オフショア金融商品への課税について
皆さんこんにちは。
当社に資産運用のご相談においでになるお客様のうち、大半の方はなんらかの形でオフショアの金融商品をご希望になります。

最近では「ケイマン籍」「マン島籍」など日本の証券会社で外国籍のファンドは購入できますが、これらのファンドはオフショアの金融商品には該当いたしません。
オフショアとは(主に)タックス・ヘイブン(租税回避国・地域)に置ける金融拠点のことで、そこで運用される金融商品で国内で登録されていないモノを「オフショアの金融商品」と呼ぶ場合が多いようです。
もちろん、これらの金融商品は日本の証券会社の窓口で購入することは(ほとんどの場合は)できず、直接投資家がファンドを買い付けることになります。

オフショア・ファンドについての一般の方の知識は急速に高まりつつありますが、税制面での知識はといいますと、まだまだ十分に理解されていらっしゃる方は少ないようです。
今回は(少し退屈かもしれませんが)オフショア金融商品にまつわる税金のお話しを少しさせて頂こうと思います。

では最初に質問です。
仮に皆さんがマン島にあるオフショア銀行の口座に10,000US$を預金したとしましょう、1年後に利息として350US$が入金されたとするとどうなるでしょうか?この350US$に対して税金を支払う義務はあると思われますか。
もちろんタックス・ヘイブンですので、日本の銀行のように源泉分離課税などは無く、利息の100%が口座残高に加算されることになります。
ときどき、海外で発生した所得は国内に送金しない限り、申告・納税の義務は無いと理解しておいでの方もいらっしゃいますが、それは誤りです。

この350US$は海外で得た所得として、その年の翌年の確定申告時に申告しなくてはなりません。
昨日(6/27)付けの日本経済新聞の一面トップにこのような記事が載っていました。

「海外金融取引の課税強化へ」
~先進各国がオフショア市場(海外)金融取引の課税強化に動き出した。外国為替取引規制の緩和やITの発達で、富裕層個人の間でも高利回りなどを求めてオフショア口座の開設が急増しているためだ。(中略)英国では、税法に関する仲裁機関が英バークレイズ銀行にオフショア口座の全顧客名簿を税務当局に提出するよう求めた。(中略)オフショアで得た利息などの所得も原則、自国の所得と合算申告する必要があるが、同行の場合、その八割が未申告だったという。当局は同行の課税漏れは累計で15億ポンド(約3000億円)と推計している。
米税務当局の内国歳入庁もオフショア口座による個人の課税逃れへの罰金を二倍に引き上げ、銀行検査も強化。(中略)日本からも主要なオフショア市場ケイマン諸島だけで昨年は6兆8千億円の資金が純流出しており、日本の財務省は各国間で税務情報を交換する枠組み作りを呼びかけている。

以上です、中には意識的に課税逃れを行う方もいるようですが、このメルマガの読者の皆さまは是非このような事実関係を正確にご理解いただき、適正に申告・納税頂ければと思います。

では、引き続き2つ目の事例です。
仮に皆さんがケイマン籍のオフショア・ファンドに10,000US$投資していたとしましょう、翌年末にファンドのレポートを見たところ、あなたの持分が12,000US$に増えていたとしましょう。
この場合、申告・納税の義務はあると思われますか?
答えは「ノー」です、いくらファンドが高いリターンを上げていたとしても、利益を実現(即ちファンドを売却)しない限り、課税されることはありません。

では、今度は12,000US$で利益を確定し、売却して手にしたお金をHSBCの香港支店に送金したとしましょうか。
この場合、申告・納税義務は発生するでしょうか?
答えは「イエス」です、冒頭のオフショアの銀行口座で受け取った利息と同じく、売却し利益を確定した時点で(日本の税務当局への)納税義務が発生し、これはお金が海外にあっても日本に戻っていても関係ありません。

ここまで考えてくると、では日本の税務署に申告するとして課税区分は何に該当するのかという点が問題になってきますね。
大まかに申し上げて、オフショアのファンドの売却により得られた利益は、下記の何れかに該当する事になります。

1.(外国株の売却益と同じく)20%の申告分離課税。
2.(公社債投信の売却益と同じく)非課税。
3.雑所得として他の所得と合算して総合課税。

いうまでもなく、この中で一番厳しいのは3の雑所得ですね、1の20%の分離課税で済めばまずます・・というところでしょうか。

ほとんどのオフショア・ファンドは1~3の何れかに該当するのですが、実際には所轄の税務所、さらには担当官次第でさまざまに判断が異なってくるようです。
私自身も具体的なオフショア・ファンドを例に出し、都内のいくつかの税務署に電話で見解を確認してみたのですが、実は回答はマチマチでしたし、担当者もこのテの先端商品へに知識が不足している場合が多く、判断しかねるといったところでしょうか。
ラチがあかないので国税庁に直接聞いてみたところ「あくまで商品性で判断する、仮に同様の商品性を持ったファンドが国内で販売されていたとすると、基本的にはオフショアのファンドであっても同様の課税方法を適応する」との回答が返ってきました(ちなみに、当社のお客様も何名か同様の質問を国税局に行ったのですが、回答はほぼ同様のものでした)。
要するに例を挙げると、クアドリガのスーパーファンドを国内の証券会社で買うと20%の分離課税が適応されますが、本ファンドの場合は直接オフショアで買い付けても20%の分離課税が適応される、このように解釈できることになります。

このお話し、結構奥が深くどんどんお話しが専門的になってしまいますのでこの当たりにさせて頂きますが、基本的には

・オフショアの金融商品(銀行口座を含む)は、売却(実現)した時点で申告・納税義務が発生する。
・オフショアの金融商品は、その商品の性格により課税区分(もちろん税率も)が異なる。

以上2点は、しっかりと押さえておいて頂きたいと思います。

では 今回はこのへんで。

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