資源関連株ファンドを考える
皆さん、こんにちは。

ここのところ、徐々にコモディティ投資の選択肢が増えて
きましたね。

これは実によいことだと思うのですが、選択肢が増えた反面、
商品の特性を理解しないまま購入してしまうケースも目に付く
ようになってきたように思います。

そこで今回は特に「資源関連株ファンド」について考えてみたいと
思います。

1.日興・DWS・ニューリソース・ファンド
2.ワールド・ウォーター・ファンドBコース(野村)
3.世界資源株ファンド(三菱UFJ)
4.HSBC世界資源エネルギーオープン
5.ブラックロック・ワールド資源株ファンド


以上は国内で市販されている、いわゆる「資源関連株ファンド」を、
運用残高が多い順に一位から五位まで並べたものです(2008年1月末現在
ただし、運用期間が一年未満のものを除く)。

いずもファンド名のなかに、例えば資源(リソース)、水(アクア)
といった単語が挿入されており、一見してファンドの中身を連想させる
響きを持っていますね・・・昨今のコモディティ相場急騰のなか、
購入者は当然のことながら、コモディティ価格の上昇に乗っかり、
高いリターンを挙げることを期待して購入したはずです。

では果たしてその期待通りになったでしょうか、各ファンドの
パフォーマンスの検証をしてみましょう。

1.日興・DWS・ニューリソース・ファンド
過去3ヶ月  +8.9%
過去6ヶ月  -6.3%
過去1年   +8.9%

2.ワールド・ウォーター・ファンドBコース(野村)
過去3ヶ月  +3.0%
過去6ヶ月  -14.3%
過去1年   -11.9%

3.世界資源株ファンド(三菱UFJ)
過去3ヶ月  +9.7%
過去6ヶ月  -7.1%
過去1年   +22.9%

4.HSBC世界資源エネルギーオープン
過去3ヶ月  +9.4%
過去6ヶ月  -12.4%
過去1年   +7.1%

5.ブラックロック・ワールド資源株ファンド
過去3ヶ月  +13.8%
過去6ヶ月  -6.1%
過去1年   +21.4%

●5ファンド単純平均
過去3ヶ月  +9.0%
過去6ヶ月  -9.2%
過去1年   +9.7%


このように5銘柄平均でみますと、この一年間で約10%のリターンを
得られたことになりますが、コモディティ相場の上昇ほど
にはリターンを取れていないことがわかります。

一方でこの間、コモディティ相場の動きは下記のようになっています。

●CRB指数
過去3ヶ月  +10.8%
過去6ヶ月  +16.6%
過去1年   +30.9%


過去一年間の比較で+9.7%と+30.9%では随分と開きがありますね。
資源関連株ファンドは、先進国企業の株式に投資するという側面と、
コモディティ関連ファンドという2つの側面を同時に持っており、
その点を理解してうえで投資をする必要があったわけです、ちなみに
同時期の株価の動きをみますと

●TOPIX
過去3ヶ月  +0.9%
過去6ヶ月  -16.1%
過去1年   -20.1%

●MSCIコクサイ指数(円ベース)
過去3ヶ月  +1.7%
過去6ヶ月  -16.8%
過去1年   -17.0%


注)MSCIコクサイ指数は、日本を除く世界の先進各国の株価に連動
するよう開発された指数

という具合です、この一年はまさにコモディティ優位の一年だった
ことがよく解りますし、資源関連株ファンドの直近一年は、
(たまたまちょうど)株とコモディティの真ん中あたりの実績だった
こいうことも解ります。

5つの銘柄の平均値でみると、上記のようなことが言えるのですが、
それぞれのファンドを個別にみますと、ファンドによって大きな
差が出ていることも解ります、例えば過去1年の実績を比較しますと
最高が『世界資源株ファンド(三菱UFJ)』で+22.9%、これに対し
『ワールド・ウォーター・ファンドBコース(野村)』は-11.9%と
唯一マイナス実績となっております。

ではなぜ、これほどまでに大きな実績の違いがでてしまったので
しょうか。

まず「資源関連株ファンド」に属していても、ファンドによって投資対象の
テーマが『エネルギー関連会社』であったり、『水処理関連会社』で
あったり『農業関連会社』であったりというように、テーマそのものが
異なるという点は要注意です、例えば原油や天然ガスなどのエネルギー、
あるいは農産物などにはそれぞれ指数がありますが、水にはそもそも指数
などありません、エネルギー関連や農産物関連企業の場合、指数に連動して
株価が動くケースがありますが、水関連企業の株は、指数が存在しない分、
それだけ平均株価に引っ張られやすい性格をもっているように思います。

例えば『エネルギー関連会社』というと、BPやシェブロン、
エクソン・モービルのように比較的エネルギー価格(原油価格)と
株価が明確に連動しますが、例えば『水処理関連会社』はどうでしょうか、
日本で言いますとオルガノや三菱レーヨンなどが該当するので
しょうが、水処理関連というテーマは水の浄化装置の素材から、下水処理施設
まで実に幅が広く、また会社によって『水処理』に依存する比率はまちまち
です、今後世界が水不足になるというテーマ性は面白いのですが、はたして
先進国の株価指数以上のリターンを得ることができるか、疑問が残るところ
です。

このような資源関連株ファンドが、世に出てまだそれほど期間は
経っているわけではありませんが、今までの実績を見る限り
『エネルギー関連株』と『鉱山株』は、それぞれのテーマと比較的高い
価格連動性がありますが。『水処理関連株』と『農業関連株』については、
それぞれのテーマにはまあり関係がなく、むしろ先進国の株価指数との連動性
が高い傾向にあるといえそうです、これに対し、例えば穀物インデック連動型
ファンドや、貴金属インデックス連動ファンドは、ストレートにインデックス
(言い換えればテーマ)に連動するという点で、資源関連株ファンドには
みられない性質を持っているといえます。

以上のことから「資源関連株ファンド」を皆さんの資産に組み入れる
場合、下記のような点にご注意いただければと思います。

1.コモディティへの投資ではなく、あくまで先進国株への投資
である点に注意。ただし、先進国株にコモディティ的な要素を
多少なりとも加える効果はある。

2.『エネルギー関連株』『鉱山株』はよりコモディティ投資的な
要素が大きい、一方で『水処理関連株』『農業関連株』は一般の先進国株
としての性格が強い。

3.コモディティをポートフォリオに組み入れるなら、より細分化
されたコモディティ・インデックス・ファンド(穀物、原油、貴金属
などのサブ・インデックス)を使ったほうが有効な場合がある。




では、今回はこのへんで。
(2008年5月24日)




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