痛し痒しの香港株   (注)この原稿は8/28付けで書いたものです

皆さん、こんにちは。

今回は久しぶりに中国株のお話をさせて頂きます。

どこの国の株を買う場合でも、それなりに現地の政治状況について
情報を収集する必要がありますが、中国株や香港株に投資する場合は、
特に慎重に行う必要があります。

皆さんご承知のように、中国という国は共産主義の国、政治は
選挙で選ばれた政治家によって行われているわけではなく、
共産党によって行われています。

我が国や欧米のような民主主義の先進国では、政策決定の
プロセスにおいて、なんらかの形で民意が反映されることになりますが、
中国に関していえば、民意が反映されるということは少なく、
その分、当局の政策を予測するのはなかなか難しい作業ということ
になります。

だからといって、情報収集を放棄してしまってよいかと
いいますと、決してそうではなく、むしろより注意深く政治や
経済において、どのような政策がとられようとしているのか、
よくよく分析をおなった上での投資が求められるのではないでしょうか。

例えば、ご存知のように中国の株式市場は閉鎖性が強く、海外の
投資家が中国本土市場に投資する場合、特別な資格を持たない限り、
その投資先はB株市場に限定されてきました。

同様に中国の個人投資家は、海外の市場に投資することは
制限され、結果的に彼らは国内市場のみに投資を行うという、
特異な状態がここ数年続いてきました。

政策面でいわば人為的に作られた環境は、中国の株価形成
という点で、大きな歪みを作り出してしまい、結果として中国A株市場は
加熱し、本日(8/28)時点で上海A株指数は5300ポイントを超えて
過去最高水準、PERでみても50倍を超えようとしています。

このような状況下、中国政府は中国の個人投資家による、海外株投資
を解禁すると発表いたしました・・8/20のことです。

内容はまず天津市に指定した金融機関を通し、香港株に限り金額の上限を
設定せず(金額無制限で)購入できるようにしたもの、以前から
中国個人投資家による海外投資解禁の動きは予想はされてきましたが、
この報道を受け香港株は急騰しています。

香港H株市場には、中国の本土企業でA株市場にも上場している
銘柄が、重複して上場されています。

同じ会社の株ですので、理論的には中国A株市場でであろうが、
香港H株市場であろうが、株価は等価であるべきなのですが、上記のような
特殊な事情があり、通常A株市場で売買されている価格のほうが高くなり
がちでした。

例)

●シノペック  8.47HK$/15.78元(A/H=1.91)
●江西銅業   19.28HK$/41.53元(A/H=2.21)
●大唐国際発電 9.17HK$/23.61元(A/H=2.64)
●中国人寿保険 35.15HK$/50.99元(A/H=1.49)
●華電国際電力 4.64HK$/8.37元(A/H=1.98)

注:データは内藤証券サイトより、8/27付けデータ。

A/HはA株市場価格をH株市場価格で割った値です、同じ会社の株
ですので、本来はA/H=1となるはずですが、実際には上記のように(まだ)
かなりの価格差があります。

中国政府のこの発表をうけ、中国の個人投資家は8/29あたりから香港株
購入に動き始めるといわれています(注)、一方で彼らは現在保有中の
A株を売却するでしょうから、A株下落、H株上昇という形で、長らく
続いたこの歪みも徐々に解消に向かうことでしょう。

注)その後、解禁時期は9月にずれ込むとの報道がありました。

既に香港株をお持ちの方には確かに朗報に違いありませんが、見方を
変えれば、これで世界の株式市場はまた新たな不安を抱えることに
なりかねません。

現在のH株のPERは21倍前後、これに対しA株市場の平均PERは50倍台に
達しようとしています、上記のような裁定が行われた結果、A株市場の
PERバブルはそのまま香港株に輸出され、いずれ中国株バブルが維持不可能
な状態に達した時、香港を窓口として、今度は間違いなく世界の株式市場
を揺さぶることになるでしょう・・・

利益は得られず、巻き添えだけを食らうのはゴメンと割り切って、
いっそのこと短期勝負でH株投資もありなのかもしれませんね。



では 今回はこのへんで。





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