今年に入ってから特に「収益用マンション」への投資相談を受けることが多くなりました。おそらく、理由は3月に発表された「公示地価」でしょう。
内容はみなさんご存知のように、全国平均で対前年比-5.0%と14年連続の下落でしたが、都心の5区に限ると+0.8%と15年ぶりの上昇となりました。
ようやく下げ止まりから、一部で上昇の兆しが見え始めたという状態ですが、東京の都心部に限れば既にミニバブルの状態とも言われています。ただし、それはあくまで都内の超一等地やオフィスビルに限ったこと、長い目で見ればまだまだ不動産への投資機会は残っているように思います。では、私たち個人投資家が今後の地価上昇を利用して自分の資産を増やそうと考えた場合、何に投資をするのが最も有利なのでしょうか。
今回はこの問題について考えてみたいと思います。
不動産投資と聞いて、ほとんどの人が頭に思い浮かべるのは「収益用マンション」の購入ではないでしょうか?これは、数年前から「サラリーマンでも大家さんになれる」みたいなノリの本が大量に出版されたことにもよると思いますし、また、マンション開発業者が打った宣伝効果も大きいと思います。
では、収益マンションへの投資はどの程度有効なのでしょうか?良い物件を掘り出せた場合、諸費用後の実質利回りで6%もあれば御の字ですよね。他の所得の大きい方はマンション投資による「不動産所得」と他の所得を通算できるので、多少の利回り上乗せ効果はあるかもしれません。ただ、一方では長期間にわたって自分の資産が固定されるという「流動性リスク」にも十分に気をつけなければなりません。
少なくとも、仲介手数料の高さや市場の流動性の点で株や債券などに比べ、非常に不利な商品に多額のお金を長期に渡って固定させるという自覚は持つべきだと思います。
では、不動産への投資を考えた場合、他の選択肢にはどのようなものがあるのでしょうか?下記に代表的なモノを挙げてみましょう。
●1.REIT(不動産投資信託)またはREITファンドへの投資
●2.不動産ファンドへの投資
●3.不動産ファンドを運用する会社の株式の購入 |
少なくとも、個人投資家レベルでも上記の3つの選択肢はあるわけです。これらの選択肢と収益用マンションへの直接投資を比べ、最も有利なもの、最も自分に適したものはなにかについて十分考えた上で投資を行うことをお勧めいたします。
すでにお気づきだと思うのですが、上記の1から3はいずれも不動産に直接投資を行うものではありません。いずれもファンドやファンドの運用会社を経由して不動産に投資を行うものです。株やファンドを経由しての投資ですので、直接不動産を所有するのに比べれば、ずっと流動性が高く、従って換金が容易だという点にまずご注目ください。
では、さらに上記の3つの投資手法について詳しく見てきましょう。
●1. REITまたはREITファンド
REITは不動産を対象にしたファンドです。ファンドというのは投資家から小口の資金を集めてきて、ある投資対象で運用する一種の基金のことです。得られた収益は出資比率に応じて投資家へ分配されるという仕組みですね。REITの場合は、投資対象はオフィスビル、アミューズメント施設、倉庫などの業務系の不動産が中心ですが、最近では都心の優良物件や、業務系の不動産がすでに高騰しているとい事情もあり、対象は徐々に地方へ、あるいは居住系不動産へ移りつつあります。2005年5月現在のREITの設定数はまだ15本にすぎませんが、今後は設定ラッシュが予定されており、今年中に15本程度の設定が見込まれています。
では海外のREITの市場はどうなっているのでしょうか。REITの先進国は米国と(意外に)オーストラリアです。各国のマーケットボリュームは米国がおよそ30兆円、オーストラリアでも6兆円程度はあります。これを見ても日本のREIT市場はまだまだ成長余地があるように思います。
REITを資産に組み入れる場合、REITへの直接投資に加え、REITを投資対象にしたファンド(REITファンド)への投資という選択肢もあります。また、米国やオーストラリアなど海外のREITへも分散投資するファンドもありますのでご一考になってもいいのではないでしょうか。
●2. 不動産ファンドへの投資
上記のREITが上場された公募型(一般に公開された)のファンドであるのに対し、ここでいう「不動産ファンド」は私募型(特定の投資家向けに募集が行われる)のファンドを指します。また、REITが購入した土地建物を再生し、稼働率を高めて賃料収入を得るという収益スタイルを採っているのに対し、不動産ファンドは購入した土地建物を再生し、稼働率を高めた上で(REITなどへ)転売するケースが多いようです。従ってファンドの運用期間にはあらかじめ決められた運用期間があり、その間は一般的には解約ができない仕組みになっています。
最低投資単位も数百万円からと高額で、ある程度の富裕層を意識した商品設計になっています。この商品も一時は20%程度の利回りが普通でしたが、一部不動産の高騰の影響を受け、現在の平均利回りは10%程度まで低下しているようです。また、投資対象もREITと同じく、都心から地方へ、業務系から居住系へ徐々にシフトしているようですね。ただ、利回りが低くなってきたといっても、国内の機関投資家や個人の富裕層にとってはまだまだ魅力的な水準、しばらくは市場は拡大していくと見ておいてよいでしょう。
ただし、上記のように私募ファンドなので、ある程度の資産をお持ちの人向けではありますが。
●3. 不動産ファンドを運用する会社の株式の購入
そういう意味で、狙い目は「不動産ファンド」を運営する会社(一般的には「不動産流動化銘柄」と呼ばれています)の株式の購入です。これらの会社はまだまだ規模は小さいですが、マザーズやヘラクレスといった新興市場に上場されているケースが多いです。
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ダヴィンチ・アドバイザーズ |
4321 |
ケネディックス |
2337 |
アセット・マネジャーズ |
では過去1年間を見た場合、上記の3つの選択肢のうちどれが最も高いリターンを得ることができたのでしょうか。
●1. REIT
みなさん御承知のように、REITを保有すると配当を受ける事ができます。現在では多少下がったとは言いながら、年率で3.8%程度の利回りとなります。
もちろん、配当金だけではなくREITの価格そのものの上昇によるキャピタルゲインを手にする事もできます(ただし、売却しなければなりませんが)。ではこれらを合計すると年率でどの程度の利回りが得られたのでしょうか。東証REIT指数の推移がそれらを反映しているのですが、2004年5月6日時点では1392ポイント、2005年4月27日時点では1656ポイントとなっています。即ちここ一年間でおよそ19%の収益を上げたことになります。
●2. 不動産ファンド
残念ながら私募なので公表された数値はないのですが、一般的には10%から20%程度と言われています。
●3. 不動産流動化銘柄
例えば、上記の3銘柄について見れば
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ダヴィンチ・アドバイザーズ 約130% |
4321 |
ケネディックス 約80% |
2337 |
アセット・マネジャーズ 約65% |
以上のようになります。先のことは誰にもわかりませんが、少なくともここ一年間を見た場合、3の不動産流動化銘柄を購入する事により、間接的に不動産市場に参加することが最も収益率の高い投資行動だったことがわかります。
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