緊迫度を増すレアメタル問題
皆さん、こんにちは。

今回は久しぶりに、レアメタルのお話しをしようと
思います。

前回お話ししてから、もう随分時間が経ってしまって
いますので、少し復習から入らせていただきます。

まずレアメタルとは何かというお話しですが、文字通りレア(希少な)
メタル(金属)のことで、なかでも産業において利用度の
高い31種類の金属をさしています。

例えば皆さんが人間ドックの時に飲まされるバリウム、これも
レアメタルの一つです(正確にはバリウムではなく、バリウムの
化合物が使われていますが)、体内に吸収されること無く、
またX線を透さないという特性を生かし、レントゲン撮影時に使用
されています。

他に身近なところではプラチナ、プラチナは貴金属として宝飾用途
でも用いられますが、プラチナの最大の用途は自動車の触媒として
の用途です。

自動車の触媒として使用されるプラチナは、一台当たり僅か3グラムほど
に過ぎませんが、世界中の自動車で使われるプラチナの総量は年間100トン
にものぼり、その結果、現在世界で使用されるプラチナの約60%が
自動車の触媒に使われてしまうという歪(いびつ)な形になって
しまっています。

それだけではありません、自動車ついでにもう少しお話ししますと、
これからの注目は触媒用途より、むしろ燃料電池に移りつつあります。

水素を使った燃料電池は、二酸化炭ゼロのクリーンな動力として、
これからの自動車の動力の本命とされています、触媒としてのプラチナは、
一台当たりわずか3グラムしか使用されませんが、燃料電池に使われる
プラチナは桁が違って、自動車一台当たり約80グラム程度とされています。

もし、世界の自動車の1割が燃料電池に置き換われば、それだけで
プラチナの需要は一気に500トンも増え、現在のプラチナの供給力
ではとても追いつかないという事になってしまいます。

ほかにも皆さんが日常よくお使いの携帯電話や携帯オーディオなど、
これら小型の電子機器には、ガリウム、タンタル、チタン、ニッケル、
インジウムなどのレアメタルがごく微量づつ使われています。

これらの機器は、一台に使用されるレアメタルはごく微量ではありますが、
なにしろ世界で使用される台数が半端ではありません、これから中国や
インドなどの人口大国が、本格的にこれらの電子機器を持ち始めた時、
果たしてレアメタル需要はどこまで伸びるのでしょうか・・・

人間は生活水準が上がりますと、生活様式も変わってゆきます、
当然自動車にも乗るでしょうし、私達日本人が便利だと思って使用する
携帯電話、携帯オーディオ、DVDプレーヤー、ビデオカメラなどの
電子機器もまた、自然の流れとして大量に使い始めるに違いありません。

世界の人たちの生活水準が上がることは、たいへん好ましいことでは
ありますが、その結果、レアメタルの枯渇問題は避けて通れない
問題として浮上してくるのではないでしょうか。

いまのところ、世界で最も注目を集めているコモディティは原油ですね、
今後の世界的な需要見通しの拡大を背景に、原油は昨年同様この季節
80ドルをトライしようとしています。

続く話題といえば、やはりトウモロコシと大豆に代表される穀物でしょう、
米国での作付け面積問題もからめて、世界の金融界やマスコミにおおきな
話題を提供し続けています。

あるいは最近ではウランがよく話題にのぼりますね、世界中で原子力発電
への回帰が起こり、ウランはすっかり時の人になってしまいました・・・

一方でレアメタルはどうでしょうか、今でこそ日本でようやく話題に
のぼり始めましたが、世界を見渡すとこの問題の対する関心は、かならず
しも高くはないようです。

これには訳がありまして、一つはレアメタルの世界消費量に占める日本の
使用量が突出して高いこと(平均すると世界消費量の30%ほどが日本で
消費されています)、日本ではレアメタルの枯渇は死活問題ですが、
世界を見渡すと、この問題で苦慮しているのは、韓国や台湾など
(最近では中国も)、日本と同様の産業構造を持つ国に限定されている
ようです・・・最も大きな影響を受けるのは、いうまでもなく
日本ですが。

二つ目はこれらレアメタル市場の小ささに理由がありそうです、
原油や穀物などは市場も大きく、流動性も高いので欧米系のファンド
にとっては格好の投資先です、これに対し、レアメタルは
いずれも市場が小さく、ファンドからのアクセスはといいますと、
せいぜいレアメタル鉱山株やレアメタル関連株への投資という
間接的な投資に限られてしまいます(プラチナやニッケルはやや市場が
大きく、ファンドの直接投資もありますが)。

世界の世論は欧米が主導していますので、彼らの関心度が低い
レアメタル問題は、所詮はローカルな話題に過ぎず、上記のような理由で、
その深刻さの割には、あまり今まで市場で話題にのぼることが無かった
と言えるのではないでしょうか。

ただ、これからさらにこの問題が深刻度を増してゆきますと、徐々に
注目度も高くならざるを得ないのではないでしょうか・・・ごく自然の
流れとして。

さてこのレアメタル枯渇問題、対策は3つしかありません。

一つは「省資源化」

二つ目は「資源回収/リサイクル」

三つ目は「代替資源の開発」です。

これら3つはいずれも日本企業の得意とするところ。

枯渇問題をネタに一儲けするのは少々気が引けますが、会社を応援する
気持ちも込めて、関連企業への投資も一考の価値があるのでは
ないでしょうか。



では 今回はこのへんで。





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