長期投資のジレンマ
皆さん、こんにちは。

今回は前回に続いて長期投資にまつわるお話しを
いたします。

前回のコラムで、長期投資の本質は「短期の価格変動に耐え、
投資対象の本来的なリターンを取りに行く」行為だと申し上げ
ました。

今回はさらにもう一歩突っ込んで、長期投資は一体どのような
フィロソフィ(ちょっと大げさですが『思想・発想』などと
いう意味で使わせていただきます)に基づいて行われているか、
そのような点について少し考えてみたいと思います。

長期投資のフィロソフィ・・・一言で申し上げると、それは
「人間の先見性の否定」ということになるのではないでしょうか。

そもそも人間に先見性があるなら、相場の変動サイクルに
あわせて売り買いができるはず、であれば短期や中期での売買を
否定する長期投資は、それ自体すでに人間の先見性を否定している
ことになります。

逆に、人間に先を読む力が備わっていたとしたらどうでしょうか。

例えば現在の景気後退は2010年第一四半期に収束し、
そこから徐々に回復する、世界の株価は2009年後半から
回復に転じ、最も早く立ち上がるのは新興国市場からだ・・・

もし人間にこのような先見性が備わっているなら、いま株を
持っている必要はなく、すべての保有株を即手仕舞い、今年後半
に再度参入すればよいということになりますし、そのほうが
リターンは高まるはずです。

このような考えに基づく資産運用は、景気の変動サイクルに
あわせて持ち高を増減させる、いわば景気のサイクルを利用した
資産運用ということになり、言い換えれば長期投資とは逆に、
人間の先見性を肯定した投資手法ということになります。

要するに長期投資という運用手法の根底には、
「人間の先見性の否定」というフィロソフィが
横たわっているということになりますし、景気のサイクルに
あわせて定期的に持ち高を調整する手法は、「人間の先見性を肯定」
していることになります。

一方で投資の現場を実際にみるとどうでしょうか・・

現実の世界では相場は大きく波を打ちます、例えば昨年の中国株や
ロシア株・・・いずれの市場も一年足らずのあいだに1/3以下まで
急落しましたね。

いくら長期投資とはいえ、スタートの僅か1年ほどの
ずれで、運用成果が天と地ほどの差が出てしまう・・・
1年といえば長期投資を志す方からみれば、ほんの僅かの
ずれのはず・・私達は一体この事実をどう解釈すればよい
のでしょうか。

人間の先見性をそもそも否定している限り、いつ投資しようが
それは大きな問題ではないはず、現在の相場水準が高すぎるのか、
お買い得なのか・・

『長期投資理論』では、そのような議論自体がナンセンス
(実際に長期投資派の方はそのように語る場合が多いですが・・)
であり、重要なのは、どの程度長く持ち続けるかにある
はずです。

にもかかわらず一方で、いつ始めるか、あるいはいつ降りるかの
判断は、長期投資においても非常に重要な要素になる。

これが長期投資のジレンマです。

私はこの事実をどのように理解し、自分自身のなかで
どう咀嚼したらいいのか、正直よくわかりません。

ただあるのはジレンマだけ。

私自身は、人間には例えば次に出るサイコロの目を当てる
といった意味での予知能力はないが、明日の天気を予測すると
いった類(たぐい)の先見性はあると思っています。

やはり従来型の『長期投資理論』のどこかに誤りがあるとしか
私には思えず、人間の先見性を取り入れた新しい折衷的な
手法があってもよいのではないかと思うわけです。

では、今回はこのへんで。
(2009年2月17日)




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