リスク抑制シミュレーション
皆さん、こんにちは。

前回は

・リスクの本質は値動きの激しさにある。
・リスクを抑制するためには、異なった値動きをする複数資産への分散投資が有効。
・2つの資産が「どの程度異なった値動きをするか」を示す指標として、「相関係数」がある。
・「相関係数」は-1~+1の値をとり、-1に近づくほど、その2資産は異なった値動きをする。
・ただし「相関係数」が-1になる、2つの資産の組み合わせなど現実には存在しない。
・「相関係数」ゼロ近辺から+0.6程度でも、ある程度リスク抑制効果はある。

以上のようなお話しをさせて頂きました。

今回はさらに突っ込んで、具体的な2つの金融商品のさまざまな組み合わせ
を例に挙げながら、それら2資産によるポートフォリオがどの程度の
リスク抑制効果があるか、実際に検証してゆきたいと思います。

ではまず最初に日本株を中心に見て参ります、このコラムをお読みの
皆さんの中にも、日本株中心に運用されておいでの方は多いと思いますが、
昨年の運用成績はいかがでしたでしょうか、正直申し上げて大変に厳しい
一年間ではなかったでしょうか(私自身も昨年日本株では苦戦しました)。

2006年1月~12月実績に基づいて、TOPIXのリスク/リターンを計算して
みますと下記のようになりました。

【TOPIX単独で保有した場合】

・年間リターン +0.65%
・年率換算リスク 11.95%

(リスクは各月末時点の数値を使って、年率に換算したものです)

数値でみても確かに非常に厳しい結果ですね、リスクの大きさの割りに、
リターンはほんの僅かしか得られていません。

では、仮にここで日本株50%に対して、50%の金を組み合わせて運用
していたとすればどうなっていたでしょうか。

なお、金単独で保有した場合のリスク/リターンは

・年間リターン +14.76%
・年率換算リスク 24.09%

となっています。

結果として

【TOPIX 50%/金50% のポートフォリオ】

・年間リターン 7.71%
・年率換算リスク 11.09%

とこのようになりました。

リターンのほうは、TOPIXのリターン(+0.65%)と金のリターン(+14.76%)
の平均値(+7.71%)となっていますが、リスクのほうは11.09%で、
TOPIX単独のリスク(11.95%)と金単独のリスク(24.09%)の
平均値(18.02%)を大幅に下回っているばかりか、TOPIX、金それぞれの
単独リスクをも下回っています。

なぜ、このように大きなリスク抑制効果が生まれたかといいますと、それは
冒頭申し上げたように、TOPIXと金の相関性に理由があります。

両者の間の「相関係数」は昨年度-0.401で(日本株と貴金属の相関性は、
過去から一貫して低いです)、金とTOPIXがお互いに相手の値動きを
打ち消しあった結果、このように全体でみるとリスクが抑制させれる
ことになるわけです。

続いて銀についてみておきましょう。

昨年度、銀は金よりさらにハイリスク/ハイリターンでした。

【銀単独で保有した場合】

・年間リターン 40.08%
・年率換算リスク 49.53%

となっており、仮に単独で保有したとすると、相当のストレスを受けた
ことでしょう。

では、ここで日本株を中心に、銀を20%だけ組み合わせて保有すると
どうなるでしょうか。

【TOPIX80%/銀20% のポートフォリオ】

・年間リターン 13.51%
・年率換算リスク 8.54%

ここでも先ほどの金の例と同様、TOPIXに100%投資した場合と比べ、
リターンは+0.65%→13.51%と大幅に改善する一方、リスクは逆に
11.95%→8.54%と抑制されています。

簡単に言えば、昨年日本株中心で運用された方は、僅か20%の銀を
資産に組み入れるだけで、リターンは大幅に高まる一方で、資産全体の
値動きは、逆に小さく抑えられたということになります(あくまで昨年
のお話ですよ!)。

ちなみに銀とTOPIXの昨年度の相関係数は-0.036でした。

では、次にあるヘッジファンドに登場してもらいましょう、このファンド
はロンドンに拠点を置くNファンド、幅広い新興国株を対象にした
ロング・ショート型ファンドです。

【Nファンドの2006年の実績】

・年間リターン 44.24%
・年率換算リスク 13.11%

今度は、さきほどの銀を中心に対し、このNファンドを30%加えた
ポートフォリオを作ってみます。

【100%銀に投資した場合(再)】

・年間リターン 40.08%
・年率換算リスク 49.53%


【Nファンド30%、銀70%のポートフォリオ】

・年間リターン +42.99%
・年率換算リスク 20.07%

とこのようになりました。

単独で保有すると、銀は極めてハイリスク・ハイリターンですが、
ご覧にようにNファンドを30%加えることにより、リターンをさらに
上昇させながら、リスクを49.53%→20.07%と劇的に下げることが
できました。

ちなみに銀とNファンドの相関係数は+0.36でした。

以上、これらのシミュレーションは、あくまで昨年一年だけの月次データ
をベースに行っておりますが、皆さんがご自身の資産のリターンを
維持しながら、リスクを抑制するにはどうすればよいのか、理解し実践
するための手助けにはなると思います。

最後に日本株と各種資産の相関係数(1998年12月~2006年12月の
データ、Morningstar Fundreview 2007年3月号より転載)を
挙げさせて頂きますので、ご参照下さい。

【日本株と各種資産の相関係数】

・米国株 0.45
・ブラジル株 0.37
・ロシア株 0.37
・インド株 0.42
・中国株 0.37
・NY原油先物 0.30
・金価格(スポット)0.17
・米国債券 -0.12
・オーストラリア債券 0.13
・GSCI 0.20

(GSCI:ゴールドマン・サックス・コモディティ・インデックス)



では 今回はこのへんで。





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