■変額年金保険とは
皆様は変額年金保険についてご存知でしょうか?
保険という名前は付いていますが、実は中身は投資信託そのものです。一時払いもしくは積み立てた保険料を、あらかじめ用意されたファンド(投資信託のことです)に投資し、一定期間運用した後のお金が年金の原資となって返ってくる仕組みです。
年金の受け取り方法は通常幾通りかあり、一時払い、確定年金(ある決まった期間については受取人が死亡した場合にも遺族が受け取ることができます)、終身年金(一生年金を受け取り続けられます)などから選択することができます。
用意されたファンド(投資信託)は商品によってまちまちですが、通常の場合3本~15本程度が多いようです。また、加入者がその時々の判断でファンドを入れ替える(スイッチといいます)ことができるようになっており、これも通常年間10回~15回程度は無料で行えます。
■変額年金保険の短所
このように、保険商品でありながらも投資信託の性格も併せ持った商品として人気の高い商品ですが、注意をすべき点がいくつかあるので列挙しておきます。
●年金原資が払い込み元本を割る可能性があります。
選択したファンドの運用成績によっては、払い込んだ保険料を年金原資(運用期間が終了したときの積立金の合計で、この金額がそのまま将来受け取る年金の原資となります)が下回る可能性があります(死亡給付金の最低保障と混同しないでください。据置期間中に支払われる死亡給付金はほとんどの場合一時払い保険料相当額が最低保障されています)。
●早期に解約・減額する場合は解約控除(一種のペナルティです)がかかります。
据置期間中、契約日から起算して7年~10年で解約する場合、最大で8%程度の解約控除が発生します。おそらく商品の構成上、想定より早い機会に解約されると利益が出ない収益構造になっているのでしょう。
これは加入時に販売手数料を取りづらい、という保険商品の特性と関係あると思います。中身が投資信託なので、投資信託の運用会社には初期の手数料が保険会社から支払われているのでしょう。純粋な投資信託の場合、手数料は購入時に購入者から証券会社を通して運用会社に支払われるのですが…。
いずれにしても、この最大8%というペナルティは高すぎです。ちなみに某社の例をあげると、1年未満の解約で8%、5年未満でも4.8%となっています。あまり話題になりませんが、大いに注意しなくてはなりません。
●その他の運用期間中コストについて
ほかにも「保険関係費」「資産運用費」などが発生します。「保険関係費」は本来の保険商品として発生する費用なので、あまり気にする必要はないと思います。概ね年間に換算して1%~2.5%程度の費用がファンドの積立金から日割りで控除され続けます。
注意が必要なのは「資産運用関係費」です。ファンドの運用にかかる投資顧問料(ファンドの運用会社に支払われます)や保管料などです。これもファンドによってまちまちですが、大まかに言うと各ファンドの残高から年間にして0.3%~1.5%程度の費用が日割りで控除され続けます。
■変額年金保険 VS 投資信託 どちらが有利?
変額年金保険は投資信託を直接買うのに比べ、下記のようなメリットがあるとよく言われます。
●1.上記のようにある回数までスイッチが無料でできる。
●2.支払った保険料が生命保険料控除の対象になる。
●3.据置期間中は分配金は支払われないので、課税の繰り延べ効果がある。 |
本当にそうでしょうか?まず、(2)についてですが、生命保険料控除は一時払いの場合、初年度だけに適応されます。変額年金保険は一時払いが主流なのであまりメリットはないでしょう。また、この控除枠は年間の生命保険支払額が10万円が上限になっており、ほとんどの人は枠を使い切っています。
また、(3)についても投資信託でも分配金を出さないタイプの商品を選べば同じ効果が得られます(但し、探すのに多少骨は折れますが…)。
つまるところ、ユーザーにとって一番魅力的なのは(1)のスイッチではないでしょうか。投資信託の場合、同じ会社が運用するファンド間を無料でスイッチできる商品もありますが、全く別の運用会社商品を無料でスイッチできる商品はありません。本来、投資信託というのは長期保有したときにリスクが平準化し安定した収益を狙えるというところが売りなわけで、そういう趣旨から見て頻繁なスイッチはどうかとも思います。しかし、金利や株価、景気などウオッチしながら、こまめにファンドのスイッチを行う、こういう運用方法もあながち否定できません。それはそれでアリなのではないでしょうか。
また、選択できるファンドの数が限られているということについては、逆に言うと契約者はあまり選択をしなくてすむ(逆説的すぎますか…)いわゆる保険会社のお勧め定食的な商品と言えるかもしれません。
■変額年金保険に向いている人とは
以上を総括して大胆にまとめるなら、
●一定のまとまった金額を(ペナルティー期間が終了する)8年間程度はずっと据え置ける人、要するに御自分の将来のキャッシュフローがしっかりと計算できている人。
●商品にセットされたファンドの中からの選択で、満足(もしくはかえって安心)できる比較的投資経験の浅い人。
また、かなりのニッチ作戦かもしれませんが、課税の繰り延べ効果を生かし、ソブリン債(主に先進国の高格付け債)を対象とした投資信託(例えばグローバルソブリンオープンなど)に投資したいが、分配金を受け取らず課税を繰り延べたい、という使い方もアリかもしれません。 |
ということが言えそうです。上記に該当しない人は、むしろ直接に投資信託を購入したほうが良いでしょう。
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