あらたなバブルの始まり
皆さん、こんにちは。

バブルについて考えてゆきますと、この現象は心理的、経済的
あるいは社会的に見てもなかなか面白い現象であるように思えます。

過去を振り返って解りますが、バブルは急には形成されないようで、
参加者が気付かないうち、時間をかけて徐々に作り出されて
ゆくようですね。

例えば1980年代の日本。

株価はどんどん上がり、いつしかPERは60倍を超えました。
私はすでにその時、株の売買に参加していましたが、
「PER60倍は高すぎるな」と思いながらも、一方で
「日本の成長性を考えると説明がつくレベルなのでは」
と思う気持ちもあり、なんとなく周りの雰囲気に流され
株の売買をやっていましたし、おそらく私に限らず参加者は
皆このように、日本の成長性でPER60倍を説明づけながら投資
を続けていたに違いありません。

あるいは記憶力のいい方なら『Qレシオ』という言葉を覚えて
おいでではないでしょうか?

Qレシオというのは、日本の株価がもはやPERで水準を説明
できなくなり、訳知り顔の評論家達が持ち出した指標です。

日本の企業には膨大な土地の含み益があることに着目し、
この含み益を勘案したPERに代わる株価指標として当時もては
やされました・・・当の評論家やエコノミストにも責任はあったと
思いますが、それ以前に大半の市場参加者は、割高なPERを
説明付けてくれるような、もっともらしい理論的裏づけ
を求めていたのではないでしょうか。

そして『Qレシオ』でみると、日本の株価は他の先進国に
比べ特段高いわけではない・・・誰かにこのように言って欲しかった
に違いありません。

こうやって新たな買う理屈を見つけ出してはさらに株を買う、
要するにバブルを説明するための理屈など、頭のよい人達は
いくらでも考え付くわけで、結局市場の参加者は自らの欲に導かれるまま、
際限もなく株を買い続けたわけです・・・維持不可能なレベルに
達するまでは。

FRBの前議長のグリーンスパンさんは、「バブルを事前に止める
ことはできず、中央銀行はバブルが弾けた後の対策をうつだけだ」と
いうような意味のことをよくいいますし、実際彼が在任中に行った策
をみても、その言葉を裏付けているようです、また、後を継いだ
バーナンキさんをみても、やはりその伝統はしっかりと受け継いで
いるように見えます。

今回米FRBは0.5%の利下げを行いましたが、ある意味それは、目先の
バブルの崩壊の対処療法として打たれた策ともいえますが、この
ことが、長い目で見て新たなバブルの始まりになる可能性は十分にある
と私は思います。

米国の利下げは、日本や欧州の中央銀行の利上げの歯止めに
なります、本来は利上げをすべき局面で、利上げを行うことが
できない、このような歪(ひずみ)は将来必ず大きな問題に繋がって
ゆく、私などはそのように思うわけです。

ではその歪はどういう形で将来顕在化するのでしょうか、端的に
申し上げるならそれは、新興国株とコモディティにおけるバブル
現象ということになるような気がしております。

既に新興国の株は勢いを取り戻しつつあり、サブプライム・ショック前
の水準を上回っております。

といってもPERで見ますと

・ロシア 約11倍
・ブラジル 約14倍
・インド 約21倍
・香港(ハンセン指数)約19倍
・インドネシア 約17倍
・メキシコ 約13倍
・アルゼンチン 約17倍
・トルコ 約13倍
・南アフリカ 約14倍

など、各国の経済成長率を勘案すればまだまだバブルとは程遠い
印象、いずれ世界の余剰資金は、さらに磁力を帯びた新興国株に
吸い寄せられてゆくのではないでしょうか。

一方でコモディティを見ますと、金、プラチナ、銀などの貴金属、
トウモロコシ、小麦、大豆などの穀物、あるいは原油や天然ガスなど、
こちらも過去最高、あるいはそれに近い水準まで高騰しています。

コモディティにはPERといったような、価格を説明する指標があり
ませんので、一体どこか適正レベルなのか判断が難しいところが
あります、さらに、コモディティに長期・短期の投資(投機)資金が
継続的に流れ込み始めたのは、せいぜいここ3年ほどのこと、
私達にとってコモディティ・バブルは未体験ゾーンといえなくは
ありません。

これはどういう事を意味しているかといいますと、指標がないゆえに
バブル化しやすく、また、過去の類似体験がないがゆえ、バブルが
どこまで拡大するのか、あらかじめ予見することは相当に難しいと
という事ではないでしょうか。

おそらくこれから私達は、好む好まざるに関わらず、新しいバブルに
何らかの形で巻き込まれてゆくことになると思いますが、もし、
私達がこの領域に積極的に参加してゆくのであれば、相当の自制心と
先見性が要求されるのではないでしょうか・・・相場からの去り方
という点で・・・



では 今回はこのへんで。





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