ちょっと気になる生命保険のお話し
皆さんこんにちは。

今から20数年前、私がまだ就職活動をしていた若い頃のお話し。

情けないことに、当時の私は将来やりたいと思うことも特になく、
大学のゼミの仲間やら、高校時代の同窓生やらにくっついて、彼らが
志望する会社の説明会を幾つか受けていました(あの頃、しっかりと
人生の目標を持って、就職活動をしていたら今とは随分と違った
人生を送っていたろうと思うのですが・・・)。

初回の説明会は大学のOBが後輩を集め、ざっくばらんなスタイルで
雑談っぽく進めるという形が定番でしたが、何社か訪れたうちの一社で、
あるOBが私たちに誇らしく話していた言葉 _____

「わが社の生涯給与水準は日本一!君たちもわが社の一員となって、
日本一の給与水準を一緒に維持してゆこう!」

_____ 私は未だにこの言葉を忘れることができません。

なにぶん随分昔のお話ですので、今もこの生命保険会社の給与水準が
日本一かどうか、それは定かではありませんが・・・・

一方で、(これも随分古い資料で恐縮ですが)日本の生命保険に関する
下記のようなデータがあります。

毎日新聞2001年8月5日付けの記事によると、1000万円の掛け捨て型
の10年定期保険に30歳時点で加入した場合、各国の月払い保険料を比較した
ところ、

・国内大手生保  2500円
・国内中堅生保  900円
・カナダ     1080円
・英国      990円
・米国      710円

という結果になったとのこと。

(ただし、米国・英国・国内中堅は非喫煙者のデータ。喫煙者に関しては
米国1700円、英国1210円。ただし、国内大手は喫煙/非喫煙区分なし)

(上記円建て価格は、当時の為替レート、1米$=125円、1カナダ$=82円、
1ポンド=180円で計算)

このように、日本の生命保険の保険料は、欧米のそれに比べ2~3倍程度と
とてつもなく割高になっています、日本の生命保険会社はそのコスト構造を
開示していませんので(最近になって、一部の生保会社が部分的に開示を始め
ましたが)この価格差はどこから来ているのか明確に知ることはできませんが、
「付加保険料」の大きさに一因があることは明白です。

この「付加保険料」というのは

・新契約費
・維持費
・集金費

の合計で、大雑把に申し上げますと、生保会社が事業を営むための
さまざまな経費を指します。

あるいは医療保険に関して、次のようなデータもあります。

(日本経済新聞 2005年7月3日付記事より)

40歳男性が外資系A、B両社の医療保険に加入したケースで

・保険金の給付額は、両社とも入院日額1万円
・一入院の上限が六十日などとほぼ同じで、給付予想額の合計もほぼ同じ

上記のようなケースでは、加入者が支払う保険料総額はA社が約95万円、
B社の場合は約122万円となり、ここから加入者による保険料の
受け取り平均額を控除すると、A社の場合は39万円、B社の場合
68万円となった。

言い換えれば

・A社の場合は、加入者が支払う保険料総額は約95万円、これに対して
平均的な加入者の受け取る保険金の額は56万円程度であり、差額の
39万円程度が保険会社の経費や利益になるということです。

・B社の場合も同様に、加入者の支払い保険料は約122万円、これに対して
平均的な加入者の受け取り保険金の額は54万円程度であり、差額の
68万円程度が保険会社の経費や利益になるということです。

要するにA社の場合、皆さんが支払った保険料の約41%、B社の場合は約56%が
保険会社の宣伝広告費や人件費、利益などになってしまっているという
事になります。

また、ある外資系医療保険会社の資料を見ますと、実に同社の利益の3/4を
日本の市場で稼いでいることが見て取れます、これなどもいかに日本の生保
マーケットが"おししい"市場であるか、よく示しています。

このように、我が国の生命保険は非常に割高な商品であるにもかかわらず、
一方で日本人は誠に保険好きな国民でもあります。

2003年の「生命保険ファクトブック」(生命保険文化センター)によりますと、
世界各国の生命保険加入額のベスト3は

・米国(443,413)
・日本(356,731)
・英国(152,717)

(いずれも単位は百万ドル)

となっており、額でこそ日本は米国に次いでの2位ということになりますが、
対GDP比で見ますと

・米国(4.4%)
・日本(8.9%)
・英国(10.7%)

と米国を抜いております、なお、英国が10.7%とダントツの一位のように
見えますが、英国の支払い保険料の中身は生命保険会社が提供する
ファンド・ラップ商品が中心で、これはいわば投資信託のようなものです。

従って、実質的に日本は世界一生命保険の加入額が多い国だといえ
るでしょう。

では、なぜ私たちはこれ程割高な生命保険に、世界で一番多く加入している
のでしょうか・・・・

この問題は実に奥が深いのですが、保険消費者である加入者一人ひとり
が、この問題を真剣に考えてみる価値は十分にあると私は思っています。

このお話は長くなるのでまたの機会に譲ると致しまして、今回は仮に
日本人の生保の支払い保険料が平均で30%程度少なくなるとどういう事がおきるか、
この点について考えてみたいと思います。

我が国の平均的な世帯の支払い保険料は、月額4.5万円程度だそうですが、
仮に30%削減できますと、月間1.35万円、年間で16.2万円の費用削減効果
があります。

平均世帯で30年間保険に加入するとして、その間浮いたお金を全額貯金に回しますと、
16.2万円×30年=486万円、およそ500万円程度貯蓄を増やすことができます。

さらに、この毎月1.35万円づつを、年利4.5%の金融商品で積み立て運用して
行きますとどうでしょうか・・・

30年後には何と約1220万円になる計算です。

現在の10年もの米国債の利回りが4.7%程度ですので、為替のリスクは
ありますが、年利4.5%程度で安定的にまわすことは、それほど難しいこと
ではありません。

60歳時点で全ての世帯が今より1000万円余分に金融商品を持てる、あるいは
各世帯の消費支出が通算で1000万円以上増える、これは(ヤヤ大げさに言えば)
国民経済計算レベルで考えても、決して小さな出来事ではありません。

仮に現在の保険にまつわる歪(ゆが)みが、このような事態を招いている
のだとすれば、多少痛みを伴ってでも、そろそろ本気でその歪みを解消すべき
時期に来ているのではないでしょうか。



では 今回はこのへんで。

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