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インフレと資産運用
皆さん、こんにちは。

今回は久々にFPらしいお話しをさせて頂きます。

ここのところ、食品や日用品の値段が上がってきましたね、
ガソリンや食パン、マヨネーズのように明らかに価格が改定されたものも
あれば、値段は同じで中身が少なくなったものも・・・

消費者物価という観点で見れば、まだマイナス圏ではありますが、
今後予想される消費税増税や、エネルギーや穀物相場の上昇について
考えると、なんとなく本格的なインフレ時代の足音が聞こえて
きそうな気もします。

先進国の中央銀行は、概ね1.0%~2.0%程度のインフレ目標を
設定するケースが多いようですね、これに対し日銀は明確な
インフレ目標値は設定していませんが、仮に消費税を欧州並みの
20%程度まで引き上げると想定しますと、それだけでかなりの
インフレ要因になります・・・やはり日本のインフレ率も、他の
先進国並みに、2.0%程度と想定しておいたほうがいいので
はないでしょうか。

では仮に、今後我が国の物価が年率2%で上がってゆくとしますと、
私達の生活はどのようになってゆくのでしょうか。

インフレはモノの値段が上がることですから、当然私達の
生活費も上昇してゆきます、一方で収入のほうはどうでしょうか。

一応いまのところ年率0.9%までであれば、インフレ率にスライドし、
年金受給額も上昇するという事になっていますが、現在の財政状況
を考えると、よくて現状維持といったところではないでしょうか。

あるいは給与収入はどうでしょう、我が国の企業の労働分配率
は一時より下がってはきましたが、それでも世界的にみてまだ
高く、企業の業績は伸びても、私達の賃金は上がりにくい構造に
なっているといえるでしょう。

このように考えて参りますと、支出のみ年率2%で上昇、
収入は現状維持という状態が、今後(すくなくとも)しばらくは
続く可能性があるということになるのではないでしょうか。

さてここからが本題です。

収入は増えず、支出のみ年率2%で増えてゆくとしますと、
それは私達の生活にどのような影響を及ぼすのでしょうか。

またさらに、この状態を資産運用のみで挽回しようとしますと、
年率何%程度で運用しなくてはならないのでしょうか。

よく「インフレ率2%だから、運用利回りも2%でいい」と
お考えの方もおいでですが、それは間違っています。

そのあたりをここでご説明するため、下記のような簡略化した
ケースを設定してみます。

まず、今後一切インフレは起こらないという前提で・・・

1.定年退職後夫婦2人の所帯
2.夫婦の収入は年金のみ、年金受給額は年間280万円で一定
3.所帯の支出は初年度380万円で、その後も変わらず
4.現在(2007年末)時点の所帯の貯蓄は3000万円

このような比較的平均的なケースで、今後5年ごとの貯蓄残高
を計算すると

・2007年 単年度収支(-100万円)、年末時点資産残高(3000万円)
・2012年 同上 (-100万円)、同上 (2500万円)
・2017年 同上 (-100万円)、同上 (2000万円)
・2022年 同上 (-100万円)、同上 (1500万円)
・2027年 同上 (-100万円)、同上 (1000万円)
・2032年 同上 (-100万円)、同上 ( 500万円)
・2037年 同上 (-100万円)、同上 ( 0万円)

上記のようになり、毎年100万円づつ資産は減少しますが、2007年時点で
3000万円の蓄えがありますので、向こう30年間はなんとか生活して
ゆくことができます。

では、上記と全く同じ条件で、毎年2%づつインフレが進行する
と仮定すればどうでしょうか。

・2007年 単年度収支(-100万円)、年末時点資産残高(3000万円)
・2012年 同上 (-140万円)、同上 (2078万円)
・2017年 同上 (-183万円)、同上 (1556万円)
・2022年 同上 (-231万円)、同上 ( 497万円)
・2025年 同上 (-263万円)、同上 (-259万円)

結果はこのようになり、今から18年後には借金生活に入ってしまう
ことになります(特に2017年以降の資産の減り方に注目してください)。

ではさらに上記の条件で、30年後も資産をプラスに維持するため、
年率何%の資産運用が必要か計算してみましょう。

2007年のスタート時点の資産3000万円を、年率5.3%で複利運用し
た場合、下記のようになり30年後にちょうど資産を使い切ることに
なります(逆に言えば、年率5.3%の資産運用が必要ということです)。

・2007年 単年度収支(-100万円)、年末時点資産残高(3000万円)
・2012年 同上 (-140万円)、同上 (3202万円)
・2017年 同上 (-183万円)、同上 (3231万円)
・2022年 同上 (-231万円)、同上 (3012万円)
・2027年 同上 (-285万円)、同上 (2444万円)
・2032年 同上 (-343万円)、同上 (1395万円)
・2035年 同上 (-382万円)、同上 ( 464万円)

少し長くなってしまいましたが、このようにインフレ率と、資産運用
の必要利回りの関係は簡単には計算できず、上記のインフレ率2%の
ケースでは、毎年5%以上の割合で資産を運用してゆかなくては、
インフレを克服できないという事になりました。

この例でお解りいただけたように、インフレ率と資産運用
の関係は

1.資産運用開始時点の保有資産
2.将来の収支バランス

この2つの要素の組み合わせによって、非常に複雑な動きを示す
ことになります。

例えば上記のケースで、スタート時点の資産を3000万円から2000万円
に下げると、必要利回りは年率5.3%→8.5%に上昇します。

またスタート時点の資産を1000万円に下げますと、必要利回りは一気に
15.7%に上昇してしまい、これはもうほとんど挽回不能の状態といえ
るでしょう・・・、逆に4000万円でスタートする場合、必要な利回りは
3.5%まで下がり、これならそれほどリスクをとらずに運用できる
ことになります。

要するにまず発射台は少しでも高いほうがよいわけで、特に年金生活
に入る時点で、やはり3000万円、できれば4000万円の資産を準備して
おきたいものですね。

・・・繰り返しになりますが、この試算は人それぞれ、微妙な
収支のバランスや現在の資産残高によって、大きく異なって
参ります、できれば早い段階で試算を行い、インフレを想定した
資産運用プランをお若いうちからおつくりになってみてはいかが
でしょうか。

興味のある方は、一度ご検討ください。

では 今回はこのへんで。





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