ある村のできごと
皆さん、こんにちは。

むかしある島に裕福な村Aがありました、その村の住人の数は
1000人、むかしからその村に蓄えられてきたお金で隣村から食糧を
買って生活していました。

この島にある、もう一つの村はB、その村の住人の数は10,000人、
かれらは決して豊かではありませんが、よく働き、よく学び、彼らが
生産した食糧の一部を、隣の裕福な村Aに売って徐々にお金を蓄えて
ゆきました。

この島は絶海の孤島で、島以外との行き来は無かったとしましょう。

当時村Bは決して裕福ではなく、例えば主食のコメの消費量も
それほど多くなく、自ら消費し、隣村Aに売ったあとも多少の余剰が
うまれ、余剰分のコメは家畜に与えたり、コメの貯蔵庫に蓄えて
不作に備えましたが、それでもなお余る場合は、コメを廃棄する
こともしばしばありました。

さて、この状態でこの島のコメの価格はどのようにして決まる
のでしょうか。

まず消費する側の村Aの視点で考えてみましょう。

島全体として、コメは生産過多の状態ですから、村Aの住人が
お金さえ出せば、くらでもコメは手に入る状態にあります、ただ
いくら安価でもコメを買えるかといえばそうではなく、生産する側の
B村の人が売ってもいいと考える価格以下でコメを買うことは
できません。

そこで今度は生産する側のB村の視点が必要になってきます、
この場合B村のコメの生産原価や輸送費など、さらにそれに一定の
利益を加算して計算された額が、B村が提示できるコメの最低額
ということになり、その額でB村からA村にコメは売り渡される
ことになるはずです。

言い換えればこのような生産余剰の状態では、A村の消費者と
B村の生産者による受給のバランスによって、コメの価格が決定
されるのではなく、生産者であるB村の製造コスト+利潤によって
コメの価格は決定されるというわけです。

では仮にB村の生活水準がアップし、コメの消費量が急拡大し、
もはやB村の生産では島全体(島民11,000人)の需要を満たせず、
例えば10,800人分しか生産できないという状況になれば、コメの価格は
どのようにして決定されるでしょうか。

コメは島民の食生活にとって必需品ですから、A村の住人もB村の
住人も、手持ちのお金を可能な限り工面して、生産者からコメを
買おうとします。

その結果コメの価格は上昇しますが、ある一定額に達すると
コメを買いたくても買えないひとたち(下位所得者200人)がでて
きますので、もうそれ以上コメの価格は上がらないということになる
のでしょう。いわばそのあたりが需要と供給の均衡点です。

先ほどの生産過多の状態では、コメの価格は生産者側のコスト+利潤
で決定されましたが、今回のような需要過多の状態では、生産者側の
理由ではなく、消費者側の理由(いくらまでなら支払うことが出来るか)
に移ることになります。

さて以上のようなモデルを現在の国際商品(コモディティ)市場に
置き換えて考えると、どのようなことがいえるでしょうか。

今にして思えば僅か数年前までは、地球上のほとんどのコモディティは
生産過多の状態にあったといえるでしょう。

このような状態でも、一見モノの値段は需給のバランスで決定はされ
るようにみえますが、仔細にみますと冒頭の例のように、決定される
価格の下限は生産者側のコスト+利潤となり、多少の変動はあるものの、
基本的に先進国(村A)の住人は、途上国(村B)の住人の僅かばかりの
人件費や利潤を加えた安い価格(即ち価格の下限近辺)でコメを買う
ことができたわけですね。

これに対し現在は、途上国(村B)の生活水準が徐々に向上し、先進国
(村A)の生活水準に徐々に近づきつつある過程と考えてよいでしょう、
その過程において、価格決定メカニズムの歪みは徐々に修正され、本来の
需要と供給のバランスによって価格は決定されるという構図が生まれ
つつあるといえるのではないでしょうか。

その結果、冒頭の例のように需要超過の状態になった時、所得下位者
200名はコメを入手できないという状態になるはずで、おそらく現実の
世界もこのような方向に向かいつつあるのではないでしょうか。

新興国の富裕化によって、世界的な富の拡散が起こった結果、かつての
先進国(村A)の住人ですら、所得下位者200名の一人になってしまう
可能性もありえるでしょう。

現在世界的に起こっている一次産品価格の上昇は、歴史的な視野に
たって考えれば、上記のような変化が顕在化しつつある過程なの
かもしれません・・・


では、今回はこのへんで。
(2008年4月8日)




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