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二番底はあるか
みなさんこんにちは。

米国の金融不安はおさまったのか・・・
世界の景気に2番底はないのか・・・

これがいま、皆さんにとって一番の関心事では
ないでしょうか。

「日本で1998年から1999年にかけて起こった金融不安は、
公的資金の一斉注入によって、一旦収束したかにみえたが、
その後再燃し、本当に収束したのは4年後(2003年)のりそな
国有化によってである」

このような苦い経験を持つ私たちにとって、
「100年に一度の経済危機」が、果たしてこの程度の短期間で
解消するのだろうか・・・これは非常に素朴な疑問だと
思いますし、欧米の専門家でもこのような考えを持つ人は大勢
いるようです。

ただ一方で、日々発表される経済指標には経済の回復を
示すものが多く、市場参加者の心理も好転を続けています。

果たして私たちは、現在の状況をどのように解釈すれば
いいのでしょうか・・・

まず最初に1998年から2003年に至る、我が国での経験を
整理しておきましょう、日本で最初に金融機関への一斉資本
注入が行われたのは1998年10月、続いて1999年3月にも
第二次の注入が行われました。

よくこの時期が、米国でストレステストが行われた、今年
前半の状況に似ていると言われますね。

問題はそのあとです、日本の場合、一旦1999年に市場は小康状態
となりますが、実は水面下で金融不安は続いていて、それから
4年後に問題が再発し、2003年りそなの国有化でようやく
終止符となったわけです。

仮に米国で同じような時間軸で事態が進むとそれば、
この後しばらく小康状態が続いたとしても、いずれ米銀の
信用不安はどこかで再燃し、再び世界を金融不安に巻き込んで
ゆく・・・

この想像は、あながち間違っているとも思えません。

ただいくつか整理しておくべきことがあります。

まず日本の1999年以降、問題が再燃するまで、なぜ4年もの
長い時間がかかったのかという点です。

1998年のアジア危機で、世界の経済は一時的に不安定に
なったものの、1999年には早くも米国のITバブルの恩恵をうけ、
1999年、2000年の2年間、世界経済は大きく成長しています。

我が国で1999年に問題が一旦小康状態に入ったのは、もちろん
資本注入の効果もあったでのしょうが、それ以前に、米国で
当時起きつつあったITバブルに引っ張られ、日本の経済活動
が一時的に活性化したからではなかったでしょうか。

一方で2000年以降の、各地域の経済成長率をみますと、
米国のITバブルの反動もあり、2000年を境に急降下している
ことがわかります、特に2001年~2002年にかけて、世界の
経済成長率は大幅に落ち込んでいます。

【参照値/1998年-2003年米欧実質GDP推移】

・1998年 米(4.2%)、ユーロ圏(2.8%)、世界(2.7%)
・1999年 米(4.4%)、ユーロ圏(3.0%)、世界(3.7%)
・2000年 米(3.7%)、ユーロ圏(3.9%)、世界(4.8%)
・2001年 米(0.8%)、ユーロ圏(1.9%)、世界(2.5%)
・2002年 米(1.6%)、ユーロ圏(0.9%)、世界(3.1%)
・2003年 米(2.5%)、ユーロ圏(0.8%)、世界(4.0%)
・2004年 米(3.9%)、ユーロ圏(2.0%)、世界(5.3%)


このように世界経済に下押し圧力がかかるなか、
日本の金融機関は、2003年に至っていよいよ耐えきれず、
再び信用不安が表面化した・・これが私の解釈です。

翻って、今後の米銀の信用不安はどのような
形で進むのでしょうか。

まず一つの可能性は、「日本の2003年型」の帰結です。

私は経済が前向きに回転を始めますと、それがどこかで
いわば人為的に止められてしまうということは、起こりにくいと
思っていますし、また経済が好回転している間は、信用不安が
表面化する可能性も低いと思っています。

言いかえれば、今後しばらくは(2000年ITバブルの時のように)、
新興国主導の経済成長の熱狂のなか、信用問題が表面化すること
はない、が、いずれ次の景気後退期に再度表面化するという
考え方です。

二つ目の可能性は、そもそも「金融不安の再燃は起こらない」
という考え方です。

といいますのは、日米の時間軸を比べてみますと、この
「2003年型帰結論」が果たして正しいのか・・疑問がわいてくるから
です。

日本の場合1999年の資本注入時点で、すでにITバブルの
終末が近づいていました。

その結果、日本の銀行は景気拡大の恩恵を享受することは(あまり)
ありませんでした、これに対し米銀の場合、(2007年終盤に始まった)
景気の後退期で今回の問題が表面化しましたので、次の景気拡大期では、
時間的にフルにその恩恵を享受することができるはずです。

さらに米銀の収益構造は、(まっとうな商売のみの比較でも)
日本の銀行に比べ堅固であり、比較的短期間でバランス・シートを
修復できる可能性があると思います。

もし以上の考え方が正しければ

1.米銀の信用不安は目先起こらないし、世界の景気の二番底
もない。

2.ただし、新興国牽引型になる次の景気サイクルの下降局面
で、米銀(あるいは欧銀)の信用不安は再燃する可能性は
残される。

3.しかしながら、仮にそのようなことが起きたとしても、
その時点でバランス・シートの修復はある程度終わっており、
ショックはそれほど大きくはならない。


ということになるのではないでしょうか。


では、今回はこのへんで。
(2009年6月30日)




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