、これは二つの個別の資産の相関性を示す値のことです。

この値は-1から+1の間の数値をとり、-1では二つの資産は全く正反対の値動きをし、+1の値をとった場合二つの資産は全く同じ動きをするということを示します。
また、この相関係数がゼロの値をとった場合、二つの資産はお互い全く関係なく値動きをするということを表しています。

では、先ほどの例に戻りまして。

・A国の株に50万円
・B国の債券に50万円

を購入したとして、仮に二つの資産の相関係数が +1の場合、皆さんの資産のリスク/リターンはどのようになるでしょうか?

答えは

・リターンは+7.5%
・リスクは14%

繰り返しになりますが、

A国株
・リターン+10%
・リスク18%

B国債券
・リターン+5%
・リスク10%

でしたので、この場合ちょうどリスク/リターンとも両者の中間の数値になったわけです。

では、相関係数が+0.5の場合はどうなるでしょうか?相関係数+0.5ということはお互いの間に一定の価格連動性があるというイメージです。
この場合、リターンは上記と同じく+7.5%ですが、リスクは12.3%となり、先ほどの例(相関係数+1)に比べやや小さくなっています。
では、今度は相関係数ゼロとすればどうでしょうか?

結果は

・リターン+7.5%
・リスク10.3%
となます。

同様に、相関係数が-0.5(緩やかな逆相関)の場合は
・リターン+7.5%
・リスク7.8%

最後に、相関係数が-1(全く逆の動きをする場合)の場合は
・リターン+7.5%
・リスク4%

とこのようになります。

少し複雑ですが簡単に申し上げると
仮にA株とB債券を50%づつ組み入れた場合、お互いの値動きが逆方向に動く傾向が強いほど、資産全体のリスクは減らすことができるという事になります。
特に相関係数が-0.5と-1の場合、資産全体のリスクはB国債券のリスク(10%)をさらに下回っています。
今回の例では組み入れ比率を50%づつにしましたが、組み入れ比率を変えて計算しても(程度の差はありますが)同様の結果になります。

いかがでしょうか、よく分散投資が大切だということが言われますが、その理由はこのような事から来ているわけです。
できるだけ、違った値動きをする複数の資産に分散して投資することにより、リターンは各商品の(加重)平均値をキープしながらリスクは場合によっては、組み入れた各々の商品のリスクより、さらに低く抑えることができるわけですね。
知っておくと応用がききますよ。

ではさらには一歩進めまして、具体的な投資対象をいくつかピックアップし、それぞれを組み合わせて保有した場合、リスク/リターンがどうのように変化するかについて検証してゆきたいと思います。
なお、データは全てモーニングスター社のFund Investor(9月号)から拝借しました、このデータは同社が定めるピア・グループ別(投資対象別)の投信の過去1年間の月次リターンから算出されたものです。

【1】1日本株(TOPIX)と北米株(現地通貨建て)の組み合わせ
まず、それぞれの過去1年間の実績は

□日本株 リターン/13.3%、リスク/10.7%
□北米株 リターン/15.6%、リスク/18.0%
□両者の相関係数は+0.49

ここで、日本株、北米株をそれぞれ50対50で保有した場合、資産全体のリターンは14.4%、これに対しリスクは12.5%と計算する事ができます。

リターンが両者の平均値になっているのに対し、リスクのほうは双方の平均値(14.4%)をかなり下回っています。
それぞれの構成比を変化させて、これらの数字がどう変わるかも検証したいところですが、今回のテーマからはずれてしまうので別の機会にご紹介したいと思います。

では、次の例に移ります。
【2】日本株(TOPIX)とアジア・オセアニア株(現地通貨建て)の組み合わせ

□日本株リターン/13.3%、リスク/10.7%
□アジア・オセアニア株リターン/20.5%、リスク/15.8%
□両者の相関係数は+0.16

相関係数は先ほどの例に比べ、随分低くなっていますね。

日本株アジア・オセアニア株をそれぞれ50対50で保有した場合、資産全体のリターンは16.9%、これに対しリスクは10.2%となりました。
この10.2%という数字はそれぞれのリスクの平均値はもちろん、日本株のリスク10.7%を0.5ポイント下回っています。

これは、日本株とアジア・オセアニア株の相関性が低い事(+0.16)からきています、先ほどの【1】の例と比べると面白いですよ。
このことから日本株とアジア・オセアニア地域の株を合わせてもつことは、リスク低減の観点から好ましい事がわかります。

【3】日本株(TOPIX)と北米債券(現地通貨建て)の組み合わせ

□日本株リターン/13.3%、リスク/10.7%
□北米債券リターン/5.1%、リスク/7.1%
□両者の相関係数は-0.22

日本株、北米債券をそれぞれ50対50で保有した場合、資産全体のリターンは9.2%、これに対しリスクは5.7%となります。

リターンが両者の平均値になっているのに対し、リスクのほうは双方の平均値(8.9%)を36%も下回っています。
この下回り方は【2】の場合25%でしたから、【2】に比べ、さらにリスク低減効果が強く働いたということが言えます。
このリスク低減効果は相関係数の差から来ていまして、【2】の相関係数は+0.16 に対し【3】の場合では-0.22となっています。

では最後に今はやりの新興国債券について見ておきましょう。
【4】日本株(TOPIX)と低格付け債(現地通貨建て)の組み合わせ
ただし、モーニングスター社には新興国債券というカテゴリーがないため、低格付け債券で代用いたしました。

□日本株リターン/13.3%、リスク/10.7%
□低格付け債リターン/7.3%、リスク/7.8%
□両者の相関係数は+0.01

相関計数+0.01ということは、少なくともこの1年間を見れば、双方の値動きに全く相関性がなかったことを示しています。

日本株低格付け債をそれぞれ50対50で保有した場合、資産全体のリターンは10.3%、これに対しリスクは6.7%と計算する事ができます。
この場合も、リスクのほうは双方の平均値(9.3%)を28%下回っており、このポートフォリオもリスク低減に有効であるということが言えます。
いかがでししょうか?

少なくともここ一年間の実績に限れば、日本株に対し、アジア・オセアニア株や、新興国の債券を一定額組み合わせることにより、顕著なリスク低減効果があったと言えます。
特に、アジア・オセアニア株を組み合わせた場合、リスク低減効果に加え、利回りを上げる効果もあったわけですね。

以上のような分析を行いますと、分散投資の重要性に改めて気づかされます。
ただし、闇雲に資産を分散すればよいというものではなく、リターンがある程度見込め、かつ相関性の低い金融商品へ分散することが重要でもあるわけです。
少なくとも資産ポートフォリオを作る場合、このような点を頭に置かれるとよいのではないでしょうか。

今回はこのへんで。

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