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ヘッジファンド〜池の中の鯨論
皆さんこんにちは。
今回も前回に引き続き、ヘッジファンドのお話しをさせて頂きます。

ヘッジファンドについて少し勉強してゆきますと、必ず『池の中の鯨論』に行き着きます。

この考え方はヘッジファンドのサイズがある程度大きくなってくると、自らのオーダーで市場を動かしてしまい、結果として得られる収益が減ってしまうというものです。

さらにもう一歩進め、同じような投資戦略を用いるヘッジファンドが増えてくると、収益機会の奪い合いになり個々のファンドの取り分が少なくなる、このような現象も『池の中の鯨論』にひっくるめて語られているようです。

私もこの考え方は確かにある程度正しいと思います。

前回ヘッジファンドの投資手法について、いくつか例を挙げて御説明いたしましたが、例えば『裁定取引(Arbitrage)』などはこの理論が当てはまる典型的な例ではないでしょうか。

前回は新幹線のディスカウント・チケットの東西格差のお話しを致しましたが、市場の規模が小さければ小さい程僅かなファンドの投資資金の流れで『裁定機会』は無くなってしまいます。

数ある『裁定取引型』ファンドは血眼になって、世界中のあらゆる『裁定機会』を探していますが、
ファンドのサイズや銘柄数が現在のように膨張してきますと、なかなかパフォーマンスを維持するのは難しいのではないでしょうか。

他にも前回御紹介した『M&A型』ファンドなどもこの典型だと思います。

昨今M&A案件は増えてはいますが、それでも先ほどの裁定機会と同じくそうざらにM&A案件は転がっているわけではありません、最近では自ら『企業再生』に乗り出し、再生後の転売を狙った長期投資型ファンドも増えてきていますが、裏を返せば昔のようにお手軽にM&A案件を見つけにくくなったということなのでしょう。

では、すべてのヘッジファンドは『池の中の鯨』になりつつあるのでしょうか。

例えば『トレンドフォロー戦略』

前回の繰り返しになりますが、これは商品先物市場や金融先物市場で先物売買を行う事によりリターンを狙う投資手法で、マンのAHLプログラムやスーパーファンドなど数多くのファンドがこの手法を採用しています。

マンのAHL戦略を採るファンドの資産残高はすでに2兆円を超えているようですが、果たしてこのファンドは『池の中の鯨』状態になっているのでしょうか・・・

そもそもトレンド・フォローは現在のトレンドが今後も継続するという前提にたって先物の売り買いを行う手法です、今後上昇相場と読む場合先物の買い建て、相場が下がると読んだ場合は逆に先物の売り建てを行います。

従ってこのようなファンドは相場の上昇局面では、さらに相場の上昇要因を作り、逆に下落相場においてはさらに相場を下落させる要因を作ることになります。

いいかえれば自らのオーダーがトレンドを助長し、それによってさらに収益が拡大する・・・このような『収益拡大ループ』が生まれる可能性があるというわけです。

一方で、このような『トレンド増幅機能』があまりに激しく働き過ぎると、時としてトレンドの頻繁な反転(これは短期でかつ激しいトレンドとして現れます)を招く場合もあります。

最近起こっている(さまざまな市場での)相場の振幅の激しさは、まさにこのような原因で起こっているようにも思います。

それぞれのファンドのプログラムは微妙に異なり、外部から容易に窺うことはできませんが、中にはこのような短期のトレンドを捉まえきれないファンドもありますので注意が必要です。

最後にマンのファンドA(宣伝ではありませんのでファンドの名称は伏せさせて頂きます)の最近のパフォーマンスを見ておきましょう。

2001年 +19.70%
2002年 +11.39%
2003年 +22.30%
2004年 +2.51%
2005年 +19.76%

直近12ヶ月 +18.60%

このパフォーマンスの推移を見ても、トレンド・フォローには少なくとも『池の中の鯨論』はあまり当てはまらないような気がします。
むしろトレンド・フォローにとっては『急激かつ短いトレンドをどの程度捉えられるか』、この点のほうが余程大きな問題のように思います。


では 今回はこのへんで。

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