最大予想損失率から作るポートフォリオ
皆さん、こんにちは。

『リスク許容度』・・・

私がお客様のポートフォリオを作る際、最も重視するポイント
の一つです。

一般的に資産運用といいますと、「何年でいくらになる」というように、
目標リターンのみに焦点をあてて語られる場合が多いですが、
私は目標リターンと同じくらい、「どの程度の資産の下落に
耐えられるか」という観点が重要だと思っています。

いいかえれば皆さんお一人お一人のポートフォリオの『最大損失予想額』
を客観的な数値としてあらかじめ把握しておくということ、
要するに最悪の目が出たとしても、それを経済的に受け入れる
ことができる範囲で運用を始めるということです。

では具体的に、どのようにすれば皆さんのポートフォリオの
『最大損失予想額』を計算することができるのでしょうか。

数学的に申し上げれば、ポートフォリオのリスク/リターンを算出する
ことによって求めることができるのですが、ここではもった噛み砕き、
できるだけわかり易くご説明してみます(それでも結構ややこしいですが)。

例えばまず資産を

・ローリスク/ローリターン
・ミドルリスク/ミドルリターン
・ハイリスク/ハイリターン


の3つの資産クラスに分類したしましょう(これは私がいつもコンサル時に
用いる方法ですが)、さらに各クラスごとのリスク/リターン
の目安をそれぞれ

・ローリスク/ローリターン(リスク0%/リターン0.5%)
・ミドルリスク/ミドルリターン(リスク3.5%/リターン4.0%)
・ハイリスク/ハイリターン(リスク18%/リターン18%)


としますと、数学上の各クラスごとの最大予想下落率(注)はそれぞれ

・ローリスク/ローリターン(0%)
・ミドルリスク/ミドルリターン(-3.0%)
・ハイリスク/ハイリターン(-18%)

(注)標準偏差2つぶんです。


というように計算することができます(ただし、損失率がこの数値を
上回る可能性もわずかにありますが)。

従って仮に3000万円の資産を1000万円づつ各クラスに均等に配分
しますと、各クラスごとの最大予想下落幅は

・ローリスク/ローリターン(1000万円×0%=0円)
・ミドルリスク/ミドルリターン(1000万円×3%=30万円)
・ハイリスク/ハイリターン(1000万円×18%=180万円)

となり、初年度の資産全体の最大予想下落幅は
0+30万円+180万円=210万円

と計算できます。


ただし以上は全ての資産を円建てで運用した場合のお話しです、実際には
資産の一部を外貨建てで運用しますので、為替が円高に振れた場合の
価値下落も想定しておく必要があります。

では為替の変動をどの程度みておけばいいのでしょうか、まず大切なこと
は外貨での資産運用は米ドルだけでなく、ユーロや豪ドルなど米ドル以外
で行われる可能性もあるという点、さらに言えばファンドを通して、それ
ら以外のマイナーな通貨で運用される可能性があるという点です、これら
通貨別の為替変動を一つ一つ見て行くのは困難ですので、ここは
「実効為替レート」を使用しておきましょう、「実効為替レート」は主要な
通貨の加重平均ですので、これで代用可能だと思います。

その「実効為替レート」の変動率をみますと、標準偏差は約10%(注1)、
従って外貨建て運用部分は為替変動だけで最大20%減価すると見ておけば
十分(注2)といえるでしょう。

(注1)日銀サイトより、1970年より各年1月末の「実効為替レート」により計算。
(注2)標準偏差2つぶん

では次に、為替の振れを加味した最大予想下落幅を計算してみましょう。

前提として

・ローリスク/ローリターンは全て円建で運用、
・ミドルリスク/ミドルリターンは50%を外貨運用
・ハイリスク/ハイリターンは70%を外貨で運用


としますと、為替変動による予想最大下落幅は各クラスごと

・ローリスク/ローリターン(1000万円×0%=0円)
・ミドルリスク/ミドルリターン(1000万円×50%×20%=100万円)
・ハイリスク/ハイリターン(1000万円×70%×20%=140万円)

で合計240万円、これに先ほどの原資産の下落幅が210万円
加わりますので、資産全体の最大予想下落幅は合計で450万円と計算
できます。


これはコラム用にずいぶん簡略化した計算法ですが、基本的には
このような考え方で、皆さんの資産の一年間の最大予想下落幅を計算
することができます。

一方で目標リターンのほうは、各クラスごとの加重平均ですから
(1/3×0.5%)+(1/3×4.0%)+(1/3×18%)=7.5% となります。


言い換えれば平均的なリターンは年率7.5%だが、為替の変動も含め
最悪のシナリオを想定すると、3000万円の投資に対し、初年度450万円
(15%)の損失を被る可能性があるということになります(もっとも、
ひっくり返せして、7.5%+450万円のリターンをあげる可能性も同じだけ
あるのですが・・・)。

この下落幅が許容できなければ、目標リターンを下げたり、あるいは
外貨建て資産のウエイトを下げることにより、最大予想下落幅の
再計算を行う必要が出てくるというわけです。

それぞれのアドバイザーにより、いろいろな計算方法はあるでしょうが、
基本的にこのような手法で最大下落幅を予測しながら、御自分
のポートフォリオを設計する必要があるはずです。

では、今回はこのへんで。
(2008年9月2日)




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