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金融機関を製造業としてみた場合
皆さん、こんにちは。

私はこのコラムで分散投資の重要性、あるいは分散投資的な発想に
基づくアセット・アロケーション構築の重要性について何度かお話し
してきました。

ここのところ日本株は一人旅という感じで、世界同時株高に一人
取り残されてしまっているようですが、年に何度かあるこういう局面
では、あらためて分散投資の重要性を身にしみて感じます。

私は基本的に資産は、金融商品の属性という観点で

・株
・債券
・その他資産(オルタナティブ商品)

に分散投資するべきだと信じていますし、通貨の分散という観点で

・円建て資産
・外貨建て資産


に分散するべきだと思っていますが、円建ての資産アロケーションを
作る場合、私はいつも一種の窮屈さを感じてしまいます。

一般の方にとって、例えば株や債券などを個別に選択することは、
(よほど熱意と時間のある方を除いて)なかなか難しいことでも
あります、従ってこれら金融商品をポートフォリオに組み入れようと
しますと、どうしてもファンド経由ということになってしまうわけです。

ところが国内で市販されている投信はといいますと、どの証券会社
も右に倣え、ちょっと他社でヒットした商品があると数ヵ月後にはまず
間違いなく全社が追随し、その結果、どの金融機関の窓口でも、こぞって
似たような商品を勧めるという状況になってしまっているようです。

果たしてこのようなことで、本当に顧客の資産運用は正しい方向に
進むといえるのでしょうか・・・

・なぜ外債投信は毎月分配型しかないのか?

・なぜ不動産を対象としてファンド・オブ・ファンズはREITしか組み込まないのか?

・なぜコモディティ系のファンドはインデックス・ファンドしかないのか?

・なぜ新興国株ファンドにはBRICsや東欧、アジアのような地域限定型しかないのか?

・なぜ日本株を対象にしたロング/ショートを開発しないのか?


このような疑問を持つのは私だけでしょうか。

例えば、外債投信でも分配金は欲しくないが「分散投資という観点で
外債を広く浅く買いたい」このようなニーズはあると思いますし、
またアセット・アロケーションのパーツとしてこのよなうな商品は
理論的にも必要なはずです。

「ワールドREIT ファンド」的な商品についても同様です、現在REIT
の市場規模をみると米国や豪州が圧倒的に大きく、REITのみでファンドを
作ろうとすれば、どしてもこれらの国の不動産の構成比が高くなり、
世界の不動産に幅広く分散投資することは難しいはずです。

にもかかわらず不動産系のファンド・オブ・ファンズというと
「ワールドREIT ファンド」的な商品になってしまう理由は
(上場されているので)ファンドの情報が収集しやすく、組み入れの際に
手間がかからない、この一点にあるのではないでしょうか。

コモディティ系ファンドもジム・ロジャーズやAIGの指数連動型ばかり
ですね、ファンド・オブ・ファンズや特定のコモディティのみを指数化
して連動させる商品があってもいいのではないでしょうか。

いいだしたらキリがありませんが、そもそもこれらのファンドは金融機関に
とっては、製造業でいうところの製品(プロダクツ)に相当するものです。

ステレオタイプのお仕着せ商品は卒業していただき、消費者のニーズ
(特に冒頭の分散投資に資するという意味での)にあった商品を製造
してゆかなければ、消費者は海外のメーカー(運用会社)が製造する
プロダクツ(金融商品)を直接購入するようになる、これが自然の流れ
のように私は思うわけです・・・自然の水の流れというものは、なかなか
せき止めるられないものです。

ちなみに海外の運用会社が組成したファンドをいくつか御紹介して おきましょう。

・T社 商品P

英国の不動産に25%、残りを欧州各国の不動産関連株に分散投資する
ファンド

・C社 商品G

新興国株の見通しがポジティブなときは、新興国11ヶ国の株に分散投資、
一方でネガティブな見通しを立てたときは、市場規模の大きな4ヶ国の
株式にスイッチ。

・C社 商品A

コモディティ指数2種(GSCIとAIG 指数)を各40%、他に金、銀、プラチナ
を合計20%組み込み。

・N社 商品N

東欧不動産を投資対象にしたファンド、投資家の判断でレバレッジを
最大3倍まで上げられる。

・T社 商品N

世界の新興国株を対象にしたロング/ショート型ファンド(全体の60%程度)、
なお残りの40%程度を為替のロング/ショート、コモディティのロング/ショート
も僅かだが組み入れる場合がある。


以上一部のみの御紹介ですが、いずれも(少なくとも)他社に無い特徴を
出そうという努力が窺えますし、しっかりとその目標を達成しているように
私は思います。

これを投資家側からみれば、投資の選択肢が広がり、投資家が作る
アセット・アロケーションもそれぞれ今後の生活設計まで踏まえて、
細やかなチューニングが可能になるというわけです。

先日我が国の保険業界の問題についてお話いたしましたが、銀行・証券
など(従来から規制に守られた)金融業界にはまだまだ消費者にしっかりと
向き合って商品を開発するという、ごく基本的な姿勢において大きく
欠落した部分があるように思います。

では 今回はこのへんで。

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