■ランダムウォークと経済物理学
みなさんこんにちは。
「ものには『本来の価値』があるのか」
私はよくこういうことについて考えます。
ここでいう『本来の価値』とは、市場で起きている全ての
要素を合理的に織り込んだ価格という意味です。
例えば金(Gold)・・・
ほんの5年前、1オンス=300ドル台に過ぎなかったものが、
今では1100ドル台で売買されていて、しかも誰一人として
その価値に疑問を持つ人はいません(疑問をもたないから
売買が成立するわけですから・・・)。
仮に金に『本来の価値』というものがあり、常にその
『本来の価値』で売買されているとすればどうでしょうか。
この考えに基づきますと、数年前の金の『本来の価値』は
300ドル台だったが、ドルに対する信認の低下、市場に浸透しつつある
インフレ期待、中央銀行による金保有の期待・・・このような
金に対する需要を市場が冷静に織り込んだ結果、金の『本来の価値』
は現在の1100ドルまで上昇したということになります。
注)この考え方は「効率的市場仮説」と呼ばれていて、
現代のポートフォリオ構築のベースになる考え方です。
この考え方は一見正しいようですがが、例えばこの考えに
沿ってリーマン・ショック時の金の値動きを説明することが
できるでしょうか。
あるいは同時期に140ドル台から30ドル台まで下げた原油の
値動き、さらには一年で1/4に下落した新興国株の値動きを、
この効率的市場仮説で説明できるでしょうか・・・
私は市場は「効率的市場仮説」で説明できない、さまざまに
複雑な要素で満ちているように思います。
その一つは間違いなく人間の心理で、人間の心理は
常に相場に慣性を与え続けているのではないでしょうか。
簡単にいえば常に相場は『本来の価値』を無視し、極端から極端に
振れやすいということです、昨年のリーマン・ショック時に従来型の
ポートフォリオが想定外の被害を受けた一因もここにあるといえる
のではないでしょうか。リーマン・ショック時に限らず、
相場の歴史は、ある意味このような極端の連続だったとすら
いってよいでしょう。
市場を「効率的」とみなす『現代ポートフォリオ理論』は、
そもそも人間の心理が相場に与える影響を無視して体系化され
たものですから、『現代ポートフォリオ理論』で、
極端に振れやすい人間の心理が織り成す複雑な
相場に対応することなど、そもそも不可能だという考え方も
あるわけです。
これに対し、今新たな発展をみせつつある『経済物理学』の分野では、
人間の心理によって、市場が想定以上に激しく動くメカニズム
が徐々に解明されつつあります。
百年に一度の相場下落が、なぜここ10年で何度も起きて
しまうのか、そしてなぜその都度投資家は手痛い被害を
受けるのか・・・それを解くカギは『経済物理学』に
あるように私は思います。
例えば私はマネージド・フューチャーズを、『経済物理学』の
利用事例の一つだと考えていますが、『経済物理学』は、今後の
私たちの資産運用を一変させてしまうのかもしれません。
(ご参考)私の過去のコラム
「マネージド・フューチャーズの研究」
https://www.ginzafp.co.jp/info/090407.html
では、今回はこのへんで。
(2009年11月10日)
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