久しぶりに地味なおはなし
皆さん、こんにちは。

今回は久々に地味な債券のお話をしましょう。

いま私の目の前に、野村證券が販売する「アメリカ国債(ゼロクーポン)」
の銘柄リストがあります。

いわゆる「ゼロクーポン債」のことですが、この商品はミドルリスク・ミドル
リターンの商品として、なかなか魅力的な性質を持っています。

まず第一に文字通り「ゼロクーポン」である点、クーポンというのは
利札(りふだ)のこと、むかし債券が紙ベースで発行されていた頃、
債券本体のワキに印刷されたクーポンを切り取って、半年に一度証券会社に
持参すると、あらかじめ決められた利息を受け取ることができる
仕組みでした、「ゼロクーポン」というのはこのクーポンが付いて
いないという意味、「ゼロクーポン債」は保有中一切の利息を受け取る
ことができないかわり、額面100ドルに対し、例えば70ドルとか75ドルと
いった具合にディスカウントされて(割り引いて)発行されます。

もし皆さんが、クーポンが付いている債券(「利付き債」)を
お持ちだとしますと、半期に一度利息を受け取る都度、20%の源泉徴収を
受けなければなりませんし、源泉徴収後の利息が再投資されることも
ありません。

これに対しゼロクーポン債には、そもそもクーポンがないわけですから、
保有中一切の税金は発生しません、投資額の全てが継続運用されることに
なりますので、実質的な利回りは高まるという利点があります。

二つ目の利点は購入の時点で、(外貨建で)利回りが確定
するところ、例えば現在ゼロクーポン米国債で、残存期間10年銘柄の利回りは
4.1%ほどですが、この利回りは、債券を買った瞬間に確定し、
10年後の(米ドル建)受取額は保証されることになります(ただし米国が
デフォルトしない限り)。

このことは、私達個人がライフプランを立てる上でとても有益です。

例えば皆さんが、今から10年後の60歳時点で定年退職し、その後3年間、
年金の空白期間があるとしましょう。

この場合、10年後、11年後、12年後に満期を迎える米国ゼロクーポン債に
例えば200万円づつ投資することにより、(仮に各銘柄とも、4.3%程度の
利回りだとすると)それぞれ

・60歳時点 約304万円
・61歳時点 約317万円
・62歳時点 約331万円


というように受取額が確定し、年金空白期間の必要最低限の生活費を
確保することができます(ただし、円ドルレートが今と変わらないと
仮定してですが)。

ゼロクーポン債が持つこの性質を利用して、例えば皆さんの資産を外貨建
で15年後に元本確保型に設計する、といったことも可能です。

先ほどの野村證券の外債リストによりますと、今から約15年後の
2023年2月に償還される、米国ゼロクーポン債の現在価格は50.95ドル、
保有期間中の利回りは4.62%となっています。仮に皆さんがお手持ちの
資産1000万円のうち509万円でこの債券を買ったとしますと、今から15年後の
2023年には(仮に為替レートが動かないと仮定しますと)、これだけで
1000万円を受け取ることができ、当初の元本1000万円は確保されたことに
なります。

残った491万円はうんとハイリスク・ハイリターンな金融商品、例えば
新興国株ファンドや思いっきりレバレッジの効いたヘッジファンド、
高レバレッジのコモディティ系ファンドなども面白いでしょう、もちろん
そこは皆さんのライフプランとお好み次第、世界中のローリスク・ロー
リターン型商品からハイリスク・ハイリターン型商品まで、それこそ無数に
ある金融商品のなかからお好みで・・・という具合です。

ただこの便利なゼロクーポン債、残念ながら、証券会社にとっては必ずしも
売りたい商品ではありません。

理由は二つ、一つ目は(実はこれが主な理由ですが)手数料の点で
インセンティブが小さい点。

そもそも債券は(例えばグロソブに代表される債券型ファンドと比べ)
購入手数料は圧倒的に少なく抑えられています、しかも債券型ファンドと
異なり保有中の手数料(信託報酬)も入ってこない仕組みです。

二つ目の理由は、彼らに個人のライフプランまで踏み込んだポートフォリオ
を提案するという能力(あるいは動機か)が無い点、いくら使い勝手の良い
商品でも、その使い方を提案できなければ投資家は買えません・・・

金融商品取引法の改正で、リスクの説明はしっかりとするようになり
ましたが、どうも肝心なところでは何も変わっていないような気がします。

さらにこのゼロクーポン債、購入する上で重要なポイントがあります。

私の目の前にある野村證券の外債リストによりますと、例えば満期が
10年後(2018年5月15日償還)の米国ゼロクーポン債の現在価格は66.62ドル、
利回りは4.10%となっています。

仮にいま皆さんがこの債券に1000万円投資したとしますと、10年後の償還時
には約1500万円(為替変動考慮せず)を受け取れる計算です。

ところが例えばいまからほぼ一年前、当時の残存期間10年の米国ゼロクーポン債
の時価は61.05で、利回りは5.03%でした。

仮に皆さんがいまから一年前この債券に1000万円投資したとしますと、
10年後には約1640万円(同じく)となっていたことになり、僅か一年の購入
タイミングのずれで、受取額に約140万円の開きが出てしまうことになります。

債券の価格はその時々の経済環境に引っ張られ、日々変動しています。

例えば一年前のように経済環境が良好な景気拡大期には、一般的に債券は
売られ(長期債の利回りは上昇し)、株が買われやすくなります。

これに対し、現在のように景気後退局面では株は売られ、債券は買われ
やすい(利回りは低下)状態になります、しかも長期債の場合、先ほども
お話ししたように、購入した瞬間に長期にわたり利回りが固定してしまい
ますので、その購入のタイミングには十分な注意が必要です。

私自身は米国の景気後退は避けられないと考えていますが、株や
債券はすでに、その一歩先を見越した動きを始めているように思います。

もし皆さんがゼロクーポンの米国債を資産に組み入れるなら、それは
米国の長期金利(10年債利回り)が、5%を超えてくるあたりからではないか
と私は考えています、一方で為替はまだ円高水準だと思いますので、いま
のうち米ドル建てMMFあたりを買ってつないでおき、タイミングを見計らって
米ドルMMF→セロクーポン米国債にスイッチできればベストではないで
しょうか。


では、今回はこのへんで。
(2008年5月8日)




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