カイシャの業績予想に意味はあるか
皆さん、こんにちは。

日本株に投資している人にとって、また憂鬱な季節がやって
きましたね。

2007年3月期の決算報告。

今年も5月の連休前あたりから、発表が本格的に始まります・・・

と言っても、2007年3月期の企業業績は対前年比で+6%強の増益(経常利益ベース)
が予想されており、こちらはマズマズの内容になりそう(あるいは1~2%程度の
上ブレか・・)、問題は同時期に発表される今期(2008年3月期)の
業績予想のほうです。

ここ数年、会社が期初に発表する業績予想は毎度毎度低く抑えられており、
その度に市場が疑心暗鬼に陥り、5月は株価受難の季節になってしまった
かのようです。

投資家としては、ある程度会社側が低めの予想を出してくることが解って
いても、現実に各社から提出される業績予想を見てしまうと、なにか自分達が
予測していない悪材料があるのではないかと勘ぐってしまい、結果的に
買いの手が引っ込んでしまう・・・ここ数年はこのような傾向が強くなって
きているようです。

会社が、期の途中で業績予想を下方修正するのを嫌がる気持ちはよく理解
できるのですが、私などは「それにしても極端すぎやしませんか」と言いたく
なります。

四半期決算を見れば、会社の業績予想に対する保守的な姿勢は、
さらに明確になります。

例えば、昨年度の第3四半期決算(2006年4月から12月までの決算)の
発表時、開示企業1760社中133社がすでにこの時点で、年間の利益予想
を超える利益を上げてしまっています(2007年2月17日「日経」記事より)。
にもかかわらず、ほとんどの企業は、そこに至ってまだ通期の業績
予想を上方修正しませんでした。その結果、一年の3/4を過ぎた時点で
利益が14%(前年同期比で)アップしているにも関わらず、年間の
予想では6%(同)アップに止まるという、不思議な現象が起きて
しまいました。

上記のように

・一年の3/4経過時点で+14%
・一年の予想が+6%

となるためには、最後の1/4(第4四半期=2007年1月~3月)の実績が
対前年同期比で(一般的には)18%程度の減益とならなければなりません。

いくら企業が堅読みでも、期の3/4を過ぎた時点で、今まで14%の増益
で順調に進んでいたものが、最後の四半期で突然大幅な減益になると、
いとも『簡単に』発表してしまうのは(余程大きな減益要因を抱えて
いるならいざ知らず)業績予想の方法に、何か根本的な問題があると
考えるのが普通ではないでしょうか。

我が国の四半期決算は

・第1四半期=4月~6月
・第2四半期=第1四半期と第2四半期(7月~9月)の合計
・第3四半期=第1四半期から第3四半期(10月~12月)の累計

というように、経過した四半期の累計ベースで行われ、その結果、
直近四半期単独の実績が薄まってしまい、上記のように『第3四半期まで
絶好調、第4四半期のみ大幅減益』というような、実態とかけ離れた
業績予想が出てしまうのでしょう。

もちろん、根底にはには日本人独特の保守性があるのでしょうが、
ルールの変更によって改善されるのであれば、それを躊躇する理由は
みあたりません。

一方で米国ではどうやっているかと言いますと、四半期の決算報告や予想は、
純粋に四半期(即ち3ヶ月分)のみの数値を使って行われます。

この方法によりますと、日本方式と異なり3ヵ月ごとの実績や業績予想が
ストレートに明示され、従って、日本のようにいちいち差し引きして
3ヶ月の数値を計算する必要はありません、その結果『第3四半期まで絶好調、
第4四半期のみ大幅減益』的な矛盾は、そもそも起こりようも無いわけです。

その米国ですら昨今、企業が発表する業績予想そのものに対する疑問が
議論されており、NASDAQ上場企業の30%程度は、すでに業績予想の発表
そのものを止めてしまっています・・・

さて、我が日本では、企業業績は今期も引き続き好調が予想されています。

民間の調査会社によりますと、今期の上場企業の業績は概ね10%程度の
増益と予想されており、このままいくと6年連続の増益になる可能性
が高そうです。

一方で3月の日銀短観をみると、大企業の今期の業績予想(経常利益ベース)
は逆に3%の減益となっておりますので、これから本格化する会社側の
業績予想を集計しても、上場企業合計で数パーセントの減益になる
可能性が高そうです。

それを受け、株式市場も(例年のように)一時的な調整ということに
なるでしょうが、そもそも市場の混乱要因になる会社側の業績予想など、
本当に必要なのでしょうか・・・

先ほどの四半期業績の開示方法とあわせ、企業のIR担当はもっと
投資家側にたった仕事をしてほしいものです。



では 今回はこのへんで。





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