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トヨタの種類株はカイか

みなさんこんにちは。

先日開かれたトヨタの株主総会で、種類株の発行が
可決されました。

以下新株の概要です。

□発行価格

発行価格決定日の、普通株の終値×(126%〜130%)

□売買単位

100株

□配当

上記発行価格×以下配当率で決めた配当を、一年に一度支払う

・配当率

平成27年度→0.5%
平成28年度→1.0%
平成29年度→1.5%
平成30年度→2.0%
平成31年度以降→2.5%

□売却制限に関して

発行後5年間は売却できません

□5年経過後の投資家の選択肢

1)発行価格でトヨタが買い取り(年4回のみ)
2)普通株へ転換(年2回のみ)

□議決権

アリ、議決権は普通株と同等

さてこの新株、カイか見送り、どっちが正解なのでしょうか。

まずこの新株の意義について、少し考えてみたいと
思います。

会社側の説明資料を見ますと、いたるところに「中長期」という
文字が見えます、株式を中長期で保有してもらうことの重要性を、
いかに経営サイドが重視しているのかが解ります。

確かにそうでしょう。クルマの開発には例えば5年、7年と
いった長い時間がかかるわけです、一時的な業績の悪化や停滞、
あるいは外部環境の悪化によって、その都度クルマの開発を
見直していれば、本当に良いクルマを作るのは難しいのでは
ないでしょうか。今回の種類株の発行は、トヨタのクルマ作り
への熱意の表れという見方も出来ると思います。

一方で、だからといって新しい株主の権利を、既存の株主の権利
と別な取扱いをしてよいのか・・・こんな考え方もあるわけです。

特に海外の機関投資家などは、この点を問題視して反対票を
投じたと聞きます。

種類株の正当性はさておき、純粋経済的な視点から、
この種類株の購入がトクかソンかという点について、
考えてみたいと思います。

まず配当です。

初年度で(発行価額に対して)0.5%、
それ以降毎年0.5%ずつ上がってゆき、5年以降ずっと2.5%の
配当を受け取ることができます。

確かに配当が事前に決まっているのはよいことだと
思いますが、トヨタ株は2015年3月度実績で、すでに
2.4%程度の配当利回りがあります、従ってこの点では、
むしろ普通株のほうに分があるといってよいでしょう。

二つ目は流動性です。

上記のようにこの新株は、購入以降5年間は売れません、
従ってある程度の余裕資金がないと、ちょっと
怖くて買えそうにもありません。

一方で投資家にとって最大の魅力は、5年目以降の買取価格が
約束されている点ではないでしょうか。

投資家の買値でトヨタが買いとってくれますので、
トヨタがつぶれない限り、元本は保証されているわけです。

別の選択肢として5年目以降投資家は、手持ちの新株1株につき、
普通株1株と交換してもらうこともできます。

当然この場合受け取った普通株を、市場で売却して換金しても
かまいません。

従って仮にその時点の普通株の株価が、投資家が買った新株の
販売価格を上回っていれば、投資家は売却益を手にすることも
できるわけです。

新株の販売価格は、普通株の株価×(126%〜130%)で
決まりますので、簡単にいえば、トヨタの株価が5年目以降に
30%(あるいは26%)以上騰がっていれば、投資家は青天井の利益を
得ることができるわけです。

逆に言えば、株価上昇率が30%(あるいは26%)以下なら、
投資家は普通株への転換を選ばす、買取請求が選択肢になります、
少し難しいですが、簡単にいえば株価上昇率が
30%(あるいは26%)以内にとどまれば、投資家の利益は
ゼロです。

少し複雑ですので、トヨタ株の騰落率と、投資家の
損益をまとめさせて頂きますと、以下のようになります。

・トヨタ株がいくら下がっても、元本は保証される
・トヨタ株が0%〜30%(あるいは26%)までの上昇ならば儲けはゼロ
・トヨタ株が30%(あるいは26%)以上、騰がれば上がった分だけ儲け

まあ簡単にいえば、元本は保証されたうえ、トヨタの株価が
30%以上騰がれば、投資家は青天井の利益を得ることができるわけです。

一方で普通株の上昇が0-30%の間に収まれば、投資家の利益はゼロで、
この場合むしろ素直に普通株を持っていたほうが有利ということに
なります。

さて上記を踏まえたうえでこの種類株、お得なのかソンなのか・・・

さらに解りやすくするため、いくつかの事例で、当初5年間のみに
限定した損得勘定について考えてみたいと思います。

□100万円で購入、5年後トヨタの株は20%上昇

・新株を買った場合

普通株の上昇率が30%(あるいは26%)以下なので、
投資家は普通株への転換を請求せず、買取を請求することに
なります。

5年後買取請求した場合に受け取るお金は100万円で損得なし、
5年間で受け取る配当の合計は75,000円です。従ってこの
投資によって7.5万円の利益をあげることができます。

注)新株を「買い取り請求」も「普通株への転換請求」も行わず、
5年経過後そのまま保有するという選択肢もありますが、
ここではお話しを簡単にするために・・・

・普通株を買った場合

これに対し普通株を100万円で購入し、5年経過後に売却すれば
どうでしょうか、この場合株価は20%上昇しますので、5年後の
売り値は120万円、さらに(配当が現状維持なら)この間の
配当合計は12万円(注)となり、この投資によって32万円の
利益をあげることができます。

注)配当利回りは2.4%で一定と仮定、なお税は考慮していません

□100万円で購入、5年後のトヨタ株は20%下落

・新株を買った場合

5年後買取請求した場合に受け取るお金は100万円で損得なし、
5年間で受け取る配当の合計は75,000円です。従ってこの
投資によって7.5万円の利益をあげることができます。

・普通株を買った場合

これに対し普通株を100万円で購入し、5年経過後に売却すれば
どうでしょうか、この場合株価は20%下落しますので、5年後の
売り値は80万円、一方で(配当が現状維持なら)この間の
配当合計は12万円となり、この投資によって8万円の
損失となります。

□100万円で購入、5年後のトヨタ株に変化がなかった場合

・新株を買った場合

5年後買取請求した場合に受け取るお金は100万円で損得なし、
5年間で受け取る配当の合計は75,000円です。従ってこの
投資によって7.5万円の利益をあげることができます。

・普通株を買った場合

これに対し普通株を100万円で購入し、5年経過後に売却すれば
どうでしょうか、この場合株価は不変ですから、5年後の
売り値も100万円、一方で(配当が現状維持なら)この間の
配当合計は12万円となり、この投資によって12万円の
利益となります。

以上見ましたように、新株が普通株より有利なのは
株価が下落した時だけで、しかも両者の配当利回りの差を踏まえ
計算すれば、株価が4%以上(注)下落しなければ、新株有利には
なりません。

(12万-7.5万)÷100万=4.5%

以上のような観点から考えますと、5年間の期限付き投資と
考えるなら、普通株優位といってよさそうです。

ただし例えば10年、15年といった長期投資として
この案件を見るならどうでしょうか。

この場合2.5%の利回りと元本での償還が、
トヨタによって保証された満期無しの債券と言えなくもなく、
長期投資の姿勢をお持ちの方にとっては、
一つの選択肢になる得るでしょう。

では今回はこのへんで。

(2015年6月23日)




 




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