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欧州危機後の貴金属相場-1

みなさんこんにちは。

今回は欧州危機後の貴金属相場についてお話し致します、
これで欧州危機後シリーズ3部作は完結です。

では初めに一番色がきれいな金からです。

金は8月末に一時1オンス=1900ドル台に乗せたあと急落、
一時1600ドルを割りましたが、そこからやや戻し、現在は
1600ドル台後半で推移中です。

いまだ欧州問題のゆくえは予断を許しませんが、今後の相場を
占うに際し、このタイミングで前回の危機を振り返っておく
ことは無意味ではないでしょう。

ではここで2008年当時とその後の金相場について、
軽くみておきましょう。

◇2008年3月17日 最高値更新 1オンス=1011ドル(注)
◇2008年8月終値 1オンス=833ドル
◇2008年9月12日 リーマン・ブラザーズ破綻発表前営業日 1オンス=750ドル
◇2008年9月15日 リーマン・ブラザーズ破綻発表翌日 1オンス=775ドル
◇2008年9月終値 1オンス=884ドル
◇2008年10月24日 リーマン・ショック後安値 1オンス=712ドル
◇2008年12月終値 1オンス=870ドル
◇2009年9月16日 最高値更新 1オンス=1016ドル
◇2009年12月終値 最高値更新 1オンス=1088ドル


注)ロンドン・スポット価格終値


とこのようになっております。

上記から私たちは、金に関するいくつかのことを知ること
が出来ます、以下列挙しますと。

1.金はマネーの逃避先ではあるものの、金融ショック時には一時的に
    売られることがある点。ちなみにリーマン前の高値1011ドル→リーマン後
    の安値712ドルで、下落率は約29.6%となりました。ただし下落幅その
    ものは株やエネルギー価格に比べ小さく、ショックから受ける影響は、
    限定的であったとも言えるでしょう。

2.株や他の商品相場に比べ、ショック後の底入れが早かった点。
    金価格はリーマン・ショック後40日程度で早くも底入れ、そこから
    上昇に転じています。ちなみに株や他の商品価格が底を
    うったのは、翌年の3月でした。

3.底入れ後の上昇が著しく早い点。金がリーマン・ショック前の
    水準を回復したのはリーマン破綻のちょうど1年後です、多くの
    株や他の商品相場が、いまだリーマン前の奪回に至っていないことと
    比べると、その回復力は際立っています。


ではこの金価格の下落率の小ささや、その後の上昇の速さなどは、
一体何を意味しているのでしょうか・・

当時の金買いの動機は二つではなかったでしょうか。
一つ目は投資あるいは投機の金買い需要だったと思います。

一時的に金すら売った主体が、時間をおいてやや冷静になり、
資産の退避先として金を再評価した、こんなところでは
なかったでしょうか。あと当時大量に供給されたマネーをみて、
早くも金の先高を予想した買いも混じっていたかもしれません。

買いの動機の二つ目は、割安感に着目した実需の買い
ではなかったでしょうか。

インドや中国など、新興国の実需は高値掴みを嫌います、
1000ドル超で買う機会を失した実需も、一定額入ったのでは
ないでしょうか。

つまりリーマン後40日で金相場を反転させた原動力は、
投機マネーだけではなく、実需だけでもなく、これらが混然一体と
なった買いではなかったかと思うわけです。

いずれにしても金融ショックにすら引っ張られない
金への強いニーズが、伏流水のごとくあったことは確かです。

さてこれからは今後のお話しです。

まず今度の欧州問題の規模についてです、
これをどう見るかによって、今後の相場の読みは随分違って
くるのではないでしょうか。

いろいろな見方があることは承知しておりますが、
私自身は今回のショックは『リーマン未満、りそな以上』だと
考えております。

問題の核心がどこに所在しているのか・・・そのことすら
見えなかった米国危機に比べ、すくなくとも今回は問題の
核心がどこにあるかは知れています。

また今回の問題は、顕在化後かれこれ2年が経とうとしており、
既に処方箋は明らかになっています。あとは欧州の政治の問題
だと言ってよいのではないでしょうか。

また銀行の破たんや資本注入のスキームは、
すでに米国危機時で経験済み、少なくとも個別の金融機関に関しては、
リーマンのような不手際は起きにくいのではないかと思います。

私は決して今回の危機を軽視するわけではありませんが、
このように大雑把に申し上げてリーマン未満と考えておるわけです。

さて以上の前提で今後の金相場です。

金は8月高値から既に15%ほど下落を経験しました、
仮にリーマン時の30%という下落率を当てはめると、1300ドル半ば
という数字が出てきますが、私はそこまでは考えておりません。

先月に記録した1600ドル割れは、いい買い場だったのでは
ないかと思います。前回ショック同様、この水準では
実需や投機の買いが、早々に入る可能性が高いのでは
ないでしょうか。

仮に今回の危機のマグニチュードが米国危機の半分にとどまれば、
15%下落は妥当なところではないかという気もいたします。

続いてさらにその後のお話しです。

何度かこのメルマガで書かせて頂きましたが、
私は「先進国の成長鈍化と、新興国の高成長」の
組み合わせは、今後も続くと考えております。

従って先進国は財政出動と金融緩和を続けざるを得ず、
必然的に市場に供給されるマネーの量は、実体経済の拡大速度を
越えて増え続けるに違いありません、一方で新興国の成長は、
金の買い要因であり続けるのではないかと思います。

もちろん証拠金の引き上げ、あるいは当局による
持ち高制限など、短期的な波乱要因として意識しておく必要は
あるでしょう、が世界がこのような構造的な転換を果たす
その過程において、絶対的な価値をもつ金もまた、構造的に
買われやすい環境が続くのではないでしょうか。

相場の予測はなかなか難しい作業だと思います、
株や債券など金融商品と違い、金には指標がありません、
2000ドルが妥当だと言えばそのような気もしますし、
2300ドルが妥当だと言えば、またそのような気もいたします、
金は銀やプラチナと違って実用性は低く、例え3000ドルになっても、
困る人はそう多くはいないでしょう。

つまり目標相場で物事をみるのではなく、
上記のような金買いをもたらす構造変化がいつ収束するか、
ここに着目すべきではないでしょうか。


・・すみません、予想以上に長くなってしまい、
今回は金だけで力尽きてしまいました、銀やプラチナのお話しは、
またの機会に持ちこさせて頂きます。




では、今回はこのへんで。

(2011年10月11日)




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