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円安と資産運用
皆さん、こんにちは。

ここのところニュースなどで、円安問題が取り上げられる
場面が増えてきました。

例えば7月17日発売の「週間ダイヤモンド」、表紙に太字で書かれた
特集タイトルは「食卓危機」です。

読んでみますと、必ずしも円安問題ばかりがクローズアップされている
わけではありませんが『世界中で食料の買い付け競争が繰り広げられ、
我々日本人は円安の影響もあり、食糧確保が徐々に難しくなってきている』
このような事も書かれていました。

週間ダイヤモンドの今回の特集に限らず、この手の論調で円安が
語られるケースが急に増えてきたように感じます。

一昔前は円高による悪影響が懸念され、財務省も円売り介入を繰り返し、
米国の議会から随分批判を受けたものですが・・・今は昔といったところ
でしょうか。

今回は、現在の為替水準が歴史的にみてどの程度の円安で、私達の生活
にとってどういった影響があるのか、そのあたりをみてゆきたいと
思います。

まず始めに、皆さんは「実効為替レート」という言葉を耳にされた
ことがあるでしょうか。

「実効為替レート」というのは、日本と貿易額の多い国の通貨を
いくつか(現在15カ国)選び、それぞれの通貨ごと、貿易額によって
ウエイト付けを行った後で為替レートを指数化したものです。

さらに「実効為替レート」には「名目」と「実質」の2種類があり、
「名目」のほうは単純に現時点の為替レートを加重平均したもの、
これに対し「実質」のほうは、各国のインフレ率を勘案したあと、
加重平均したもので、「実質」のほうがより生活感にフィットした
ものといえます。

まずこの「名目」値でみた「実効為替レート」、いくつになって
いるかといいますと、1973年3月度を100とした場合、現在273.6(*)
となっています。

*)日銀ホームページより、数値が大きくなるほど円高です。

過去を振り返ってみますと、1995年4月に360.4と最高値を記録しており、
当時と比べれば、もちろん円安方向に振れてはいますが、
1973年時点の100と比べれば、まだまだ円高・・・「名目値」で見る
限り、とても円安を懸念するレベルではないように思います。

ところが、インフレ率を勘案した「実質値」で見ますと、随分と景色
が違ってきます。

上記と同じく日銀のサイトを見ますと、1973年3月を100とした場合、
現在の「(実質)実効為替レート」は93.4、しかも2000年以降は、
下記のようにほぼ一貫して円安方向です。

・2000年6月 141.7
・2001年6月 125.4
・2002年6月 118.8
・2003年6月 116.0
・2004年6月 118.7
・2005年6月 114.2
・2006年6月 103.7

そして

・2007年6月 93.4

これはどういうことかといいますと、例えば1973年時点で100の
競争力のあった円は、「名目ベース」では現在273と円高に振れて
いますが、インフレ調整後の「実質ベース」でみると、93.4と
なり、34年前の当時より、逆に円が弱く(円安)なっているという
事を意味しています。

この「実質ベース」でみた円安、実は悪いことばかりではありません。

例えば、輸出型企業にとっては大きな追い風になります、円安を
受け、国際的な競争力を増した企業の業績は、間違いなく拡大する
ことでしょう。

企業の業績拡大で最も恩恵を受けるのは、かつては企業に勤める
従業員でしたが、今では国際的にみた賃金水準の高さから、以前ほど
従業員に対する分配率を上げることは出来ません。

これら企業の業績が向上すると、誰が最も大きな恩恵を受けるかと
いいますと、それは企業の所有者、即ち株主ということになります。

株主は、インカムゲイン(配当収入)と企業価値上昇
に伴うキャピタルゲイン(株価上昇)という2重の利益を手にする
ことができますが、残念ながら現在の我が国企業の最大のオーナーは
外国人で、その持分は約28%、言い換えれば円安により、せっかく
受けた恩恵の30%程度は、海外に流出してしまうことになります。

言い換えれば「円安のよって受ける恩恵の70%程度しか享受できない」
状況にあると言えます。

次に「実質ベース」の円安は、私達日本人にとってどのような弊害が
あるでしょうか、いくつか列挙してみましょう。

1.輸入物価の高騰

現在のところ、消費者物価指数は明確な上昇基調には入っていませんが、
おそらく今後長期的に見れば、輸入品を中心に消費者物価は徐々に
上昇してゆくのではないでしょうか、既に穀物加工品を中心に、その
兆候が見られます。

2.国際的レベルで見た場合の生活水準のダウン

我が国の(ドルベース)の一人当たりGDPは、1993年時点で
世界一でしたが、2006年現在では世界で18番目に後退してしまい
ました。円安による購買力の低下で、例えば高級食材などは、既に
日本ではなく、欧州や中国に向かっていると聞きます。そういう
意味での生活水準のダウンは、既に始まっているのかもしれません。

3.格差の拡大

円でのみ資産を持つ階層と、外貨建てで資産を持つ階層の
所得格差が今後拡大する可能性があります、外貨建て資産を
もてる(ほど余裕のある)層と低所得者層の経済的格差は、益々開いて
ゆくのではないでしょうか。

以上のことを総合しますと、仮に今後の長期トレンドが円安だとすれば、
その円安が進む以上の速度で自分の資産を増やさなければ、世界的な基準
で見て貧しくならざるを得ない、このような結論になります。

外貨建て資産への投資も一つの方法ですが、日本の企業でも
円安で恩恵を受ける企業は沢山あります、そのような会社をみつけ、
応援してあげるのも一つの方法ではないでしょうか。

もちろん長期で見れば円安方向だとしても、冒頭で見ましたように、
円安は急激に進むというものではありません。

まず長期的な戦略を明確にし、そのうえで自分にあった
ポートフォリオをじっくり腰を据えて構築する、その程度の時間的な
余裕は十分にあるのではないでしょうか。



では 今回はこのへんで。





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