■長期投資の本質
皆さん、こんにちは。
人間が作り出すあらゆる相場には上下動があります、
例えば皆さんがお手持ちのA社の株が、一日で10%も上がった、
あるいは10%も下がった・・これが上下動です。
ではこの相場の上下動によって人間の感情はどのように変化
するでしょうか。
例えばA株は非常に変動が激しく、日々10%程度の幅で上下を繰り返す、
一方でB株は変動が少なく一日の変動幅はせいぜい1%程度しかない、
このような2銘柄のいずれかを皆さんが持っているとしましょう。
A株を持っていたとしたら、きっと皆さんは毎日株のことが気になり、
仕事が手に付かないばかりか、眠れない夜を過ごすことだってあるに
違いありません、一方でB株を持っていたらどうでしょうか、おそらく
平穏な毎日をお過ごしになれることでしょう。
このように相場の上下動の激しさと、保有者の精神状態は密接に
関連しており、相場の変動が激しければ激しいほど、保有者の
「ハラハラ感」は強まることになります。
投資の世界では、この上下動の激しさのことを「価格変動リスク」
(あるいは単に「リスク」とも)と呼び、このリスクこそが
「ハラハラ感」の正体なのです。
さてここからが長期投資のお話しです。
よく「長期投資でリスクは減る」といわれますが、果てしてそれは
正しいでしょうか、ここでいうリスクとは先ほど申し上げたように
価格変動リスクのことです。
例えば仮に皆さんがA社株を1000株10,000円で買ったとしましょうか、
その後A社の株価は順調に上昇し、10年後にめでたく100,000円に
なったとしましょう、さて購入当初と10年後、リスクはどっちが
高いでしょうか。
答えは「変わらない」です。
なぜだかおわかりでしょうか、そもそも先ほど御説明したように
リスクは率、即ちパーセンテージで表されます、変動幅(金額)ベース
でみると確かに10,000円時代より100,000円時代のほうがブレは大きく
なりますが、ブレの率を比べますと(A社の業態や外部環境に大きな
変化がない限り)理論上は変化なしということになるはずです。
先ほど申しましたように「ハラハラ感」の正体は価格変動リスクです、
もしこのように長期投資によって価格変動リスクを抑制できないとすれば、
私達はいくら長期投資をしても心の平安は得られないということに
なるはず・・・
ではなぜ私達は長期投資の有効性を信じ、そして長期投資を志す
のでしょうか。
私は金融商品には必ず「本来的なリターン」があると考えています、
例えばある国の株式なら、その国の経済成長率+アルファといったように。
もちろん相場ですから、その時々の世界情勢や投機マネーの動きなどにより、
一時的にその本来的な価値から、大きく外れてしまうこともあるでしょう。
ただ仮にそのようなことがあっても一時的なこと、長い目で見ればその国
の株式の総和はいずれ本来的な価値に収斂するのは明白、であればへたに
売買を行わず、じっと我慢して持ち続けたほうが利口だし、最終的には
そのほうが高いリターンを得ることができる。
長期投資の本来の意味はここにあるはずです。しかしながら一方で
犠牲にしなくてはならないこともあります。
例えば価格変動リスクとどう向きあってゆくかという問題です、
先ほど申し上げたようにいくら長期投資をしても、その時々の
価格変動の率そのものは小さくすることは不可能です。
従って皆さんの「ハラハラ感」はいつまでたっても小さくなること
はないのです。
むしろ運用額が大きければそれだけ金額ベースのブレ幅は大きく
なりますので、運用の結果、資産が増えるに従ってむしろ
「ハラハラ感」が大きくなると感じられる人もいるでしょう。
それでもなお人が長期投資を志すのは、「ハラハラ感」があることは
承知のうえ、なおかつそれに耐え、その金融商品の
「本来的なリターン」を取りにゆくためだということになります。
よく「長期投資は手間がかからないし、持っていることを忘れて
しまえば気が楽だ」、このような安易な考えから長期投資を目指
される方もいるようですが、このようなスタンスで長期投資を行う
ことが本当に正しいかどうか、是非一度以下のような観点もふまえ
て考え頂く必要があるのではないでしょうか。
まずそもそも「持っていることを忘れてしまえるのか」という点です。
さらに申し上げれば持っていること忘れるような人が、そもそも投資を
始めるかという点です、人間の心はそれほど都合よくできているとは
思えず、本人としてはいくら忘れようとしても、実はそのことが
心の底で大きなわだかまりとなって、日常生活にかえって支障に
なってしまうということはないのでしょうか・・・
あるいは「手間をかけず」という考えもいかがなものでしょうか。
私は基本的に努力をせず、あるいは手間をかけずにお金を稼ぐことな
どできないと思っています、それが仕事であれ、資産運用であれ、
人間が織り成すこの社会で、そもそも手間をかけずにお金を稼ぐなど
というおいしいお話があるとは私には思えません。
私にはちまたでよく言われる長期投資は、長期投資の名を借りて
安易に行う「放ったらかし投資」にみえてしかたありません。
本来長期投資はだれでもできるような甘いものではなく、激しい
価格変動に耐えられる精神力と、たゆまぬ研究が求められる最も
厳しい投資法というべきものではないでしょうか。
私は長期投資の本質は「短期の価格変動に耐え、投資対象の
本来的なリターンを取りに行く」行為だと考えております。
では、今回はこのへんで。
(2009年2月10日)
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