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■コモディティの投資尺度
皆さんこんにちは。
日本の個人投資家が「コモディティ」を投資対象として見始めたのは
2004年の秋あたりからでしょうか、きっかけは大和証券が投入した
RICI(ジム・ロジャーズさんの商品インデックス)連動型ファンドでは
なかったと思います。
よく考えてみますと、個人投資家がコモディティをポートフォリオに
組み入れ始めて、実はまだ2年ほどしか経っていないことになります。
一方、年金や機関投資家など、いわゆるプロの資金も時期という点では
大差なく、さすがにハーバード大学の基金は2005年時点ではすでに、
運用資産の10%をコモディティに投資していますが、これなどは例外で
米国最大の年金基金のカルパースですら、コモディティへの本格投資を
これからはじめようといった段階のようです。
日本の年金や大学でも、慶応大学のように、このところ株や債券など
伝統的な資産以外で運用する動きも出てきてはいますが、それでも
コモディティはまだまだ少数派のようですね。
このように金融商品としてコモディティを位置づける動きは、まだ
始まってばかりといえますが、それでもコモディティの金融商品化
は着々と進んでいるようです。
例えば、既に原油、金、銀などのETFが2年ほど前から欧米の市場で
上場され、年金や機関投資家のお金を盛んに集めていますが、先日
9/27付けで、ロンドン証券取引所に29銘柄の「商品相場連動型ETF」
が一気に上場されましたが、今回上場したガソリン、アルミニウム、
コーヒー、トウモロコシ、ウシなどはETFとしては初登場だとのことです。
(10/2付け日経金融新聞より)
このように市場が整備されることにより、今後ますます『コモディテイの
金融商品化』は進むことになりそうですね。
今回はこの『コモディティの金融商品化』が進んだ場合、私たち個人投資家
はどう対応すればよいのか、どのような点に気をつけて、コモディティを
資産ポートフォリオに組み込んで行けばよいのか、この点について考えてみたいと
思います。
まず『コモディティの金融商品化』のそもそもの意味ですが、一言で
いいますと、市場参加者が株や債券と同じ尺度でコモディティに
投資を行うというこだと言ってよいのではないでしょうか
従来、コモディティの価格は市場の需給で決まっていました。
例えば原油の産出量が増え、在庫が増えると価格が下がり、北米の景気が好転し
需要が高まると価格が高騰するというように・・・もちろん過去において
もいくばくかの投機マネーは入っていたでしょうが、投機マネーは長期でみれば
原油価格に対して中立です。
少なくとも現在のように年金や機関投資家などの長期的なマネーは決して入って
はきませんでしたので、原油の価格が需給を無視して歪められるという現象は
(長期的には)あまり見られませんでした。
ちなみに現在、年金など長期マネーは原油価格を20ドル程度押し上げている
という見方が一般的のようです。
これはなにも原油に限ったことではなく、他のコモディティでも
同じような傾向にあります。
では、今後このような長期マネーによるコモディティ相場押し上げ効果は、
どの程度になると見込んでおけばよいのでしょうか、もしそれが
前もって解れば大いに投資の参考になるはずです。
株の世界には、例えばPERといった投資尺度がありますよね、また株を保有する
ことにより配当を受け取ることもでき、投資する側はこれらの投資尺度や
利回りに着目して買う、買わないを決めるのができます。
債券の場合も同様、基準になる金利と各債券がもつリスクによって価格
が決まります。
ところがコモディティの場合は、投資尺度もありませんし、株や債券とは
違って保有しておいても何ももらえません、このあたりがコモディティと
株や債券との大きな違いです。
言い換えれば株や債券には、ある程度合理的に説明できる妥当価格というもの
があるわけですが、コモディティの場合、どこを目がけて買い上げていったら
よいのか誰もわからない、これが全ての市場参加者の本音ではないでしょうか。
例えば上記の原油の例でいいますと、需給関係で成り立つ(本来のエネルギー
の価値としての)価格は40ドル程度だといわれていますが、これに金融商品
としての価値の上乗せ部分が20ドルであれば、妥当価格は60ドルといえますが、
仮に上乗せ部分が40ドルであれば、妥当価格は80ドルだともいえるわけです。
確かにコモディティは金融商品としての一面がありますが、株や債券とは
異なり、価格が上記のような市場参加者のメンタルな部分が影響して変動し
易いという点で、他の金融商品とはやや異質な面があると言うこと、私たち
個人投資家も、常にこの点を念頭において投資を行うべきではないでしょうか。
一方でコモディティは長期で見れば、世界の人口増加やエネルギー消費の
拡大という点で、需給関係で見た(即ちベースの部分での)長期の価格上昇が
見込めます。
このようなコモディティの他の金融商品に見られない特徴を生かしつつ、
私たちがそこから収益を得ようとするなら、突発的なイベント発生などで
大きく下げたところを買う逆張りスタンスと、短期の値動きに囚われない
長期投資・・・あるいは投資尺度が見つからないのなら、あえて投資尺度など
念頭から捨て去り、相場の上下動のみに賭ける、トレンド・フォロー型
ヘッジファンドへの投資も有効ではないでしょうか。 |
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