パシフィックの破綻とREIT
皆さん、こんにちは。

今回は久しぶりにREITのお話をしましょう。

先日不動産ファンドのパシフィック・ホールディングスが
破綻しました。

実はこの破綻、一企業の破綻以上の意味を持っています。

同社はREIT2社の設立母体となっていました、
日本コマーシャル投資法人と日本レジデンシャル投資法人の
2社で、それぞれの運用会社に対するパシフィックの出資比率は
94%と100%でした。

REIT母体企業の破綻は今回が初めてではなく、昨年も2件の
破綻がありました(リプラスとモリモト)。

ただ上記2件の場合、いずれも母体企業であるリプラスとモリモトの
破綻時には、すでに代わりとなる母体企業があらわれ、大きな問題
になることはありませんでした。

そういう意味で、今回のパシフィックの破綻、そして同社に
代わる母体企業がいまだ見つからない現在の状況は、我が国の
REIT史上初めての現象といえます。

もちろん母体企業が破綻しても、それが即REITの破綻を
意味しているわけではありません。

REITは投資家保護の観点から、母体企業の債務から隔離されて
いて、母体企業が破綻してもREITが直接的な影響を受けることは
ありません。

ただREITが発行する債券や銀行借り入れは、母体企業の
信用において行われる色彩が濃く、現在のように母体企業不在
の状態では、不測の事態が起こらないとも限りません。

このような懸念から、株式市場は上記2REITに対する存続の
懸念を織り込み、同REITはパシフィック破綻の翌日に大きく
売りまれました。

さて問題はここからです。

実にタイミングよく、3月13日付の日経に下記のような記事が
掲載されました。

『金融庁がREITや証券会社の監視強化に動き出した。(中略)
将来の損失発生に備えた予防的な資本注入の可能性も模索する。
(中略)十日、不動産ファンド大手のパシフィックホールディングス
が会社更生法の適用を申請し、経営破綻した。金融庁は直接の
監督対象ではない同社の動静に目を光らせてきた。同社が二つの
上場REITの運営会社に出資、設立母体になっているためだ。
REITも巻き込んだ倒産劇に発展すれば株式市場に波及しかねない。
金融庁は上場REITを中心に資金繰りを細かく点検。懸念事項は
報告命令を出して問いただし必要と判断すれば早期の資金調達
などを促す(中略)次の母体企業などが見つかるまでは重点
監視対象とする』

パシフィックの破綻は3月10日ですから、翌々日の12日には
すでに上記記事の原稿は書かれていたことになります、日経記者
と金融当局者の間であうんの呼吸があったのか・・あるいは
記者によるある種の観測が含まれているのか・・その点は
さだかではありませんが、いずれにしても上記記事の効果は
てきめんで、翌日から上記2REIT銘柄は2日連続のストップ高
を付けております(3月17日現在)。

市場は、金融庁が上記2REITを破綻させないとみたの
でしょう。

もし仮に金融庁の思惑がそこにあるとすれば、上記2REIT
に限らず、同様に母体企業に経営上の不安を抱えた他のいくつかの
REITにも、救いの手が差し伸べられるということも十分考え
られます。

現在のREIT指数は806(3月17日終値)で、過去最高値から
80%以上下落しています、仮に現在の相場で分配金の予想利回り
を計算としますと、全銘柄の単純平均で12.7%となります。

http://www.japan-reit.com/page/data-top.html

一般的に株式の配当というのは、企業の業績が悪化すると減少
します。

たとえ高い配当金に注目して株を買っても、業績次第で期待した
配当を得られなくなる場合があり、特に現在のように、
企業業績が悪化傾向にあるときは、その傾向は顕著になります。

これに対しREITの場合、分配金の源泉である賃貸料収入は、
一般企業の売上に比べ安定しており、景気後退期でも分配金は
さほど下がることはありません。

従って現在のように信用上の不安から、REIT相場が下落する
局面では、REITの破綻を想定した相場が形成され、分配金の
予想利回りはかえって上昇することになります。

不動産業界を公的資金で救済することに対する抵抗が
予想され、上記記事のようにすんなりと『予備的資本注入』とは
いかないでしょう。

それでももしいまREIT平均に投資し、仮に今後REITの破綻がない
とすればどうでしょうか・・・

その場合は、長期にわたり12.7%程度のインカムゲインを
手にできる可能性があります。

あらゆる投資にはリスクがつきものですが、
このようなリスクの取り方もあっていいかもしれませんね。

では、今回はこのへんで。
(2009年3月17日)




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