政府系ファンドの功罪
皆さん、こんにちは。

1.アブダビ投資庁 6250億ドル
2.ノルウェー政府年金基金 3220億ドル
3.サウジアラビア通貨庁 3000億ドル
4.シンガポール政府投資公社 2150億ドル
5.クウェート投資庁 2130億ドル
6.中国投資有限責任公司 2000億ドル
7.ロシア安定化基金 1275億ドル
8.(シンガポール)テマセク・ホールディングス 1080億円
9.カタール投資庁 600億ドル
10.リビア投資庁 400億ドル

(2007.11.20日経記事より)

以上はいわゆる政府系ファンドのうち、運用資産総額トップ10
です。

現在、30程の政府系ファンドがあり、その運用資産総額は約2.5兆ドル
に達しているといわれています、2.5兆ドルといわれてもなかなか
ピンとこないと思いますが、例えば世界中のヘッジファンドの運用資産
の総額は1.8兆ドルとか2.0兆ドルとか言われていますので、その資金の
大きさがわかります、さらに2015年までにその運用資産は12兆ドルに
膨張し、現在の全世界の外貨準備総額を上回るとの見方さえあります。

これら政府系ファンドは主に、中東やノルウェー、ロシアなど
原油や天然ガスなどの天然資源の輸出により得られた資金である
場合が多いのですが、シンガポールや中国のように、貿易黒字国が
積みあがった外貨準備の一部を、ファンド化して積極的に運用する
場合もあります。

この政府系ファンド、実は古いものは1950年代から設立されており、
それなりの歴史があるのですが、近年では資源価格の高騰や、新興諸国
の経済的な台頭もあり、急速に運用資産が膨張しつつありすし、また、
それに伴って(良い意味でも、悪い意味でも)世界の注目を集めつつ
といえます。

以前のように、小ぢんまりとやっているぶんにはそれほど問題は
ありませんでしたが、運用資産総額が2.5兆ドルともなりますと、
投資を受ける側としても、そう鷹揚に構えておくことも出来なくなります。

例えばある国の軍需産業を、他国の政府系ファンドが購入し、
その技術を手に入れてしまうといったケース、あるいは世界のメジャーな
鉱山会社やエネルギー会社を買収し、その権益を独占すると
いったケース・・・政府系ファンドは、既にファンドという本来
の純経済的な存在から離れ、一種政治的な警戒心をもって見られ
はじめたわけですね。

もともと彼ら政府系ファンドは、その手口が公開されていない場合が
多く、投資を受ける側、あるいは買収される側からみると、どうしても
疑心暗鬼に陥りやすい面があります。

このところG7の議題といえば、サブプライム問題やヘッジファンド
の規制問題と相場が決まっていましたが、最近、先進国側ではこの
政府系ファンドに対し、何らかの規制を加えるべきではないかとの
議論も高まっているようです。

では、政府系ファンドに対する見方が警戒感一色なのかといえば、
かならずしもそうではありません、むしろ現在の不安定な世界経済を
下支えするという意味で、非常に大きな期待を集めている面もあります。

例えば昨日(2007年11月26日)発表された、アブダビ投資庁による、
シティへの出資(75億ドル/約8000億円)などがそれです。

ご存知のようにシティは、サブプライム問題で最も傷ついた金融機関で、
既に7-9月の決算で85億ドル(約9300億円)のサブプライム関連の
評価損を計上し、さらに今四半期(10-12月期)には、80~110億ドル
の評価損を追加で計上する見通しです。

日本のバブル処理の時もそうでしたが、最終的に『金融システム』
の要(かなめ)である銀行の経営を安定させない限り、金融界の
動揺に終止符を打つことは難しいと私は思いますし、仮に今の状態が
長引けば、世界の実態経済にまで悪影響を及ぼすという、最悪の
シナリオすら否定できない状況になってきました。

日本の場合、最終的には銀行に対し、直接に公的資金(約10兆円)
を注入することで、この問題の解決の糸口を掴みましたが、
もしかすると、今回のサブプライム問題でその役割を担うのは、
米国の公的資金ではなく、中東(あるいは中国)の政府マネーでは
ないかいう気も致します・・・

そもそも中東のオイルマネーは原油の売却代金・・別な見方をすれば
先進国に偏在していた富(とみ)の一部が、原油という媒体を介し、
中東に移転して積みあがったものです。

オイルマネーを中東の金庫に積み上げ、その資金で米国債ばかりを
買っていては、いずれ世界の金融に歪み(ゆがみ)をもたらすことは
明白です、いまこのように政府系ファンドという形で、中東
から世界へ向かってオイルマネーが還流する構図が出来つつありますが、
私などはこれは非常に健全な形だと思いますし、揺らぎ始めた世界の
金融システムの安定に寄与するという点でも、大いに期待
を持ちたいと思います。

この問題で苦悩しているのはシティだけではありません、他にも
多額の評価損を計上し、あるいは多額の評価損の計上が予想されて
いる金融機関はたくさんあります、一方で純粋な経済的目的で、彼らへの
出資を希望している政府系ファンドは、他にもたくさんあると聞いています。

また彼らは同じく経済的動機で、不良化したサブプライム関連商品への
逆張り的な投資、あるいは同関連商品へのショートポジションを保有する
など、サブプライムがらみの投資を膨らませてゆくことも想定できます。

世界のリスクマネーが収縮し、安全資産への回帰を図るいま、彼ら
中東の政府系ファンドが、唯一のベンチャーマネーとして振る舞い、
結果的にそのことで、この問題の行く先に一筋の光明が差しつつある・・・

このようにいえるのかもしれません。

では 今回はこのへんで。
(2007年11月28日)




このコラムが一週間早くお手元に届きます
当社代表の田中が週に一回お届けする無料メルマガ「一緒に歩もう! 小富豪への道」
は下記からご登録いただけます。

「T's資産運用コラム」と同じ内容を一週間早くご覧いただけます、是非ご登録ください。

【購読登録】 メールアドレスご入力ください :
『まぐまぐ!』から発行していますので、ご安心ください。

totop