ヘッジファンドのおさらい
皆さんこんにちは。

前回のコラムでヘッジファンドについて書かせていただいたところ、
ヘッジファンドの基本的なトコロについて書いて欲しいと、いくつか
リクエスト頂きました。

今回はそういうお話をさせて頂こうと思います。

ヘッジファンドの歴史は結構長く、1950年代に最初のファンドがスタート
しました、今もそうですが、当時も株式相場の上下動は激しく、上がるときは
気持ちよく上がってくれるのですが、相場が下がるときは自分の資産も
相場と一緒になってまっさかさまに下がってゆく、何とか相場の上げ下げに
関係なく、常に一定の収益を上げるようなファンドを作れないかと考えた
人がいたわけです。

その後彼(アルフレッド=ジョーンズさんという方です)は株を買って持っている
だけではなく、株の空売りも組み合わせることにより、相場の上げ下げに関係
なく値動きをするファンドを作ることに成功しました・・・今で言う株の
ロング/ショート戦略ですね、ロングは買い、ショートは売り、仮にロングと
ショートを同じだけ持っていますと、相場が下がろうが上がろうが関係なく
値動きするファンドを作ることができるというわけです。

皆さんここでひとつ不思議に思われませんか?

仮に、売りと買いを同じ量だけ持つファンドがあるとしますと、そのファンド
は相場全体が上がろうが、下がろうが全く値動きしないことになりは
しないかと・・・・

おっしゃるとおりです、例を挙げてご説明しますと、仮に今A社株が100万円
だとしまて、あなたが持ち金100万円の半分、即ち50万円でA社株を買い、
残りの50万円でA社株を空売りしたとしましょう、仮に一ヵ月後TOPIXが
10%上昇していたとして、さらにA社株がTOPIXと同じく10%上昇したとすれば
どうでしょうか。

一ヵ月後にはA社株もTOPIXと同じく10%上昇していることになりますので、
買い持っていたA社株は55万円になっていますよね、それに対し、売り建て
ていたA社株のほうは、その時点で5万円の損失が発生し、差し引き
チャラということになってしまします。

ところが仮にここでB社の株があって、その会社が本来の実力に比べ
株価が低い水準に放置されていたとすればどうでしょうか、実力以下の
評価しかされていないような会社の株は、いずれは本来の評価がされる
ようになるものです。

ところがいくら株価訂正の余地がある株であっても、先ほどアルフレッド・
ジョーンズさんが心配したように、相場全体が下がってしまうと、程度の
差はあれそれにつられて株価が下がってしまうものです。

さてここからです

ココで仮に、割り安株であるB社株を50万円買っておき、残った50万円
でTOPIXを空売りすればどういうことが起こるでしょうか?

上記の例と同じくTOPIXは一ヶ月で10%下がったとしましょう、一方で
もともと割安銘柄のB社株はTOPIXほどは下がらず、-7%で踏みとどまった
とするとどうなるでしょうか、計算してみましょう。

ここでB社株に投資した50万円は買い持ちですので単純に3.5万円のソン
ですね、ではTOPIXを空売りした50万円はどうなるでしょうか。

空売りの10%マイナスですので、+5万円ということになるわけです、
このようにしてあなたは5万円-3.5万円=1.5万円の利益を得て
手仕舞うとができ、相場が10%下がったにも関わらず1.5%の利益を
あげることができるというわけです。

上記の例ではTOPIXを空売りしましたが、割高にな水準まで買い進まれた
銘柄を空売りすることにより、さらに利益は膨らみます。

このように割安銘柄の買いと、割高銘柄の売りを組み合わせることにより、
皆さんはTOPIXの上下に関わらず、一定の収益を上がることができること
になります。

これがヘッジファンドの基本形、株式ロング/ショート戦略です。

ところが実際には株のロング/ショートといっても、ややロング(買い)の
ウエイトを高めるケースが多く(ロング・バイアス)、株式相場の上昇局面
では収益を上げやすく、逆に下落局面では損失を被りやすい構造に
なっています。

