この世をば・・・
皆さん、こんにちは。

『この世をば わが世とぞ思う 望月の 欠けたることも なしと思えば』

この世はすべて私の思うがまま、
今の私は全ての点で満ち足りている、
まるで一点の欠けもない満月のように・・・

これは平安時代の中頃、藤原道長(ふじわらのみちなが)が
詠んだ歌です。

当時の道長は天皇を摂政しつつ、実質的には全ての権力を
掌握していましたので、確かにその点では「一点の欠けもない満月」の
ような心境だったことでしょう。

ただ一方で、物質的な豊かさという点ではどうだったでしょうか。

平安時代のことですから、食事は朝夕の二食、京の都は海から遠く、
新鮮な魚は手に入りにくかったことでしょう、かといって牛や豚を食する
習慣も無く、恐らく道長といえども、普段の食事は菜食が中心で案外質素
ではなかったでしょうか。

貴族の邸宅は、それなにり当時の贅を尽くして建てられたで
しょうが、それでも瓦葺の屋根に板張りの床がせいぜい、この時代畳は
十分に普及しておらず、板張りの床に座布団のような感覚で置いて
使われていたと聞きます。京の冬は底冷えがし、道長といえども冬の夜
などは、寒さに震えながら床に就くことが多かったことでしょう。

時の権力者の「一点の欠けもない満月」のように満ち足りた生活も、
現代を生きる私達からみると「不便極まりない」貧しい生活に感じられる
に違いありません。

もし人間の欲望に際限が無いのであれば、人間にとって「絶対的に
豊かな生活」などというものはあるはずもなく、人間が
「一点の欠けもない満月」のような心境でいられるのは、周りの人たちと
比べ、自分や家族の生活が「相対的に豊か」である場合に限られるのかも
しれません。

さてさて私達現代の日本人、一時に比べ相対的な豊かさに
陰りが見え始めているようですが、これからどうなるのでしょうか。

お隣の大きな国を、いつしか羨望のまなざしで見るときが
くるのでしょうか・・


では、今回はこのへんで。
(2008年4月22日)




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