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サイコロゲームの勝者と敗者

みなさんこんにちは。

まだ暑い日が続いていますね。
皆さんお変わりなくお過ごしでしょうか。

こんな時に資産運用の話をしても、
大半の方は興味を持っていただけそうに
ありませんので、今回はちょっと頭の体操のお話をさせて
頂こうと思います。

こんなゲームを考えてみました。

100人が参加するサイコロゲーム大会です。

全ての参加者は100万円を元手にゲームを始めます。

一人ずつ順番にサイコロを振り、偶数の目がでたらその人の勝ちで
「親」から手持ちのお金の20%相当額をもらえますが、奇数が出たら負け、
「親」に対して手持ちのお金の20%を渡さなければなりません。

以上のルールで100人の参加者が、順にサイコロを振ってゆき、
このサイクルを8回繰り返したとしましょう。

この場合全ての参加者は8回ずつサイコロを振ることになるわけです。

つまりある人は例えば

・「勝ち」「勝ち」「負け」「勝ち」「負け」「負け」「負け」「勝ち」

というように4勝4敗となり、またある人は

・「負け」「勝ち」「負け」「負け」「負け」「勝ち」「負け」「勝ち」

というように3勝5敗に終わるといったイメージです。

結果としては、全ての参加者の勝敗は8勝0敗から0勝8敗までのうち、
いずれかの組み合わせになるわけですね、ではそれぞれの組み合わせごと、
最終的に参加者の所持金はいくらになるかみてみましょう。

結果は以下の通りです。

・8勝0敗(430万円/0.4%)
・7勝1敗(287万円/3.1%)
・6勝2敗(191万円/10.9%)
・5勝3敗(127万円/21.9%)
・4勝4敗(85万円/27.3%)
・3勝5敗(57万円/21.9%)
・2勝6敗(38万円/10.9%)
・1勝7敗(25万円/3.1%)
・0勝8敗(17万円/0.4%)

(注1).カッコ内の左側数字はゲーム終了後の所持金
(注2).カッコ内の右側数字は発生確率

ここで特に注目して頂きたいのは、4勝4敗のところです。

この「4勝4敗」という組み合わせには、全体の27.3%と最も多くの
参加者が分布していますが、彼らの所持金はといいますと、
ご覧のように85万円となっており、元手の100万円を
下回っていることになります。

「4勝4敗」といえば、勝負としては五分のはずです。
にも関わらず手持ちのお金は15%も減っていることになるわけですね。

さらに言えばこのゲームで所持金を増やすためには
5勝以上する必要があり、全参加者に占める勝者の比率は、
僅か36%程度にすぎません。

なぜこのようなヘンなことが起きたのでしょうか。

結論から申しあげるとこれは「一部の大勝ちした人に
お金が集中している状態」になっているということ
ではないでしょうか。

例えば上の例でいいますと、全勝組(8勝0敗)の所持金は
430万円ですが、これはゲーム開始時点から330万円のアップですね。

これに対し全敗組はどうでしょうか。彼らのゲーム終了後の
所持金は17万円で、こちらは開始時点と比べ83万円のダウンに
すぎません。

つまり全勝組の勝ち分は330万円、
これに対し全敗組の負け分は83万円というわけです。

統計学的に表現するなら「上方に大きくかい離して分布して
いる状態」といってよいでしょう。

負組のほうの所持金は、どうがんばってもゼロ円以下には
ならず、これに対して勝組みのほうは青天井です。
したがってほんの一握りのラッキーな人にお金が集中し、
結果的に大半の参加者が負けてしまうというわけです。


お話としてはこれでおしまいですが、
このヘンな状態は、実は資産運用の世界でも常に起きており、
決して「ヘンなお話し」で済ませることはできません。


例えば為替の証拠金取引。

為替の世界はゼロサムで、勝者の勝ち分と敗者の負け分の合計は

同額になります(注)。にもかかわらず大半の参加者が所持金を減らすのは、

上記の例と同じくゼロサムの世界では、一部の超ラッキーな人にお金が

集まってしまうからです。


注)胴元、すなわち証拠金取引の運営会社の取り分である
  手数料を無視すればのお話しです。

あるいは仕組み債も広い意味では同様で、運用会社の手数料を除くと
期待収益率はゼロです。

にもかかわらず多くの仕組債で投資家が損失を出して
しまうのは、やはり上記の例と同様に、仕組債が
一部の超勝者の存在を前提としたゼロサム・ゲーム
だからではないでしょうか。

そのうえ仕組債は費用構造がブラックボックスで、
運用サイドは高い手数料設定の誘惑に駆られがちです。
投資家サイドからみると、多額の手数料を運用会社に支払わされている
という点で、さらに負けやすい構造にあるといえるでしょう。

ほかにも資産運用の世界ではさまざまなゼロサムの商品があります。

が、冒頭のサイコロゲームの結果と同じく、このようなゼロサム・ゲームでは、
大半の参加者が負けてしまうという点を、理解しておく必要が
あるのではないでしょうか。




では、今回はこのへんで。

(2012年8月21日)



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