2009年のいまごろ
みなさんこんにちは。

私は毎日かかさず新聞や雑誌のスクラップをしている
のですが、過去の記事を繰ってみていると、その都度
必ず新しい発見をします。

例えば一年前ころの記事。

『欧州、資本注入枠37兆円』(2008.10.15)
『米、まず大手9行に注入』(2008.10.15)
『広がる不安の連鎖』(2008.10.16)
『世界同時株安再び、見切り売り拡大』(2008.10.17)
『日米欧時価会計一部凍結へ』(2008.10.17)
『中国不動産市況が悪化』(2008.10.23)
『ユーロ安ショック走る』(2008.10.23)
『新興国マネー流出加速』(2008.10.24)
『米、実体経済の悪化深刻』(2008.10.31)
『米、住宅投資不振続く』(2008.11.26)
『日米欧時価会計一部凍結へ』(2008.10.17)
『中国製造業が急減速』(2008.12.16)
『株急落逃げ惑うマネー』(2008.12.18)
『日米欧デフレ懸念強まる』(2008.12.25)
『(日本)生産減少底見えず』(2009.1.22)
『米住宅、浮上の兆しなく』(2009.1.23)


こんなおどろおどろしい太文字を、紙面のあちこちに
みることができます。

一年前と言えば日経平均が8000円台で、さらに7000台に
突入しようかという勢い、まさに底なし沼にはまったかの
ような状態でしたね、巷では日経平均5000円などという声も
よく聞かれたものでした。

また原油は40ドル台前半、銅は3000ドル台、アルミは1300ドル台
といった状態で、いずれも2008年最高値からみると半値から
三分の一程度に落ち込んでいました。

唯一金は900ドル台に乗せる勢いをみせていましたが、
それは行き場を失ったマネーが、最終的な逃避先として
金を選んだ結果にすぎませんでした。

そんななか各国の当局は懸命に底割れ回避の対策を
行います。

中国4兆元、米国8000億ドル、日本15兆円・・・

各国が行う緊急経済対策と日米のゼロ金利政策、さらには
欧米の金融機関への資本注入・・・まさに出来ることは何でも
やるという強い意志で、あらゆる対策を実施しました。

その結果2008年末から2009年初頭にかけ、早くもいくつかの
明るい「兆し」が現れています。

例えば2008年12月、米国の中古住宅販売は7年ぶりの
急増をみせています、あるいは世界の用船料(船荷運賃)は
2009年初頭から急上昇し、例えばバルチック海運指数は2009年
1月27日時点で1000ポイントを超え、前月につけた直近最安値
から50%以上の上昇となりました。

一方で米国の住宅価格を示す「ケース・シラー住宅価格指数」
をみると2008年11月実績は、対前年同期比でマイナス19.1%と
大幅な下落となりましたが、シカゴ市場に上場する先物指数は、
すでにこの時点で2010年央の底入れを示唆していました。

当時の紙面を仔細にみますと、ごく小さい扱いながらも、
このように市場が徐々に好転している兆候をみつけることは
できたわけです。

さらに当時の日経を繰ってみますと、いまからちょうど1年ほど
まえの1月30日付で以下のような記事が掲載されています。

『エコノミスト(日本経済に対して)厳しい見方、底入れは
来年(2010年)』

『エコノミスト十人にアンケートし、景気が底入れして回復
に向かう「谷」の時期を聞いたところ、三人が「年内(2009年)
と答えた。?中略?残る七人は2010年以降の底入れを予測。』

注)( )内は私の補足

アンケートに答えたのは以下の十名で、( )内は各氏による
「景気の谷」の予測です。

・大和総研 原田氏(2009年10月)
・日興シティグループ証券 村嶋氏(2009年10月)
・BNPパリバ証券 河野氏(2009年11月)
・ニッセイ基礎研究所 斎藤氏(2010年1月)
・三菱UFJ R&C 中島氏(2010年2月)
・みずほ総研 河野氏(2010年3月)
・三菱総研 後藤氏(2010年6月)
・日本経済研究C 竹内氏(2010年6月)
・野村証券 木内氏(2010年11月)
・クレディ・スイス証券 白川氏(2012年12月)


なかには2012年を底と見たアナリストもいましたが、
概してさすがに冷静に市場をみていたといえるのでは
ないでしょうか。

一般の投資家でも、もし彼らと同程度の冷静な目で市場を
みることがだきていれば、先ほどあげたような市場の「兆し」を、
しっかりと受け止めることができたでしょうし、またその場合、
昨年の今頃は株やコモディティの絶好の仕込み場と映った
はずです。

ところが実際はどうだったでしょう・・・

多くの個人投資家は日経平均5000円、NYダウ5000ドルといった
巷の声に引きずられていたように思います、買いに向かった人は
ごく一握りだったのではないでしょうか。少なくとも私の記憶の
限りでは、大半の個人は相場の先行きに対し極めて悲観的でした。

ではなぜ一般の個人投資家は、往々にしてこのように
行きすぎた声に引きずられてしまうのでしょうか。

私は以下の二つの重要なポイントがあると思います。

まず第一に、そもそも人間は常に昨日の延長線上でしか
明日をみようとしないという点です。

上記に当てはめて考えますと、サブプライム以降の急激な
相場変動に慣らされ、足元で起きる兆しを、冷静に
みることを放棄してしまうという現象が起きていた
ように思います。

二つ目の重要な点は、やはり商業主義に支配された
マスコミの影響が大きいのではないでしょうか。

大衆の不安をあおることは、大衆の射幸心をあおるのと
同じくらい大きなビジネスになります、私たちはマスコミを
含めた情報配信側(もちろんこれには書籍類も含まれます)
には、常にそのような「煽りのバイアス」がかかっているという
ことを意識しておく必要があるのではないでしょうか。

実際にはこの二つの要因が相からまるようにして、
大衆の心理は極端から極端へブレるのでしょう・・・

今までもそうだったように、きっとこれからも相場は
バブルと崩壊を繰り返しながら続いてゆくことでしょう。

私たちは常に自分たちが、ブレやすい存在であるという現実
をしっかりと認識しておくべきでしょうし、また市場で
起こっている僅かな「兆し」を見逃さないよう、常に経済を
冷静に見る姿勢を保つ必要があるのではないでしょうか。



では、今回はこのへんで。
(2010年1月14日)




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