ホーム > 連続読みもの(抜粋版) > 2−3.新興国株のサイクル性をどう活用するか(その4)
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■新興国株のサイクル性をどう活用するか(その4)

一方で成長国である新興国の株価は、例えばこの10年でどのように推移してきたのでしょうか、過去は必ずしも未来を約束するものではありませんが、未来を予測する上で、過去は私たちに大きなヒントを与えてくれる場合があります。

例えば下記は2002年以降の香港H株指数の推移です。


(『サーチナ』サイトより)

皆さんはこのチャートをご覧になって、どのようにお感じになるでしょうか。

ちなみに香港H株指数は、中国本土に本社を置きながら香港株式市場に上場している企業の株価指数で、簡単にいってしまえば、中国の優良企業の株価の平均値だとお考えください。2002年といえば、米国のITバブルの2年後で、日米を始め世界の先進国経済は後退の真っただ中でした、先進国株も先進国経済とリンクして2003年にかけ一貫して下げ続けました。要するに先進国の株価は、このチャートの起点となる2002年から2003年あたりまでは下げ続けたわけです。

さてそのような視点でもう一度上記のチャートをご覧いただくとどうでしょうか。

香港H株指数は、その間ほとんど先進国の景気後退の影響を受けず、むしろどちらかといえばやや緩やかな右肩上がりで上昇していることがわかります。一方で先進国の株価は、この2000年〜2003年にかけてどう動いたでしょうか。下記は日経225の直近10年チャートですが、先進国の株価は概ねどこも同じような形状を描いています。


(『ヤフーファイナンス』サイトより)

いかがでしょうか・・・この間の先進国の株価サイクル、即ち

・2000年〜2003年までの下げ
・2003年〜2007年までの上げ

のうち、香港H株は最初3年間の下落局面はほぼ無反応、後半4年の上げ相場のみ連動して上昇したということになります。私たちはこの事実をどのように解釈すればよいのでしょうか。

いくつかの見かたができると思いますが、私は本格的に中国株が世界のマネー圏に組み入れられたのは、実はごく最近になってからで、それ以前は世界のマネーは、中国を投資先として十分認知していなかったのではないかと考えています。世界の投資マネーが中国市場に目を向け始めたのは、ゴールドマン・サックスが創作したBRICsという言葉が市場に広く浸透し始めたころ、言い換えれば2005年ごろではなかったでしょうか。

それ以前は先進国株との連動性はさほど高くなかったが、前回の上げ相場(2003年〜2007年にかけて)は、ちょうど新興国株が世界のマネー圏に組み入れられた時期と一致した・・・ 私はこれが「前半3年無反応、後半4年急連動」の理由ではないかと思います。

もし上記の見かたが正しければ、ここ数年世界は大きなパラダイムの転換を経験したといえるかもしれません。中国を始めとした新興国経済が、完全に世界経済のなかにビルト・インされたということをですから・・・歴史的にみても、中国一国が先進国中心の世界経済に組み込まれたインパクトは、とても大きいと思います。

1960年から1970年代にかけ、当時の新興国であった日本と西ドイツが先進国にキャッチアップし、世界経済に組み込まれましたが、歴史上今回ほど大きな人口の塊(かたまり)が、キャッチアップしてきた経験を世界は持ったことがありません。しかも中国の後にはインド、そのあとにはブラジル、ASEAN諸国といった人口大国が続いています・・・

私たちが将来経験するであろう景気回復は、おしなべて新興国が牽引する形で進むのは間違いないでしょう、であれば株価においても新興国と先進国の上昇率に大きな開きがでてくる可能性を意識しておくべきではないでしょうか。たとえ現在緩やかに進行しつつある景気回復が、欧州発の金融ショックによって不幸にも短命に終わったとしても、いずれまた景気回復期は訪れることでしょう。私たちはこれからも繰り返し、2005年-2007年型の新興国株チャートの再現をみることになるのではないでしょうか。

一方で新興国の株価は、先進国に比べ激しく上下する傾向がみられます。「激しく上昇した時は、下落するときも激しい」これは私たちが誰でも経験的に知っていることですし、また資産運用の教科書にもよく書かれていることなのですが、現実の株の世界でこの理由を説明するのはなかなか難しい作業です。この理由を説明する一つの鍵は「マネーの質」にあるのではないでしょうか。より高いリターンが期待できる市場には、当然より高いリターンを求めるマネーが入ってくるわけですね、そのようなマネーは集まりやすく、散りやすい性格をもっていますので、上昇期にはより激しく上昇し、下落時にはより速く下落する傾向にあるのかもしれません。いずれにしても新興国株は今後長期的に上昇する可能性が高い半面、これからも景気のサイクルにあわせて激しく上下動を繰り返すことになるでしょう。

以上みてまいりましたように、私たちが株式投資を行う場合、成長性の高い国で行うべきということについて議論の余地はないでしょう、一方でその場合、私たちの資産が激しい相場変動にさらされるであろうこともまた間違いないでしょう、では私たちはこのジレンマにどう向き合っていったらよいのでしょうか。


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