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ヘッジファンド~その戦略
皆さんこんにちは。
今回は久しぶりにヘッジファンドの運用戦略について考えてみたいと思います。

一口にヘッジファンドといっても様々な運用手法があります。

例えば村上さんがやっていた手法も、一種のヘッジファンド的運用手法ですが、あのファンドをあえてヘッジファンドのカテゴリーに入れるとすれば、M&Aということになろうかと思います。

このM&Aという手法は、企業の買収案件を察知し(あるいは自らM&Aを仕掛け)、買収される側と買収する側の株価の値動きを先読みし、それにより
収益を挙げる手法です。

他に裁定取引というのもあります。

例えば本来であれば(理論的に)同一の価格であるべきものが、一時的に双方の価格に乖離がでる場合があります、そのような価格の一時的な乖離はいずれ元に戻ると考えて先回りして売買を行っておくという手法です。

これだけ情報と輸送機関が発達した現在の日本ですが、この裁定取引の機会は容易に見つけることができます、例えば、ディスカウント・チケット屋で売っている新幹線の乗車券、東京と大阪では微妙に違うようですね。

それぞれ別の経済圏に属していますし、ディスカウント・チケット業者は
全国チェーンを張れるほど規模は大きくなく・・・このような理由で双方の相場は一時的に多少違ってくるのでしょう、もちろんファンドが投資対象とするには、ある程度の市場規模と流動性が必要ですので、ディスカウント・チケットそのものがファンドの投資対象になることはないと思いまが・・・例を挙げればこのような運用手法が裁定取引と呼ばれています。

もともと裁定取引は、上記の例のような市場のほんの僅かな歪みを利用した戦略ですので、ファンドの投資家を満足させるためには一定のレバレッジをかける必要が出てきます。

その昔(といっても1998年頃のお話です)米国のLTCMというヘジファンド運用会社がありました、彼らは新興国と先進国の債券の間の裁定取引をその主要な戦略としていたのですが、何と破綻ま際では100倍程度のレバレッジを掛けていたといわれています・・・冷静に考えるとムチャなお話しですが。

その一因はそもそも上記のように裁定取引の収益率が低く、高いレバレッジを掛けざるを得ないという事情もあったのでしょう。

現在ではヘッジファンドの平均的なレバレッジは2~3倍程度と随分当時と比べて大人しくなりましたが、やはり裁定取引手法ではその性格上レバレッジはやや高めに設定されているのではないでしょうか。

他に株のロング・ショートなどという手法もあります、これは現在のヘッジファンドの代表的な戦略になりつつありますが、割安銘柄の買いと割高銘柄の売りを組み合わせた手法です。

例えば現在の日経平均が16000円としましょうか、この時点でA株は割高に買われており時価は800円、これに対しB株は割安の放置されており600円だっとしましょう。

このファンドは割高なA株を1株空売り、割安なB株を現物で1株購入した
とします。

一ヵ月後日経平均は1割下落し14,400円となりました。

割高なA株は2割下落し560円、これに対し割安なB株は下落はしましたが、
下落幅は小さく5% その結果株価は570円になったとしましょう。

この時点で収益を確定させてとして、このファンドの収益はいくらになったでしょうか。

A株は800円で売り、560円で買い戻しですから +240円
B株は600円で買い、570円で売りですので -30円

合計では240円-30円=210円

のプラス・リターンとなります、このように株式相場が上がろうが下がろうがファンド・マネージャーの判断のみで(絶対的な)リターンを狙えるという特徴を持っています。

ただし、株のロング・ショート戦略ではほとんどのファンドはロング(買い)にバイアスをかけていますので、株式相場の下落局面では成績はふるいません。

一方でロング(買い)とショート(売り)の持ち高をほとんど拮抗させるファンド(レラティブ・バリュー戦略)もあり、この戦略を採るファンドは本当の意味での絶対収益型(相場の影響を全く受けない)といえます。

最後にマネッジド・フューチャーズという戦略についても御説明させて頂きましょう。

この種のファンドの投資対象は

・金融系先物市場(各国の株価指数、為替、金利、債券)
・商品系先物市場(エナルギー、金属、穀物などのコモディティ)

です、、皆さんお好きなマンやクアドリガなどはここに属します。

マネッジド・フューチャーズという手法は投資対象のチャートを分析しておき、現在のトレンドが今後も継続するという前提で先物の売り買いを行う手法です。

例えば今後原油相場が上昇すると読めば、先物の買い。逆に下落トレンドが続くと読めば先物の売りで対応するという具合です。

ですから現在仮に原油が73ドルであっても、50ドルであっても関係はありません、現在の相場の方向性(トレンド)が今後も継続すれば収益を挙げる事が出来るというわけです。

ただし、今まで継続していたトレンドが反転するととまずいですね。

この5月から6月の中旬にかけ、いろいろなマーケットで相場が反転しまた、
こういう時はこのマネッジド・フューチャーズはやられてしまいます。

トレンドは人間の心理によって生み出される部分が大きく、トレンドの反転後は再び新たなトレンドが形成され、また一旦生まれたトレンドはしばらく継続する(当然その後いずれ再び反転が訪れますが)傾向にあります。

この繰り返しですね・・

儲けようとする人間の欲望がトレンドを作り出し、(本来の価格とはあまりにも離れすぎたのではという)恐怖心がトレンドを反転させる・・・・

人間の欲望と恐怖心の綱引きでトレンドが形成されるとしたら、トレンドを利用した運用手法もまた有効な投資戦略だと思います。

以上、今回は運用手法としう観点でヘッジファンドについてお話しして参りました・・・やや思いつくままに。

どのような金融商品でもそうですが、お持ちになっている商品の特性を理解していると現在の上げ(もちろん下げ)の理由を理解することができます・・・おのずと気持ちの持ちようも、場合よっては対応方法も変わってくるのではないでしょうか。


では 今回はこのへんで。

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