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錬金術と確定収益商品

みなさんこんにちは。

いまでも時々以下のような質問を頂きます。

「確定収益9%、満期一年の金融商品をみつけました、
この商品買ってもいいでしょうか・・・」

結論から申し上げますと、このような金融商品は
あり得ません。

私たちが確定利回り商品をみる場合、その基準は
米国債に置きます、米国債とて100%元本が保証される
わけではありませんが、それでもこの地球上に存在する
金融商品のなかで、最も信頼性が高いものの一つ
であることは間違いないでしょう。

さらにその流動性や市場の規模という観点も、
「確定利回り商品の基準」と呼ぶにふさわしい性格
を備えているわけです。

さてその米国債です。

現在の3年債の利回り(1年あたり)は約0.9%、
10年債で2.6%にすぎません。

仮に運用者側がこれ以上の収益を狙うなら、
当然ながら米国債以上の収益を目指せる対象を、
組み入れるしかありません。

その場合はその収益率に応じた、価格変動リスク、
あるいは究極的には資金の全額を消失するリスクを、
投資家は負うことになります。

そもそも世の中の金融商品は、どれだけニッチなところを
掘り返したとしても、ローリスクでハイリターンな
投資対象などありません、なぜなら全ての投資対象は、
既にリスクに見合ったお値段がついてしまっているからです。

ただしいくつかの方法で、価格変動を小さく
できる可能性はあります。

代表的な方法は、相関性の低い複数の金融商品を
組み合わせるというものです。

仮に価格が真逆の方向に動く金融商品Aと、
金融商品Bという組み合わせを運よくみつけることが
出来たとしたら、それぞれ半分ずつ保有することにより、
完全に値動きを消すことができます。

一方で収益のほうはと言えば、この場合金融商品AとBの
平均値となります。

このようにしてリターンだけを維持しながら、
価格変動を消し去ることができるわけで、この手法を利用すれば
確定収益型の高収益商品の組成が可能です。

ただし残念ながらこのような金融商品の組み合わせは
現実にはあり得ません。

またいくら高度な金融技法を駆使したところで、
最終投資先がジャンク(クズ)であれば、それらを集めて
組成される金融商品もまたジャンクの寄せ集めにすぎません。

表面的にはいくらきれいに見えていたとしても、
あるいは平時における運用成績がいくらきれいに
みえていたとしても、それは危うい均衡に基づいた、
ごく短期間の見せかけといえるでしょう。

つまり高い収益を狙う場合、それに見合ったリスクから
解放されるということなどないわけで、これは私たちが
先のサブプライム危機で散々学んできた現実です。

従ってそもそも米国10年債の利回りが2.6%という
現時点において、確定利回り9%などという
金融商品などあり得ないといえるでしょう。

よく考えてみれば、私たちの祖先もこれとよく似た
幻想を抱いた時期があります。

錬金術は特にヨーロッパの中世では盛んに研究され、
なんとあのニュートンですら、どっぷりとのめり込んだと
聞きます。

いくら鉛や銅を混ぜ合わせたところで、そこから
金を取り出すことができないという事実を私たちは
知っていますが、当時は可能と考えられていたわけです。

現在の金融の世界でも同様で、もし投資対象の
組み合わせから、米国債の収益率を上回る確定収益ファンドを
作れるとしたら、それは第三者にリスクを移転しているだけか、
もともとありもしないでっちあげ話しにすぎません。

そろそろ私たちも、この現実に目覚める必要が
あるのではないでしょうか。

では今回はこのへんで。

 

(2014年6月3日)




 




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