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アンナンの金貨と銀貨

今回ご紹介したいのは、以下の金貨です。表側は「嗣徳通宝」の文字、裏側は龍の図柄です。

この写真をご覧になって、ほとんどの方は中国もしくは日本の金貨だとお考えになるのではないでしょうか。ちなみにこのコインは西暦1847年から1883年にかけて鋳造されたものです。当時漢字使われていた国と言えば、もちろん清国だけではありません、朝鮮王国とわが日本でも使われていました。でもこのコインは左記3国いずれのものでもありません。意外に思われるかもしれませんが、漢字はこのコインが作られた安南(現在のベトナム)でも使われていたのです。

当時のベトナムはフランスが徐々に侵食を加え、侵略地域で植民地化政策を進めていました。フランスが完全にベトナム(安南)を支配下に置いたのは、ちょうどこのコインの鋳造が終わる1883年ですが、おそらくフランスは、それ以前すでに同国を半植民地状態においており、その統治下でこのようなヨーロッパ基準ともいえる円形の大型金貨を鋳造したのではないかと思います。このコインは重量約27グラムの大型の金貨ですが、これに肩を並べる同時代のアジア金貨は、タイの4バーツ金貨(1864年)、我が国の明治旧20円金貨(1871年)などごくわずかであり、当時アジア最大の国だった清国ですら、1906年の一両金貨の登場を待たなければなりません。

次にこの金貨の価値を考えるうえで重要な残存枚数についてです、このコインはそもそも流通用に作られたものではありません、同時代の安南のコインには、たびたび上下の2か所に穴があいたものがみられますが、これらの穴は飾り付のタッセルを通し、首から下げるためにあけられたものです。このことからこれらコインは(我が国の大判と同じく)恩賞用もしくは顕彰用に作られたものだと解ります。この金貨の鋳造枚数に関する記録を僕は目にしたことはありませが、おそらく恩賞用に鋳造されたという経緯から考えて、その鋳造枚数はごく僅かだったのではないでしょうか、実際このコインは世界中のオークションを見渡しても、せいぜい一年で数枚程度しか姿をみせません。感覚的には残存枚数ベースでみて世界に数十枚といったところではないかと思います。

さて問題の価格です、投資対象として見たコイン相場は、そのコインが作られた国の経済力と密接な関係があります、おそらく人がコインを集めたいと考える場合、イギリス人はイギリスのコインを購入し、中国人は中国のコインを集めるといったように、まず自国のコインを収集もしくは投資の対象にするからでしょう。そのような観点でみれば、確かにベトナムは近年経済力をつけてはいますが、まだまだ数ある新興国の一つに過ぎません、おそらくこの金貨の現在の相場もまた、そのような状況を反映しているといってよいのではないかと思います。ご参考までに現在の価格はEFクラスで500万円〜600万円といったところです。ただしこの金貨のEFクラスはめったに目に致しませんが・・・

では今後はどうなのでしょうか、先ほどご紹介しましたように、この金貨と同時代の金貨として、タイのラーマ四世4バーツ、日本の旧20円金貨、中国清朝の1ドル金貨がありますが、それぞれのおおざっぱな相場帯を見れば、この金貨の割安感が目立ちます。ちなみに上記3銘柄の現在の相場は、タイ4バーツ(数千万円ほど(注))、旧20円金貨(500万円〜800万円)、清朝1ドル金貨(1000万円ほど)です、明治20年金貨は他2銘柄と比べやや安いですが、同金貨は残存枚数が多く、その点は割り引いて考えなければなりません。

注)タイの4バーツは贈答用にわずか5セット鋳造されたのみで、投資対象になりづらいといってよいでしょう。

このコインはベトナムの経済規模を反映する形で、いまのところ比較的安価に放置されてはいますが、僕はこの安南金貨の将来に投資対象として期待したいと思います。ただし先ほど申し上げましたように、このコインはめったに市場で目にすることはできません、見つけたとしても(恩賞用として紐を通すための)穴が開いたものがせいぜいです、逆に言えば皆さんがこのコインの“穴なし極美品”を目にする機会がありましたら、多少高価でも躊躇なく購入されることをお勧めしたいと思います。

余談ではありますが、このコインには銀貨バージョンもあります。銀貨も金貨同様に恩賞用として鋳造されたもので、コイン上下に穴が開いたものをよく見かけます、穴が開いていなくても磨き、洗浄など、世界の収集基準でみて“瑕疵あり”扱いになってしまうコインが大半です。現在の相場は“瑕疵あり(美品クラス)”で10万円前後、洗浄痕や磨きのない極美品クラスで30万円〜50万円といったところでしょう。銀貨の場合金貨と違って、それほど見つけづらいというほどではなく、国内のオークションでも年10枚程度は見かけます。また品ぞろえの多いお店なら、コイン商の店頭で見かけることもあります。皆さんがもし瑕疵のないアンナン銀貨を見つけられたら、これもまた収集や投資の対象にお加えになることをお勧めいたします。

 






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