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リスクの本質とその抑制策
皆さん、こんにちは。

リスクとリターン・・・間違いなく、これは資産運用における
2大テーマと言ってよいでしょう。

金融工学の観点から言えば、資産運用の最終的な目的は、
『いかにリスクを抑制しつつ、リターンを最大化するか』この
一点に集約することができます。

では、リスクとは一体何者なのか?

このテーマは結構奥が深いのですが、一般的に資産運用における リスクには

・価格変動リスク
・為替(変動)リスク
・信用リスク(破綻リスク)
・流動性リスク(売却できないリスク)

などがあると本などに書かれていますが、よくよく考えてみますと、
これらのリスク達は全て「価格変動リスク」に集約してしまうことができる
ことに気づきます。

例えば、為替変動リスク。

これなどは価格変動の一要因として為替変動があるだけで、
価格変動リスクそのものと言ってよいでしょう。

信用リスクも同様で、株ならば会社、債券なら発行体が破産(綻)して
しまえば、証券の価値はゼロ(もしくは極端なディスカウント状態)に
なりますので、これも価格変動リスク(しかも変動率の非常に大きい)
の中に入れてしまってよいでしょう。

あるいは流動性リスク、これは保有している投資対象が売却しにくい
リスクですが、たとえ売却まで期間がかかっても、その間、資産価値が
安定して増えてゆけば、人はそれほど不安を感じることはないでしょう。

むしろ「売却できない間に大きく価格が変動し、売却できた時点で不幸
にして価値が大きく下落していた」このような事が人を不安に陥れる
訳ですから、流動性リスクの本質も価格変動リスクだということが
解ります。

もっとも当座のお金に困るのも、確かに人の不安を掻き立てますが、
それはその方の資金計画上の問題であり、私は金融工学上のリスクとは
切り離して考えるべき問題だと思います。

以上のように資産運用におけるリスクと言いますのは、本質的には
保有している資産の価格変動の激しさの事で、価格変動が激しければ
激しいほど、保有者の不安レベルは高まることになります。

その結果、リスクの高い(価格変動の激しい)資産は敬遠されること
になりますが、購入者が少なくなれば価格そのものは安く
なりますので、そこから得られるリターンは逆に高くなります。
(ハイリスク=ハイリターン)

また、リスクの低い(価格変動が小さい)資産は選好され、価格は
上昇しますので、得られるリターンは逆に下がります。
(ローリスク=ローリターン)

このようにして、高いリターンを生む商品は、その代償として
保有者に価格変動という不安を与え、低いリターンしか生まない商品は、
あまりストレスなく保有できる、言い換えれば、ハイリスク=ハイリターン、
ローリスク=ローリターン、このような図式が出来上がるわけです。

では、高いリターンを得つつ、不安やストレスを感じずに済む方法
(言い換えればリスクを抑制する方法)はないものか・・・このような
研究は、すでに1950年代から米国の経済学者を中心に進められて
きました。

その成果として『相関性の低い、複数の金融商品に分散投資することにより、
資産全体のリスク(価格変動)は低く抑えることができる』という
『現代ポートフォリオ理論』が体系化されました。

『現代ポートフォリオ理論』というと、なんだかとても難しそうに
聞こえますが、少し例を挙げ、できるだけ簡単にご説明してみましょう。

例えば仮にAという金融商品があり、過去10年のパフォーマンスが

・+30%
・-20%
・+30%
・-20%
・+30%
・-20%
・+30%
・-20%
・+30%
・-20%

だったとしましょう、この商品の10年間の(単純)平均リターンは5.0%、
標準偏差(リスク/価格変動)は25%と計算できます。

また仮に過去10年のパフォーマンスが下記のような、金融商品B
があるとします

・-20%
・+30%
・-20%
・+30%
・-20%
・+30%
・-20%
・+30%
・-20%
・+30%

Bの平均リターンも5.0%、標準偏差は25%と計算できます。

一見してAとBは全く逆の方向に動いているのがお解りいただける
と思いますが、このような場合リターン、リスクは同じ値をとります。

では、仮に皆さんがAとBを50%づつの比率で保有した場合、
資産の値動きはどうなるか計算してみましょう。

・+5%
・+5%
・+5%
・+5%
・+5%
・+5%
・+5%
・+5%
・+5%
・+5%

とこのように計算でき、この場合の(単純)平均リターンは5.0%と
それぞれ別々に保有した場合と変わりません、一方でリスクはゼロになり、
これで皆さんは不安感から解放されることになります。

2つの金融商品の値動きがどの程度似通っているか、その度合いの事を
『相関性』といい、相関係数という数値で表現することができます、
相関係数は-1から+1の値をとり、-1に近づくほど相関性が低いことを
示しています。

上記の例で商品AとBの間の相関係数は-1(ちょうど正反対の
動きをするという事)ですが、実際の金融の世界では、このように正反対の
値動きをする理想的な2つの商品を見つけ出すことは不可能です。

例えば日本株と米国株の相関係数は0.248、日本株とコモディティの
相関係数は0.009、日本株と米国債の相関係数は-0.074などとなって
おります。

注)1983年4月~2004年9月までのデータに基づく(出所:大和投信)

理想的には(もちろん)-1なのですが、このようにゼロ近傍から
プラス0.6程度までであれば、十分リスク低減効果はあり、それら
相関性の比較的低い資産への分散投資は、リスク抑制効果が高い
と言えます。

もし、皆さんの資産のどこか一箇所に大きな塊(かたまり)があるとすれば、
それは大きなリスクを背負い込んでいることを意味しています(おそらく、
そういう方は相当大きなストレスを受けられているのではないでしょうか)。

世の中なにも日本株や米国債だけではありません、不動産の現物も
あれば、世界の不動産に分散投資するファンドもあります、コモディティ
を投資対象にしたものにしても、現物の貴金属に投資するファンドもあれば、
コモディティ指数、穀物指数のようなものに連動するファンドもあります。
ヘッジファンドまで幅を広げれば、株のロング・ショートや裁定取引
のようなファンドもあり、そもそもこれらの商品は、原資産の値動きの
影響をあまり受けない設計になっています。

このような幅広い金融資産への分散投資は、必ず皆さんのストレス
を少なくしてくれることでしょう。



では 今回はこのへんで。





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