子供たちの時代、為替はどう動くか
皆さん、こんにちは。

皆さんは「購買力平価説」という言葉を耳にされたことがありますか。

なにやらしかつめらしい言葉ですが、内容は簡単です。

例えばマクドナルドのビッグマックを例にとってお話しいたしますと、
ビッグマックが仮に日本で250円、米国で2ドル(いずれも当てずっぽう)
で売られていたとしましょうか。

ここでビッグマックに対して感じる価値観が、世界共通だとすればどうでしょう。

日本人がビッグマックに対して感じる価値は250円、一方で米国人が
ビッグマックに対して感じる価値は2ドルということになりますよね。

であればビッグマックという共通の商品を介し、日本の250円は
米国の2ドルと同じ価値を持っているということが言えるわけです。

このように世界中どこに行っても同じ品質を持っている、ごく一般的
な商材やサービスを介して為替の均衡点(即ち「本来あるべき為替レート」)
を見つけることができるという考え方、これが「購買力平価説」です。

実際には数多くの商材やサービスの平均値を取って、為替の均衡点を
探すということになりますが、仮に世の中にビッグマックという
商品しかないとすれば、日本の250円と米国の2ドルが同じ価値を持つ
というところから、250円=2ドル、即ち1ドル=125円、これが円/ドルの
為替相場の均衡点ということになるわけです。

この「購買力平価説」を使いますと、ある程度今後の為替相場を予測
することが可能だとされてきました。

例えば、日本の現在の物価上昇率がゼロ%、米国の物価上昇率は3%
程度だとしましょうか。

現在のビッグマックは先ほどと同じく250円、米国では2ドルで買える
と仮定しますと、今から1年後(ビッグマックも日米のインフレ率と
同じペースで価格が改定されるとしますと)の両国での価格は

・日本250円(インフレ率0%)
・米国2.06ドル(2ドル×103%=2.06ドル)

となっているはずです、ここでも購買力平価説が生きていますので、
1年後の為替レートは、

2.06ドル=250円


従って

1ドル=121.3ドル


と今年に比べ、3.7ドルの円高・ドル安になるというわけです。

このように、「購買力平価説」に基づきますと、必ず高インフレ国の通貨は
安くなり、低インフレ国(もしくはデフレ国)の通貨は強くなることに
なります。


さてここからです。

日経を取っていらっしゃる方は既にお読みになったかも知れませんが、
11/12朝刊のトップ記事のタイトルは『円、軒並み安値圏へ』というもの
でした、記事の内容を掻い摘んで御紹介しますと

■世界の主要通貨に対し、軒並み円安が進んでいる
■2000年初からの下落率でみると、

・米ドルに対し(14%下落)
・同ユーロ(同32%)
・同英ポンド(同27%)
・同豪ドル(同26%)
・同NZドル(同32%)
・同カナダドル(同32%)
・同韓国ウォン(同28%)


と大幅に下落している。

という内容でした。

さて、皆さんこの結果をご覧になりどのような感想をお持ちになりましたか?
あるいは、皆さんは今後の円はどう動くとお思いになりますか?

上記のデータは2000年初から2006年10月までのものですが、その間日本は
一貫してデフレ基調でした、先ほどの「購買力平価説」に基づけば、この間
円は強くなっているはずなのに、実際には上記のように逆に円安が進みました。

確かに「購買力平価」は為替の決定要因のひとつ(経済の教科書では
為替の決定メカニズムとして、最初に紹介されることが多いのですが)では
ありますが、それが全てではなく、近年では、大量のマネーが国境に関係なく
投資機会を求めて世界中を徘徊しています。

いつかこのコラムで御紹介した記憶があるのですが、短期の投機マネー
が日本の低利の資金を調達し、高金利国で運用する動きも拡大して
おります。

このような動きをキャリートレードと呼ぶのですが、このようなマネーは

・円で借り入れ
・外貨への交換(円を売って外貨を購入)
・国外で運用


という手順を取りますので、自ずと円安要因となります(FXの信用取引を
おやりの方は、よくお解りですよね)。

おそらく2000年から現在に至る中期の円安トレンドは、このような
キャリートレードの活発な動きが主因といえるのではないでしょうか。

構図としては

・実需の円買い(先ほど紹介させて頂いたように、購買力平価に基づけば、低金利国の通貨は強くなる)
・投機の円売り(キャリートレード要因)


これら相反する二つの要因がせめぎあった結果、ややキャリートレード要因に
よる円安が勝っている、とこのように解釈すべきなのではないでしょうか。

購買力平価説が最初に唱えられたのは1920年代のことですが、今では
為替の決定要因としての地位は相当低下しているのかもしれません。

為替の調整で、各国の国民が感じる価値の水準が均衡するのではなく、
購買力の低下で、価値の水準が均衡するようになるかもしれませんね。

(いつか機会がありましたら、ここのところの私の考え方をもっと解りやすく
御紹介するかもしれません、この推測、少し怖いですよ・・・・)

日本もかつての暗黒のデフレ時代から脱出し、多少これからはいい方向に
進むと私は思います、それでも為替というものは各国の相対力の
なかで決まってゆきます・・・・他国が日本よりがんばれば、日本の
ある程度の地位の低下はやむを得ないのではないでしょうか。

日本の緩慢な景気拡大→低インフレ/低金利→キャリートレードの継続→円安

2000年から現在に至るこの構図になんら変化が起こると思えず、これから
私たちの子供達が迎える将来のことを考えた場合、やはり長期的にみて
徐々に円安が進んでゆくとみておくべきではないか。

私はこのように思っています。

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