格差の本質
皆さん、こんにちは。

経済の世界で起こっているさまざまな出来事を見渡してみますと、
今更ながら、すべての経済活動は複利の世界でなりたっていること
に気づきます・・・

例えば私たちが会社で日々行っている仕事、それが営業であれ、
開発であれ、設計であれ・・毎日の仕事というものは、日々ゼロから
始まるのではなく、昨日までの蓄積の上に新たに積み上げられている
はずです。

あるいは例えばコメを作るという仕事にしても、いかにして単位面積
当たりの収穫量を増やせるか、いかにしてさらに消費者の好みにあった
品種を作るか、いかにして人手を掛けず生産できるか・・・毎年なんらか
のテーマをもって取り組まれていて、その努力は昨年までの蓄積のうえ
積み上げられているはずです。

このように人間に向上心や富に対する欲がある限り、日々行われる
生産活動は、すべて昨日までの経験や実績のうえに積み上げられて
ゆくものではないでしょうか。

一見あたりまえのようなこの事実ですが、よくよく考えてみますと
とても重要なことを含んでいることに気づきます。

例えば(仮に毎年の生産性の上昇率を数値化できるとして)Aさん
という人は毎年4%、Bさんという人は毎年2%の割合で、生産性を高めて
ゆくことができたとしましょう。

現在の生産性が共に100としますと、来年時点の生産性は

・Aさん 100×104%=104
・Bさん 100×102%=102
となり、その差は2です。

では2年後はどうなっているでしょうか。

結果は
・Aさん 100×104%×104%=108.2
・Bさん 100×102%×102%=104.0

となり、差は4.2に拡大しました。

ではずっと先、10年後にはどれだけの差がついているでしょうか。

結果は
・Aさん 100×104%×・・・10乗・・・=148.0
・Bさん 102×102%×・・・10乗・・・=121.9

となり、その差は26.1まで広がっています、単年度の生産性
の差が2ですので、単利の世界では、10年後の生産性の差は

2×10年分=20

となるのですが、昨年度の実績がベースになる複利の世界では、
両者の差は時間と共に大きくなり、10年後に26.1まで拡大して
しまったというわけです・・・

複利の世界では、時間の経過と共に両者の差は加速度的に大きく
なりますので、20年、30年と年数が経ってゆきますと、Aさん
とBさんの生産性の差は、手の施しようのないほど開くことに
なるでしょう。

そもそも格差というものは、このような複利的プロセスを経て、
加速度的に拡大してゆくことが宿命付けられているのではないか・・・
私はこのように思っています。

では、現在の政策テーマになりつつある『格差の是正』は何を意味して
いるのでしょうか、複利という視点でもう少し考えてみましょう。

格差の是正は言い換えれば「生産性の高い主体から生産性の低い
主体への富(とみ)の移転」です、例えば高所得者から低所得者への
移転の場合もありますし、都市生活者から地方生活者への移転の場合も
あります、最近話題になった東京都や愛知県から地方への税の移譲
などもこれに含めてよいでしょう。

ではこの『格差是正』、先ほどの複利効果という視点からみて、経済全体
にどのような影響を与えるのでしょうか。

例えばここで年率4%で価値を増やしてゆけるC地域と、年率2%で価値を
増やしてゆけるDという地域があったとしましょう。

仮に毎年1000万円をC地域からD地域へ移譲しつづけると、どういうこと
が起こるのでしょうか、CもDも日本国内の都市だとします。

もしCという地域にこの1000万円があり、このお金がなんらかの
経済活動に再投資され続ければ、この1000万円は毎年4%の複利で
価値を増やしてゆけるはずです。

一方、仮にD地域に1000万円が移転してしまえばどうでしょうか、
この1000万円の価値増加の速度は年率2%に下がってしまう勘定に
なります。

結果的に日本という国全体の富(とみ)という視点で見れば、
この1000万円はCという地域で投資活動に回したほうが有利だと
いう結論に行き着かざるを得ません・・・

「生産性の高い主体から、生産性の低い主体への富の移転」という
形での格差是正は選挙対策になりますし、それ以前に弱者救済という
道徳的な見地から、正面から反対しづらくもありますが、
このように順を追って考えて参りますと、格差是正は富の移転ではなく、
生産性の向上(上記の例では2%を4%に近づけるということ)によって
解決することが望ましい、このような結論になるのではないでしょうか。

では 今回はこのへんで。
(2007年12月18日)




このコラムが一週間早くお手元に届きます
当社代表の田中が週に一回お届けする無料メルマガ「一緒に歩もう! 小富豪への道」
は下記からご登録いただけます。

「T's資産運用コラム」と同じ内容を一週間早くご覧いただけます、是非ご登録ください。

【購読登録】 メールアドレスご入力ください :
『まぐまぐ!』から発行していますので、ご安心ください。

totop