金と銀
皆さん、こんにちは。

今回は銀(シルバー)について少しお話を致します。

歴史的に見て我が国では、銀の価値を高く見て、金の価値を低く
見る傾向があったようですね。

例えば江戸時代の一分銀(いちぶぎん/四分で一両でした)と
一分金(いちぶきん)は等価で、「一分銀」には約8.6グラムの
銀が、「一分金」には約1.6グラムの金が(注1)含まれていました。

(注1)江戸時代末期に鋳造された貨幣の場合です

言い換えますと、我が国の場、当時の金と銀の交換比率は

金対銀=1.6対8.6・38.0(1973年)

もっと簡単にいいますと、「金は銀の約5.4倍ほどの価値しかなかった」
ということになります。

確かに我が国にも、(今話題の)石見銀山という、当時世界有数
の銀山はありましたが、それでも世界水準で見ると、日本には優良
な金鉱が多く、そのぶん金の価値は銀に対して相対的に低く評価
されてきた、このようにいえるのではないでしょうか。

江戸時代末期から明治初期、その交換比率の歪みに気付いた欧米
の商人達は、日本に大量の銀貨を持ち込む一方、日本の金貨を
買い付け荒稼ぎをした、このような記録も残っています
(すでにヘッジファンド的!)。

ところでここ数十年の金と銀の価格比を見てゆきますと、
なかなかおもしろいことに気付きます。

1973年から金が最高値をつけた1980年の金/銀レシオ(注2)を見ますと

・38.0(1973年)
・33.9(1974年)
・36.7(1975年)
・29.0(1976年)
・32.3(1977年)
・35.8(1978年)
・27.7(1979年)
・29.7(1980年)

(注2)1グラムあたりの金の価格を、同重量の銀価格で割って出した指数(私が勝手に名づけました)。

となっております。年を追って金/銀レシオが徐々に小さくなって
いますが、この間

金 97.2ドル(1973年)→612.1ドル(1980年)
銀 2.6ドル(1973年)→20.63ドル(1980年)

(注3)いずれも各年末時点のスポット価格

というように、金・銀とも価格そのものは上昇し続けております。

ではさらに、その先の金/銀レシオを見てみましょう

・43.7(1981年)
・47.3(1982年)
・37.1(1983年)
・44.3(1984年)
・51.8(1985年)
・67.2(1986年)
・63.7(1987年)
・66.9(1988年)
・69.4(1989年)
・79.6(1990年)
・89.7(1991年)

この間は上記の期間とは逆に、金・銀とも価格をほぼ一貫して
下げ続けました。

金 1981年(446.8ドル)→1991年(376.1ドル)
銀 1981年(10.5ドル)→1991年(4.0ドル))

続いてその先をみてみますと(少し行数が多くなりますので3年
ごとにさせていただきます)

・87.5(1992年)
・74.0(1995年)
・53.2(1998年)
・61.7(2001年)
・61.1(2004年)
・54.9(2007年10月末現在)

とこのように推移しており、この間の金・銀の価格は

金 1982年(446.8ドル)→2007年10月末現在(754.5ドル)
銀 1982年(10.5ドル)→2007年10月末現在(13.7ドル)

と上昇しております。

以上見てまいりましたが、これらのことからいくつかのことが解ります。

1.金と銀の価格比は下は20台、上は80台の間で激しく変動する。
2.貴金属の上昇局面ではレシオは低くなり、下落局面ではレシオは高くなる。

言い換えれば、銀は価格上昇局面では金より上昇率が大きくなり、
下落局面では激しく下落するということがいえます、江戸時代の
日本では金と銀の産出量の違いが、金銀相場の歪みを生みましたが、
すくなくともここ数十年をみますと、相場をゆがめるほどの鉱山は
発見されておりません。

代わって金/銀レシオに影響を与えるのは、短期・長期の投資マネー
です、銀は金にくらべ市場が小さく、例えば時価総額を単純に比較
すると、銀の市場規模は米ナスダックに上場する、スターバックスの
時価総額の僅か1/7に過ぎないそうです(注4)。

(注4)「世界が注目するシルバー投資」(チャールズ・スポパドック著)

そのため、僅かな投資資金が流入しただけで、市場が一気に高騰
してしまう可能性があるというわけです。

あるいは、今後の銀相場を占うという意味では、金属としての
銀の特性にも注意が必要です、銀は金に比べ腐食しやすい一方で、
導電性(電気を通す性質)が高く、携帯電話や携帯オーディオなど、
微細でかつ高品位な加工が要求される電子機器にとって、必要不可欠な
産業用金属としての側面があります。

このような電子機器は、大きな人口を抱える新興国の生活水準
が上がれば、需要の裾野がさらに広がることが予想され、実需の
観点からも、今後の銀の受給の引き締まりを予想できます。

銀は、産業用途という実需の割合が非常に大きいという点で、金とは
違った特質を持っている点を見過ごしてはなりません。

さらに銀は、今後45年に世界で消費される量の、わずか1/10程度しか
埋蔵量がない(注5)、枯渇危惧金属の筆頭に挙げることができ、
そういう観点でも、今後の相場が一変する可能性を秘めております。

(注5)独立行政法人 物質・材料研究所の研究レポート より

以上、銀について長々と書いてきましたが、日本人から見て
「金」は資産運用の対象として大いに注目を集めていますが、
こと「銀」に関して書籍、報道等をみても資産運用の対象と
してまず取り上げられることはありません。

これを機会に日経新聞などで、銀価格を毎日チェックする習慣を
お付けになってみてはいかがでしょうか。

思わぬ成果を挙げられるかもしれませんよ。

では 今回はこのへんで。
(記2007年11月6日)




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