■新興国とコモディティ
皆さん、こんにちは。
日々の暮らしの中ではなかなか気づきにくいことでも、
少し離れて遠目でみると大きな変化が起きている、
このようなことはよくあるものです。
例えば経済面からみた世界の構図にも、おおきな変化
がゆっくりと起こりつつあるように思います。
20世紀を振り返ってみますと、初め英国、その後米国、
世界大戦後はドイツや日本が加わり、いずれにしても先進国と
呼ばれたせいぜい10ほどの国によって、世界の富は寡占され続けて
きたといえるのではないでしょうか。
これらの国々が何によってその経済的繁栄を築いたかといえば、
ものを大量にかつ正確に作り続ける力、いいかえれば工業的な
テクノロジーの力によってであります。
国によって得意分野は多少違いましたが、それでも彼らは
その工業技術を基盤にして富を蓄積してきた、やや乱暴かも
しれませんが、ごく大雑把にひっくるめてしまえば、このように
いえるのではないでしょうか。
ところがその構図に大きな変化がうまれることになります。
一部の先進国への富の集中は、かれらの生活水準を
向上させる一方、人件費も急騰させました。
その結果、彼らは自国でモノを生産し続けることをやめ、生産
という単純作業を新興国に移転しました、その結果、一部の富が
これら新興国に流出し、新興国において徐々に富の蓄積が進んだ、
これが20世紀末時点の世界の一側面ではなかったでしょうか。
このようにして先進国から浸み出した富の一部は新興国に
移転し、このことが新たな世界の構図を生むことになります。
具体的にいえば、まずは中国やインドなど大きな人口を抱える新興国で、
人口の更なる増加と生活水準のアップ、このようなことが同時に起こる
という現象です。
生活水準が向上しますと、当然エネルギーや穀物の消費量が
増え、また自動車や電気製品などの消費を通し、貴金属やレアメタル
の消費量にも影響を及ぼします。
その結果、エネルギー、貴金属、レアメタル、穀物などいわゆる
コモディティの価格は一斉に上昇しました。
21世紀に入り、新興国の株価上昇やコモディティ価格の上昇が
みられましたが、それは上記のような構図のなかで起こった
必然といえるのではないでしょうか・・・
では、今後も新興国の台頭とコモディティ価格の上昇は続いて
ゆくのでしょうか。
この問題について考える場合忘れてはならないのは、新興国は
多くの人口を抱えていると同時に、また豊富な天然資源に恵まれて
いるという点です。
上記のように、彼らの生活水準の向上はコモディティ価格の上昇を
招きますが、重要なのは、コモディティ価格の上昇は彼ら自身が
保有する天然資源の価格上昇を招き、その天然資源(コモディティ)
の輸出によって、さらに大きな富を彼らは得ることができる、
このようないわば『循環』が起きている点ではないでしょうか。
もちろん、新興国の全てが天然資源に恵まれているわけではありませんが、
ロシアや中東、あるいは中国や南米などを見ていますと、多くの新興国
はすでにこのような好循環のなかにあり、この循環が途切れない限り、
コモディティの価格と、新興国への富の流入は自然の流れとして
続くのではないでしょうか。
新興国への富の流入は、新興国通貨の上昇、新興国債券の上昇、
新興国株の上昇、このような投資機会を私達にも与えてくれます。
一方、上記のような循環が途切れないとすれば、コモディティへの
直接あるいは間接の投資ももちろん有効でしょう。
コモディティは株や債券と同じく、既に世界の金融システム
のなかに組み込まれています、金融商品である限り、投資や投機の
対象になることは拒めず、その結果、短期的には相場の急落局面
(もちろん急騰局面も)を想定しておく必要があります。
また、コモディティは他のコモディティにより、代替されてしまう
場合があります、例えばガソリンの代わりにエタノールが使われたり、
原油に代わってウランが見直されたりといったケースです、あるいは
今後の地球温暖化を懸念するなら、省資源化や資源リサイクルといった
流れも想定しておく必要があるでしょう。
ただ、これらの技術革新にはいずれも一定の時間がかかるもの、
長い目でみれば、先ほどの新興国資産と同様、少なくとも
ここ数年は、ポートフォリオに一定額を組み込んでおく価値はある
のではないでしょうか。
では 今回はこのへんで。
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