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デフレ国の通貨は強くなるか-その2

今回も前回に続き、為替レートの話しをさせて頂きます、
いつもそうなのですが、為替レートの話しは難解で・・
今回も例にもれずそのような内容になってしまうかもしれません、
できるだけ解りやすくお話しいたしますが、難解でしたら
ご容赦ください、それは私の文章力の不足ゆえです。

前回は購買力平価のお話をして、
円ドルレートの均衡点を、購買力平価という考えのみによって
探してゆくことの矛盾を指摘させて頂きました。

今回は他にも購買力平価説の注意点を指摘させて
頂きたいと思います。

つまり仮に「購買力平価説」が100%正しいとしても、
これからお話しするような注意点があるというお話しです。

前回の冒頭でお話ししたように、現在の円高を妥当な水準だと
説明する根拠として、しばしば『前回の円高局面(1995年当時の
1ドル=79円)に比べ、購買力平価からみて、いまはまだ20%以上
も円安だ』といった見かたを目にすることがあります。

このような発言や発信は、暗に現在の円ドルレートが、
まだ円安水準にあるということを匂わせているわけですね。

確かに我が国がこの17年間で物価上昇率がゼロで、
米国が20%上昇していたとしたら、購買力平価説に基づいて、
大雑把に現在は当時より20%円高水準にあるべきでしょう。

ただしここには一つのトリックがあります。

上記は当時の円ドルレート、即ち1ドル=79円が適正水準で
あれば・・このような仮定に基づいているわけです。

では仮に当時の1ドル=79円が、既に著しい円高水準だったとしたら
どうなのでしょうか。

このように起点をどこに置くかという点は、とても重要で、
仮に起点を過去の異常な時点に置いてしまうと、そこから
導き出される結論もまた誤ったものや、あるいは意図によって
歪められたものになってしまいます。

つまりどこに起点におくかによって、
全く違った結論を、話し手は自由に導き出すことができるわけです。

では当時の1ドル=79円は、果たして(その話し手が拠りどころとする)
購買力平価説からみて、妥当な水準だったのでしょうか。

今私は『公益財団法人 国際通貨研究所』のサイトから
ダウンロードした、「ドル円購買力平価と実勢相場」という
グラフを見ています。

http://www.iima.or.jp/research_gaibu.html

このグラフをみる限り、1995年当時の「消費者物価PPP(注1)」は
1ドル=約200円で、そこから当時の実勢レート(1ドル=79円)は著しい
円高水準にあったことがわかります、ご参考までに「企業物価PPP(注2)」
をみても1ドル=150円近辺にあり、やはり当時の実勢レートである
1ドル=79円は、極端な円高状態だったといえるでしょう。

注1)消費者物価からみた購買力平価
注2)企業物価からみた購買力平価

つまり1995年当時が著しく円高状態にあったため、
よく言われるような

『前回の円高局面(1995年当時の1ドル=79円)に比べ、
購買力平価からみていまはまだ20%以上も円安だ』

という考え方は決して偽りではないが、その起点を異常な時点に
置いているわけで・・・疑り深い私などは、今のドル円レートの妥当性
を説きたい何らかの意思(もしくは意図か・・)が働いているのでは
と勘ぐってしまいます。

さらに、もう一つ私たちが気をつけて
おくべき点があります。

それは仮に購買力平価という観点からみても、
現在の円ドルレートは、既にかなり円高水準に移ってしまって
いるという点です。

先ほどのグラフ『公益財団法人 国際通貨研究所』の
「ドル円購買力平価と実勢相場」を再度見ますと、
現在の消費者物価PPPは1ドル=132.66円(2011年6月現在)、
企業物価PPPは1ドル=100.99円、これに対し実勢相場は
1ドル=約76.5円です。

つまり日米の企業物価の比較からみた妥当円ドル相場
(「企業物価PPP」)に比べても、現在の実勢レートは
25%近い円高水準だということになるわけです。

以上見て参りましたように、私は基本的に購買力平価から
適性レートを導き出そうとする考え方は、他に適切な方法が
見当たらない現時点において、アプローチの一つにはなりえる
とは思いますが、それのみ過信し、現在の適性
レートの水準を語ることは危険だと思います。

結局ややファジーではありますが、私たち一人一人の生活者
としての皮膚感覚が、最も信頼に値する判断材料のような気も
するわけです。

そういう観点で見て、私は現在の為替相場は、
かなり円高水準に振れていると思っています。




では、今回はこのへんで。

(2011年9月20日)




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