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コインと宝石

最近僕はお客様からこのような質問をいただくことがあります。

「投資するならコインと宝石どっちがいいのですか?」

もちろん趣味の対象としてではなく、投資の対象として好ましいのはどっちかという意味です。今回はそのような観点で少しお話をしたいと思います。

コインと宝石・・・僕はまずコインから入り、それから少しずつ宝石の勉強をしたのですが、当初コインと宝石の共通点の多さに驚いたものです。例えば投資対象としてのコインの価値は何によって決まるのかという点について考えた場合、以下のようにまとめることができます。

1. 希少性(すなわち残存枚数)
2. デザイン
3. 状態
4. 発行された国

これに対して宝石はどうでしょうか?例えば希少性です。宝石もこの点では全く同じで、例えばアメジストやタンザナイトなど数がある宝石は価値がありませんし、おそらく今後長年もっていても価値の上昇は期待できないでしょう。これに対して例えばルビーやサファイアはどうでしょうか。特にビルマ産の非加熱石などは、すでにあらかた掘りつくされており、一次採取された石が新たに市場に出てくることは稀です。この点でクラシック・コインと似ている気がするわけです。例えば現代の記念金貨は今後もドンドン発行されることになるでしょう、これに対し、たとえば古代ギリシャの金貨はどうでしょうか?ごくまれにまとまって発見されることはあっても、市場で瞬く間に吸収されてしまいます。市場は常にレアなコインの枯渇状態にあるといってよいでしょう。

コインの場合状態のよさがものを言いますが、この点で宝石もよく似ていると思います。

コインの場合、完全な未使用品というものはまずありません。製造されたままの状態で、まったく使用されていないものであっても、例えばコインの鋳造過程において、ほかのコインと接触したり、輸送の途中袋の中でこすれたり(バッグマーク)して、多少の傷はついてしまうものです。ですからコインに完全を求めるのは無意味で、ほかのコインと比べてどうか?といった相対感覚が求められるわけです。この相対感覚というものを身に着けるためには、数多くのコインを実際に見なければなりません。しかも同じ銘柄のコインを見なければならないのです。これはどういうことかといいますと、例えば18世紀スペインで鋳造されたカルロス4世の8エスクードという金貨がありますが、この金貨は大量に鋳造されたため、コインの鋳型に摩耗が見られます、最初の頃に鋳造された金貨は刻印もしっかりとしているのですが、後で鋳造されたコインになりますと、どうしても刻印が不明瞭になってしまいます。その結果、未使用に近い金貨でも、一見すると流通したコインのようにみえてしまうわけです。

18世紀のスペイン植民地で発行された8エクスード金貨

このようにコインというのは、銘柄ごとに個性がありまして、その個性を知るためには実際に多くのコインを見るしかありません。

同様のことが宝石にもいえます、コインと同じく宝石も完全無傷なものはありません。表面は研磨いたしますので、あからさまなキズはありませんが、例えば生地不足によるヘコミ、あるいは内包物、クラック、ヒビ、不純物など、拡大鏡でみればさまざまな瑕疵をみつけることができます、要はコインと同じく相対感覚が必要で、その感覚を身に着けるために、数多くの良い石、悪い石を実際に見て相対感覚を身に着ける必要があるわけです。

上記基準以外でも、投資する際に真贋を見極める目が重要であることは言うまでもありません。

コインの場合、特に昨今では中国のコインに偽物が多いので注意が必要で、その昔僕も何度か偽物を購入してしまったことがあります。日本の場合は鑑定書、海外の場合は鑑定会社のケースに入っていると、一定の安心感がありますが、それでも100%ということはありません。めったにあることではないですが、米国の鑑定会社のケースごと偽造するタチの悪い輩もいるので注意が必要です。ニセモノを避けるためには、最終的にはどこから買うかが決め手になります。信頼のおけるコイン商には必ず目利きの鑑定人がおり、そのようなコイン商で購入したコインは、場合によっては米国のNGCやPCGSのケース入りコイン以上の信頼性をもって、市場で売買されることになります。

宝石の世界でも似たようなことがいえます、まずコインのニセモノにあたるのは、過熱石、あるいはエックス線で処理した石などです。専用の分析器で調べると一目瞭然で、このような石はいわば二束三文で投資対象として不適格です。いまのところ日本では過熱、非加熱についてさほど問われることはありませんが、今後は峻別されることになるでしょう。

次の共通点は、ここ数年の価格動向です。

例えば非加熱のサファイアやルビーの価格上昇には目を見張るものがあり、この点でも投資対象としてコインとの共通性を感じないわけにはゆきません。コイン同様、売買のコストは僕の推定で20%ほどありますが、数年も持てばペイする可能性が高いでしょう。両者の価格高騰は、やはり先進国で進む投資マネーの過多現象が一因ではないかと思います、マネーに対する不信感が相場上昇の背景にあるのではないでしょうか。

以上僕が感じる投資対象としての両者の共通点です。

では冒頭のご質問に戻り、投資対象としてコインと宝石どっちがいいのでしょうか?

よくいただくこの質問に対しては「最終的にはご本人の好みの問題です」とお返事するようにしております。投資対象として見た場合、両者の共通点は多く、僕にはどっちがいいと言い切れません。ですから最終的には皆さんの好みの問題で、たとえば歴史がお好きな方であればコインをお買いになればいいと思いますし、ファッションや流行に関心がおありなら、宝石を購入されたほうがいいかもしれません。

 

 






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