プラチナ、金・・・・そして銀
皆さん、こんにちは。

このコラムで、私はコモディティについて時々書かせて頂いておりますが、
今回は『銀』をテーマに書いてみたいと思います。

皆さん金やプラチナなどについては、投資対象としての知識をお持ちだと
思いますが、銀を投資対象として見られる方は少ないのではないで
しょうか(実は私自身もそうで、一昨年、ご相談者からの質問を
きっかけに勉強を始めました)。

現在の銀の価格は、1オンス(約30グラム)あたり13ドル半ばですが、
例えば今から34年前の1973年、銀の1オンス当たりの価格は何ドルだった
と思われますか?

答えは2.56ドルです、2007年2月の銀の平均価格は13.94ドルですから、
この間約5.4倍になっています。

5.4倍と聞きますと、とんでもない上昇率のように思えますが、年間平均
に換算しますと5.2%の上昇率に過ぎません(ちなみに1973年末の日経平均
株価は4300円で、こちらは現在は約4倍です)

さらに貴金属というくくりで他の商品も見ておきますと、例えば

・金(97.22ドル/オンス → 664.92ドル/オンス)
・プラチナ(156.04ドル/オンス → 1206.61ドル/オンス)

注)いずれも左側は1973年の年間平均、右側は2007年2月の月間平均)

となっており、この間の上昇率は金で約6.84倍、プラチナは約7.73倍。

上記のように、1973年から2006年の33年間という長期でみれば、金やプラチナの
上昇率に比べ、銀の上昇率は見劣りがするように思えます。

ところが、2002年以降に限ってみれば、少し違った景色が見えてきます。

・金(332.61ドル/オンス → 664.92ドル/オンス)
・プラチナ(596.79ドル/オンス → 1206.61ドル/オンス)

注)いずれも左側は2002年12月の月間平均、右側は2007年2月の月間平均)

金はこの4年強で約1.99倍、プラチナは約2.02倍となっておりますが、これに
対し銀はといいますと

・銀(4.658ドル/オンス → 13.946ドル/オンス)

となっており、同期間に約2.99倍に上昇、金やプラチナに比べ突出して高い
上昇率を示しています。

さて、これらのデータから私達は一体何を読み取り、それを資産運用に
どのように活用していったらよいのでしょうか。

最初の30年間、金やプラチナに対して一貫して弱かった銀が、
どうして2002年を境に上昇基調を強めたのでしょうか、まずはその理由に
ついて考えてみたいと思います。

銀の用途は現在

1.工業用(41.8%)
2.宝飾品用(28.2%)
3.写真フィルム用(20.6%)
4.投資目的(4.8%)
5.コインやメダル用(4.7%)

(「ワールド・シルバー・サーベイ 2005」より)

となっています、日本人は一般的に銀を宝飾品としては見ませんが、
欧州では庶民の宝飾品として根強い人気があるようです、写真フィルム用が
依然として20%と大きな割合を占めていますが、この部分はいずれデジカメ
にとって代わられますので、用途としてはこれから減少してゆくでしょう。

それより大切なのは1の工業品用途です、あまり知られていませんが、
実はこれが銀の最大用途で、携帯電話、携帯オーディオなど、微細な加工が
要求される製品では、金とならび隠れた原材料として欠かせません。

これら用途を見る限り、写真フィルム用途はむしろ減少傾向が予想され
るなど、取り立てて銀の価格を上昇させる要因は見当たりません、ただ、
投資目的で年金基金等がETF経由で銀の保有を強めるでしょうから、
銀そのものにとっては、好材料になるでしょう。ただし、それは
金やプラチナ(プラチナのETFはありませんが)も同じこと、銀が
他の貴金属に対して強くなる要因とは思えません・・・

では、ここ数年の銀の強さはどこから来ているのでしょうか。

私はその答えは、『埋蔵量と需要予測』の関係にあると思います。

今年2月15日、「独立行政法人 物質・材料研究所」が「2050年までに
世界的な資源制約の壁」と題するレポートをまとめました。

http://www.nims.go.jp/jpn/news/press/press178.html

注)「独立行政法人 物質・材料研究所」:科学技術庁傘下の2つの
研究所が合併し平成13年に設立された独立行政法人。

これによりますと「2050年までに多くの種類の金属が現有の埋蔵量
ではまかないきれなくなり、中には埋蔵量の数倍の使用量が予想される
金属もあることがわかった」とのこと、「特に、金、銀、鉛、錫
の(2005年以降の)累積使用量は2020年の時点で現有埋蔵量を超えることが
予想される」としています。

要するに、いままでも「埋蔵量が枯渇する」という程度のことは言われて
きたが、BRICs などの成長を想定した上で再計算してみたら、危機的な
状況に陥ることが解った、とまあこういうお話です。

さらに、本レポートでは各金属ごとの「埋蔵量」と「使用量」の予想を
グラフ化しているのですが、それによりますと今後最も状況が厳しいのは
銀で、「埋蔵量」を1としますと、今後2005年から2050年までの予想「使用量」
は10.3となるとのこと、言い換えますと、今後5年程度で現在確認されている
「採掘可能な銀」は掘り尽くされてしまうという事になります。

もっとも、これは2005年から2050年まで平均的に銀が使用されると考えての
お話しですし、銀の価格がさらに高騰することによって、今後採掘可能な
鉱山も増えて行くでしょう、あるいは廃家電からの回収技術、さらには
他の金属での代替技術も開発されるに違いありません。

ですから決して悲観することもないと思うのですが、ここのところ
銀や他のレア・メタル類の価格が急騰しているのは、このように
新興国の経済成長を前提とした『埋蔵量と需要予測』の関係を、市場が
徐々に織り込みつつあるからないでしょうか。

金やプラチナもいいと思いますが、『銀』をポートフォリオに加える
こともご検討になってみてはいかがでしょうか。



では 今回はこのへんで。





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