ヘッジファンドは資産運用の パーツ
皆さんこんにちは。

前回のコラムで『日本人が投資対象としてのコモディティを知った
のは、せいぜい2年ほど前』というお話をさせていただきましたが、
ヘッジファンドについても似たり寄ったりではないでしょうか。

このコラムの読者の大半の方は、『資産運用』に関心をお持ちだとは
思いますが、それでも『ヘッジファンド』に対して正確な知識をお持ち
の方は実はそれほどいらっしゃらないのではないでしょうか・・・

今回はヘッジファンドの特徴や、その利用の仕方など、できるだけ
簡潔に解りやすく皆さんにお伝えしようと思います。

まず、皆さんがヘッジファンドに対して断片的な情報しか集められない
のには大きな理由があります。

皆さんは『公募』という言葉を耳にされたことがありますか?

『公募』というのは金融商品の募集(言い換えれば販売)のスタイルのひとつ、
読んで字のごとく、「公に募集する」という募集形態を指しています。

言い換えれば「宣伝行為を行って広く募集活動を行う」形態の事です。

例えば、証券会社などで売っている一般の投信は、金融当局に登録された
いわゆる『公募』型の金融商品に分類されます、従ってテレビや
新聞、雑誌もしくは店頭などでの、不特定多数の顧客向けの大々的な
宣伝活動が認められています。

これに対し『私募』型の金融商品もあります、これは上記の公募の
逆で不特定多数の投資家に、宣伝活動を行うことが認められていません。

このような私募ファンドを、宣伝目的で新聞雑誌、店頭などで
紹介する行為は禁じられており、皆さんがきちんと説明を聞く
機会が限られてしまうというわけです。

ヘッジファンドについて申し上げますと、必ずしも私募ファンドばかり
ではありませんが、公募ファンドとして日本国内での宣伝活動が認められて
いない点で、私募ファンドと状況は同じです。

少し長くなってしまいましたが、以上のような理由でなかなか一般の
個人投資家には、ヘッジファンドの正しい情報が伝わりにくかったと
言えそうです。

私は、このように情報が極端に少ない状況のなか、ヘッジファンドに対して
随分と誤解が生じているのではないかと思っています。

ヘッジファンドを「とてつもないリターンを生み続ける打ち出の小槌」
だと信じている人もいれば、「なにやら怪しげな金融商品」だと警戒
する人もいるようですが、いずれも情報不足からくる誤解ではないでしょうか。

なかには煽り系の本をお読みになったり、会員組織に入会されて
資産の90%をヘッジファンドで運用しなくてはならないと思い込んで
いる方もおいでの様子ですが、そろそろそのような偏った知識
を捨て、『ヘッジファンドの本来の活用法』とはどういうモノか、
私たち日本人も、この問題に冷静に向き合う時期にきているのではないでしょうか。

そういう趣旨で、以下私が考える『ヘッジファンドの本来の活用法』
についてご紹介致します。

まず、ヘッジファンドの特徴を一言で言えば、『多様性』と『絶対リターン』
という2つの言葉に集約されると私は思っています。

今までの伝統的な資産といえば、株であれ債券であれ不動産であれ、みな
銘柄はたくさんありますが、大きな意味で、例えば株や債券といった
カテゴリーそのものからはみ出すことはできません、これに対しヘッジファンドと
いう金融商品は多種多様な資産を投資対象としています。

思いつくまま投資対象を挙げますと

・株
・債券
・債権
・コモディティ
・生命保険
・転換社債
・為替
・金利

などほんとうに多種多様です。

さらに投資戦略をみても、ロング・ショート、トレンド・フォローなど
バラエティー豊かですが、基本的には『買い』と『売り』を機動的に
組み合わせ、投資対象の上下動に関係なく利益を上がることができる
という点では共通しており、これは『絶対リターン』の追求へと
繋がって行くわけです。

さらにレバレッジのかけ方一つで、非常に安定したローリスクの商品から、
極めてハイリスク/ハイリターンの商品まで、いかようにでも設計が可能、
これは正に金融工学の世界です。

言い換えれば、ヘッジファンドの最大の特徴はよく言われるように、決して
『高い収益率』や『高いリスク』にあるのではなく、その特徴を一言で言うなら

「それぞれの投資家に適した多様なリスクとリターンの組み合わせを、
ファンドという、言わば出来合いの商品として提供できる点」

この一点に集約できるのではないかと思います。

コモディティやヘッジファンドが世に出る前は、アセット・アロケーション
といえば、株(日本株、外国株)、債券(日本国債、外国債)の四資産配分
が主流でした、でもここ数年は皆さんも経験されたように日本株と
外国株の価格連動性が高く、あまり分散効果はありませんでした。

また株と債券の組み合わせは、確かに現在でも分散効果はありますが、債券の
ウエイトを高めてしまいますと、どうしても資産全体のリターンが下がる傾向に
あり、これも投資家の選択肢を狭める原因になっていました(今にして思えば、
株と債券だけでアセット・アロケーションを構成するには相当の無理が
あったようにおもいます)。

繰り返しになりますが、ヘッジファンドという商品の特徴は、その『多様性と
絶対リターン』にあります、従来のの資産で埋めることができなかった
ポートフォリオの隙間を埋めるためのパーツとして使う、それが
『ヘッジファンドの本来の活用法』ではないかと私は思うのです。

過大評価をせず、かといって過小にも評価せず、それぞれのヘッジファンド
の運用戦略と特徴をよく理解し、その上でご自分のポートフォリオに
足りない部分をヘッジファンドで埋めてゆく、こういう姿勢が重要なのでは
ないでしょうか。



では 今回はこのへんで。

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