■チューリップとバブルの正体
みなさんこんにちは。
どうも人間の経済活動とバブルは切っても切れない
関係にあるようですね。
記憶に新しいところでは、1980年代後半に起こった我が国のバブル経済、
その後米国で起こったITバブル、そして続いて起こった
証券化商品バブル(注)など・・・バブルはその頻度、規模の
点で益々活発になってきているように思います。
注)今回のバブル、私が勝手に名付けました。
一方で世界の経済史を振り返ってみますと、今の時代のバブルを
考えるうえで、有益な情報をいくつか得ることができます。
バブルの起源は17世紀初頭、オランダで起こった「チューリップ・バブル」
であると言われていますが、この事件をみますとバブルの本質が
よくみえます。
当時トルコから輸入される珍しいチューリップの球根に途方もない
値段がつき、特にある種の斑紋のはいった品種は高値で取引され、
なかには球根一つで家一軒買えるほどだったそうです。
16~17世紀のオランダはカルヴァン主義と呼ばれる、一種の宗教改革が
社会全体に浸透しつつあり、禁欲と勤勉が美徳とされていました。
そのような生活規範や宗教観をもつ当時のオランダ人が、
質素倹約の美徳を忘れ、なぜチューリップ熱に取りつかれたの
でしょうか、しかも例えばパン屋や鍛冶職人など、ほとんど
元手を持たない一般大衆まで巻き込んで・・・
一言でいえば、私はこれが人間の本質の一側面ではないかと
思います。
宗教にしても社会規範にしても、いわばそれらは後天的に
身につけたもので、人間が生まれながら持っているものでは
ないはずです、これに対しチューリップ熱はどうでしょうか。
形はチューリップの球根の買い集めという、いわば「実態」を
伴っていますが、その背景にあるのは、人間の心の中に
刷り込まれた「人より豊かになりたい」という強い欲望であり、
言い換えればこれは人間がもつ天性(Nature)の一つです。
考えてみれば人間はこの天性ゆえに、ここまで発展、繁栄する
ことができたのでしょう、『習慣は第二の天性』ということば
に反し、豊かさを渇望する人間の天性のまえに、結局
カルヴァン主義という慣習は無力だったということではないで
しょうか。
もう一点、このチューリップ・バブルが教えてくれることが
あります。
それは経済的発展とバブルの因果関係です。
オランダは16世紀スペインの支配下にありましたが、その後の
オランダ独立戦争の結果、スペイン領から脱し独立を果たす
ことになります、その過程で東インド会社の成功にみられるように
アジアに進出し、そして海上帝国へと急成長してゆきます。
オランダ海上帝国の全盛期は16世紀後半から17世紀なかば
あたりまでのごく短い期間に過ぎませんが、チューリップ・バブル
も17世紀前半(1610年~1640年あたり)に起きており、オランダの
全盛期とほぼかさなります。
経済的な発展によって世界中からマネーが流れ込み、それが
バブルを誘発する、言い換えればバブルは経済発展の一側面
ということではないでしょうか。
このようにバブルの原型であるチューリップ・バブルから
私たちは多くのことを学ぶことができますが、同時に今後の
バブルについて考えるうえで、このことは重要なヒントを与えて
くれます。
まず経済的なバブルは今後も決してなくならないという
悲しい予想です、今回のバブル破綻の経験から、各国当局はさまざまな
規制の導入を目論んでいますが、カルヴァン主義がそうであった
ように、いかなる規制も人間の天性を抑え込むことはできないのでは
ないでしょうか。
次にバブルは経済的に大きな発展をみせる国で起こるという点です、
米国の次に経済の覇権を握る国はどこなのでしょうか・・・あるいは
米国が経済覇権を維持するのでしょうか。
最後に経済の動きは年々加速しているように思います、17世紀の
情報は馬や人力によって伝達されていましたが、今では回線の中を
流れる電気信号に置き換わっています。
さらに実体経済の規模に対するマネーの総量も急速に増えており、
結果的に今後益々バブルはその頻度、規模において増殖を続ける
ことになるのではないでしょうか・・・
次のバブルはどうのような形で私たちを巻き込んでゆくのでしょうか、
資産運用を行う全ての人にとって、この問題は常に意識して置くべき
テーマではないかと私は思います。
では、今回はこのへんで。
(2009年8月18日)
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