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長期投資でリスクは下がるか
皆さん、こんにちは。

少し前、ある著名なエコノミストが、経済誌で以下のような趣旨の記事を
書いていらっしゃいました。

『長期投資でリスク(価格変動)を抑えられるという一部の誤解があるが、
実は逆で、長期投資でリスクは反対に高くなる、従って株式の長期投資
は一般的には薦められない』

これはどういう事かといいますと、例えば、

・現在価格100万円、
・年間の平均リターンがゼロ
・年間の価格が+10%〜-10%の範囲で変動する

このような金融商品があったとしますと、この商品の一年後の価格は

・最低で90万円(100万円×90%)
・最高で110万円(100万円×110%)

この範囲に収まることになります。

さらに2年後は

・最低で81万円(100万円×90%×90%)
・最高で121万円(100万円×110%×110%)

となります。

もう一年経過して3年後になりますと

・最低で72.9万円(100万円×90%×90%×90%)
・最高で133.1万円(110万円×110%×110%×110%)

このようにますます上下の幅が広がって行くことになり、この
著名エコノミストの言うように、長期投資をすればするほど
リスク(価格変動)は拡大してゆくことになります。

さてみなさん、この考えについてどう思われますか。

確かに3年後に72.9万円〜133.1万円とい具合に、最高と最低の
開きは大きくなっていますし、彼がいうように、
この幅は時間が経つほどさらに広がってゆくのも事実です。

では本当に「長期投資でリスクは拡大する」のでしょうか?

実は上記の考えに中で、致命的に欠落している点があります。
それは「起こりうる頻度」という要素です。

例えばコイントスのゲームを行い、表が出れば勝ち、裏が出れば負け、
とした場合、10回の勝負で10回とも負ける確率は極めて低く、
わずかに0.1%に過ぎません。

さらに上記の例で申し上げますと、実際の投資の世界では年間の
価格変動が−10%〜+10%と言っても、例えば-10%と-3%が同じ
確率で起こるわけではなく、両端にゆくほど起こる確率は
低くなって行きます・・・イメージとしては、−10%になる確率が5%
なら、-3%になる確率は18%といった感じです。

ですから毎年毎年-10%の最悪のはずれくじを、例えば10年にも
わたって引き続けるなどということは、まず考えられません。

むしろある年、運用成績のよかった人は、その次の年失敗しがちで、
長く継続して統計をとると、徐々に平均点に近づいてゆくことが
知られています(統計学的でこの現象は「平均への回帰」と呼ばれています)。

さらに株や債券などの金融商品は、基本的には、人間の経済の営みに
したがって、右肩上がりでその資産価値が高まるという性格の商品ですので、
長期保有した場合、回帰すべき平均値自体も右肩上がりで上昇しつつ、
同時に変動幅(リスク)も下がってゆく、このように考えるのが素直
ではないかと私などは思うわけです。

実際に1953年〜1995年の日本株のデータをみますと、1年間投資した場合、
5年間投資した場合、10年間投資した場合、15年間投資した場合、
それぞれのリスク(価格変動)を比べると、投資期間が長くなるに
従って、リスクは徐々に下がっている傾向が見て取れます。
(SMBCラーニングサポート「チャレンジ投資信託」より=日経夕刊5/10付)

冒頭の計算過程のように単純に計算すると、一見このエコノミストが
いうように「長期投資でリスクは増大する」ように思えますが、
さらに一歩進めて、このように考えてゆくと、実は反対に
「長期投資でリスクは抑制される」ことがわかります。



では 今回はこのへんで。





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