よく新聞などを見ていると、今月が株価が急落したので株式ロング/ショート
がふるわなかったなどと書かれていることがありますが、それはこのような
理由からなのです。

ところが株のロング/ショートのなかでも数は少ないですが、ほぼロング
とショートを同量だけもっているファンドもあります、このようなファンドは
相場の上げ下げとは全く無関係に、銘柄選択だけで収益をあげること
ができるという意味で、特にマーケット・ニュートラル戦略などとも呼ばれる
ことがありますので、覚えておかれるとよいでしょう。

これら投資対象を株に限定したファンドのほかに、債券やコモディティ
などを投資対象にしたロング/ショート戦略をとるファンドもあります。

例えばT社のHファンドなどは新興国の債券を対象にしたロング/ショート戦略ですし、
皆さんご存知のM社のA○○ プログラムなどは広い意味でコモディティの
ロング/ショートといってもよいかもしれません。

ここでA○○プログラムのお話が出ましたので、ついでにご説明
しておきましょう。

そもそもM社 という会社は18世紀後半に創設された、穀物取引
を生業とする会社でした、イメージとしては一昔前の三井物産や丸紅といった
商社のイメージに近いかもしれません、その会社は徐々に商品(今で言う
コモディティ)の先物取引までビジネスを拡大してゆきました、これはある意味
自然な流れなのでしょう、さらに1990年台にはA○○プログラム(設計者の
頭文字をとってそのように名づけられていました)を買収し、ヘッジファンド運用
に参入した、このような行きさつがあります。

さてこのA○○プログラム(正確にはA○○ Diversified Program)、まず投資対象
は何かといいますと、現在のポートフォリオは株価指数、債券、為替、金利
といった金融先物市場での運用が全体の約70%、残りの約30%をコモディティ
の先物市場で運用が行われています。

さらに実際には一口に商品先物市場といっても、原油もあれば石炭もある、
天然ガスにガソリン・・・などのエネルギー系、他にもコーン、大豆、小麦、
豚ばら肉、コーヒーなどなど農業畜産物系もあるといったように実際には
多種多様なマーケットがあるわけです、そのような個々のマーケットの中で先物
の売りと買いを組み合わせ、現在の価格トレンドが今後も継続して行くという
前提に立って先物の売り買いを日々繰り返している、これがA○○プログラム
に代表されるマネッジド・フューチャーズと呼ばれる運用戦略です。

ですから広い意味では確かにロング/ショートと呼べなくはないのですが、
特に相場のトレンドに乗っかって売買を行ってゆくという意味で、
マネッジド・フューチャーズという独立したカテゴリーに分類されて
いるわけです。

マネッジド・フューチャーズは通常完全にコンピュータ化された自動
プログラムに基づき、売買指示まで行われるのですが、プログラム
の中身はファンドごと千差万別、簡単には外部からうかがい知ることは
できません、ただ、いくつかの代表的なファンドの値動きと相場の流れ
を重ね合わせてゆきますと、大まかにではありますが各々のファンドの
プログラムの特徴が見えてきて面白いですよ、機会がありましたら
またいずれこのお話はさせていただきたいと思います。

他にも破綻証券への投資のみを行うディストレスト戦略。
あのジョージソロスで有名なグローバル・マクロ戦略などもヘッジファンド
の代表的な運用戦略といえます、さらに最近は調子がイマイチですが
裁定取引(アービトラージ)型のファンドもあり、一口にヘッジファンドと
言ってもその戦略は千差万別、さらにファンドごと個性豊かですので
ある程度(ファンドの中身を完全に知るのは、ヘッジファンドの場合は
まず無理ですが・・・)中身を理解してから購入することをお勧めいたします。

基本的にヘッジファンド全般にいえるのは、やはり投資対象の値動き
にあまり左右されることなく、独自のリターンを挙げるファンド、この
精神は共通しているように思います。





では 今回はこのへんで。

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