■コカ・コーラとGM
みなさんはコカ・コーラはお好きですか。
私はあまり好きではありませんが、それでもたまには
飲みますので、好きな人の気持ちはわかります。
またコカ・コーラにはあまり興味はありませんが、コカ・コーラ
という会社には大いに興味があります。
調べてみるとコカ・コーラの歴史は長く、1886年にその原型と
なった飲料が発売されているようです。
昨日破産法の適用申請をしたGMは100年企業でしたが、
コカ・コーラはそれより古く120年以上の歴史があるという
わけですね。
この120年というもの・・二度の世界大戦があり、世界恐慌が
あり、サブプライム・ショックがあり・・・きっとコカ・コーラも
さまざまな苦難を経験してきたに違いありません、もちろんその間
消費者の味覚や嗜好も随分変わったことでしょう。
にもかかわらず、なぜコカ・コーラはいまだに優良企業で
あり続け、高い収益力を維持し続けることができるのか・・・
かつての優良企業だったGMが迎えた終末と比較して、私などは
不可思議さと同時に一抹の理不尽さを感じてしまいます。
確かにGMは、1980年代のオイル・ショック後に大きな過ちを犯し
ました、その点ではどのようにひいき目にみても、責めから逃れる
ことはできないでしょう。
また同社の経営トップは短期的な報酬増にかられ、
製造業としての本分を誤ったと言われてもしかたがないと
思います。
しかし一方でGMは100年にもわたって、米国の製造業をけん引し
てきたのも事実です。
GMは多くの消費者に夢と満足を与え、米国のみならず世界中の
人々の生活に貢献し続けてきたはずです。
さらには消費者だけでなく、日本の自動車メーカーなど競合他社を
刺激し、自動車そのものの進化に大きく貢献してきたと言えるで
しょう。GMのスピリットは自動車産業だけでなく、あらゆる製造業に
やる気と自信を与え続けてきたに違いありません。
そのGMが破綻し、コカ・コーラはわが世の春を謳歌する・・・
今私の目の前にコカ・コーラの2008年の損益計算書があります。
それによると
・Net Operating Revenues(一般企業の売上に相当)
USD 31,944M (日本円で約3兆円)
・Gross Profit(営業利益=上記から製造原価を控除したもの)
USD 20,570M(約2兆円)
・Net Income(税引き後利益)
USD 5,807M(約5500億円) |
となっており、前期も同社にとって素晴らしい一年だったこと
を物語っています。
なかでも同社の決算数値をみて驚かされるのは、その圧倒的な利益率の
高さです。
上記の損益計算書において、
(Gross Profit)÷(Net Operating Revenues)=粗利
となるのですが、実際の数値を当てはめますと
20,570M÷31,944M≒0.64 |
簡単にいえば、売上の64%が粗利ということで、逆にいえば製造原価は
売上の36%に過ぎません。
米国のメーカーは日本企業に比べ、粗利率が大きくなる傾向に
ありますが、それでも粗利率64%には驚かされます。
しかも作っているモノといえば単なる飲料に過ぎません。
この茶色の清涼飲料が世に出て既に120年が経過していますが、
この液体は私たちにいったいどれほどの貢献をしたというので
しょうか・・・
コカ・コーラの原液の製造方法はいまでも完全に秘匿され、
その製造方法は数名の経営トップしか知らないそうですね、
米国で製造された原液は、各国のボトリング会社に輸出され、
現地工場で炭酸水等と混ぜられ製品化されると聞きます。
へたに特許出願などせず、キーコンポーネントの製造法を
完全に秘匿し、120年間(ほぼ)その優位性のみによって
続いてきたマーケティング会社・・・それがコカ・コーラ
の正体ではないでしょうか。
私にはコカ・コーラのやり方を非難しようという気持ちは
全くありません、むしろ120年にもわたって、一貫した戦略で
高い収益性を維持する点は尊敬に値すると思っています。
それでもGMの最後と比べてみた場合、その社会的な存在意義と
言う点で、製造業としての原風景を色濃く残すGMの肩を持ちたく
なってしまいます。
かつてどれほど大きく社会に貢献したとしても、その進歩を
止めた時点で荒廃を始める企業群・・・日本の製造業にもみられる
競合の激しさゆえなのでしょうか。
一方で120年前と同じ製法を維持しつつも、いまだに優良企業
であり続ける企業。
では、今回はこのへんで。
(2009年6月09日)
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