日本はアルゼンチンタンゴを踊るか?

日本の財政赤字の累計は、国・地方債務をあわせておよそ774兆円に達しています。この数字はGDP比でみると151.2%となります。 しかもこの数字は、1994年以来ほぼGDPに対し一定の割合で増え続けています。
これを材料にして、日本が財政破綻しハイパーインフレから預金封鎖の道を歩むという、一種の煽り本もよく目にしますね。この種の本には決まって最後のほうにハイパーインフレ・預金封鎖対策として

●金や不動産を買え
●海外に預金口座を作り、お金を海外に避難させろ


と書かれています。

皆さんは、この点どう思われますか?
私は、確かにこのような”金融カオス”の可能性もあり得ると思っていますが、それ以上に”そうでない”可能性のほうがずっと高いと思っています。
イタリアの例を見てみましょう。(下記の内容については、PHP出版社刊「世界はこうして財政を立て直した」林 宏明、永久寿夫 共著、を参考にして書かせて頂きました、「 」で括った部分は引用です。)
イタリアは1996年に、対GDP比で135.7%という累計ベースの財政赤字を経験しましたが、その後は財政赤字幅を縮小し、2004年現在では120%まで低下させる事に成功しています。

ご存知のように、ヨーロッパでは1998年に通貨統合が予定されていおり、参加のために、1997年度に財政赤字が単年度ベースで、対GDP比3%以内、累計ベースで同じく60%以下への抑制という基準が設けられました。
イタリアでは、これを意識し1991年から財政再建に取り組み始めました。にも関わらず、財政赤字は1991年から1996年にかけて増える一方でした。

この過程は実に現在の日本と似ていますね、例えば1991年から1996年にかけ

●公務員給与の伸びの抑制
●公的年金の保険料引き上げ
●同じく受給開始の65歳への段階的引き上げ
●医療保険制度の自己負担率の引き上げ
●薬価制度の改正による医療支出の削減
●年金受給の物価スライドの廃止
●公営企業の民営化

などの政策を断続的に行ってきましたが、その改革は極めてゆっくりとしたペースでしか進みませんでした。結局この間、対GDPでの累計の財政赤字は116.5%から135.7%とむしろ増えています。
「イタリアでも利益誘導型の政党政治と硬直的な官僚組織の弊害により」思い切った改革を実行できなかったのでしょう。この間の政治的停滞と財政赤字の増大のプロセスは、その原因を含め何と現在の日本と似ている事か・・

では、このようなイタリアがなぜ財政再建を成功させたのでしょうか?
早い話が”切羽詰った”ということです。通貨統合という「外圧」によって初めて”内なる改革”を成功させる事ができたということだと思います。
1997年度の予算案において、徹底した歳出削減を断行することができたのは国民全体に危機意識が高まり、増税や社会保険料の引き上げを甘んじて受け入れる土壌が形成されたという事でしょう。

では、日本はどうか?
アルゼンチンタンゴを踊るのか?
カンツォーネを歌うのか?
私自身は後者の可能性が高いと思っています、もともと日本人は頭の良い民族です。自分たちの国家の破綻を目の前にして、”利益誘導”だ、”官僚システム”だ、などと言い続けられるでしょうか?
イタリアの例とは多少違いますが、どこかで切羽詰った日本人は抜本的な改革に着手すると私は固く信じています。

みなさんはどう思われますか?
金や不動産をシコタマ買う側ですか?

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