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ギリシャ問題の行方
みなさんこんにちは。

2010年がはじまってまだ二ヶ月と経っていませんが、
米国発「金融規制案」問題、中国発「金融引き締め」問題に続き、
欧州初「ギリシャ信用不安」問題と、株式相場への逆風が
続いています。

私がもし「この中で最も深刻な問題はなにか?」と聞かれましたら、
「ギリシャ信用不安」問題とお答えします。

ギリシャ一国のGDPは30兆円強ですから、万一同国が破綻する
ようなことがあっても、世界経済にそれほど深刻な影響は
与えないでしょう・・・がもし欧州の他の懸念国(アイルランド、
ポルトガル、スペインなど)に危機が連鎖するようなことが
あれば、それはもう欧州だけの問題ではなく、まちがいなく
世界経済の全体の危機といってよいでしょう。

私は現在の欧州の状況をみていますと、1997年に始まった
アジア通貨危機の悪夢を思い出してしまいます。

1997年にまずタイが危機に陥り、株安・通貨安に見舞われIMFへの
支援要請に追い込まれました、続いてインドネシアがソロスらの
ヘッジファンドの標的になり、その後IMFへ支援を要請。

危機はさらにインドネシア向け債券を大量に保有していた韓国に波及し、
同国から急速に外貨が流出、通貨安・株安に見舞われてギブアップ
となりました。

IMFに支援要請を行ったのは上記3国のみですが、株安・通貨安は
アジア全体に及び、我が国で1998年に起きた金融不安の遠因も、
アジア危機にあるといってよいでしょう。

この問題はアジアだけにとどまらず、1998年のロシアのデフォルト
や1999年のブラジル通貨危機など、世界全体へ拡散してゆきました。

果たして今回のギリシャ不安は欧州危機に発展し、再び世界経済を
揺るがすのでしょうか・・・

ことの類似性から考えて、私たちはアジア危機の総括は重要だと
思います、では震源地タイの通貨危機がアジアの危機に連鎖する要因は
どこにあったのでしょうか。

私はタイで起きた通貨危機がアジア全体に拡大する過程で、
以下のような「危機に至る必然」があったと考えています。

1.初動の遅れ
韓国は多少事情が異なりますが、タイとインドネシアは外貨準備
の枯渇後、いわば追い込まれた形でIMFに支援を要請しています。
この初動の遅れが危機を拡大した側面があるのではないでしょうか。

2.域内協調体制の不備
当時のアジアは地域内の協調体制に欠け、地域が結束して危機に
対応するという姿勢に欠けていたといえるでしょう、当時アジアの
リーダーであった日本は主導的役割を果たしましたが、危機が拡大
した後の消火活動に終始した観がありました。

3.ヘッジファンドによる個別撃破
経済に弱点や矛盾を抱えた国が、個別にヘッジファンドの
標的にされました。トリガーはヘッジファンドでしたが、
本質的にはアジアに蓄積された経済の矛盾が原因だったといえる
でしょう。


つまり「ヘッジファンドが矛盾を突き、域内協調体制の不備から
初動が遅れ、さらに危機が連鎖していった」一言で申し上げれば
このようになるのではないでしょうか。

翻って現在の欧州はどうでしょうか。欧州はアジアの轍を踏む
のでしょうか・・・

私は当時のアジアと現在の欧州の最大の違いは2だと思います、
現在の欧州は、EUという強固な地域共同体によって結び付けられて
います、また共通通貨を持つEUR圏の各国は、自国の通貨に関する
問題として、ギリシャを見殺しにすることはできないでしょう。
EUが当事者意識を強く持って臨むなら、その初動は迅速に採られる
のではないかと思います。

仮にEUによる支援が実現しなかったとしても、EUとIMFの距離感から
推測し、IMFによる初動もまた、アジア危機に比べ迅速なものになる
のではないでしょうか。

一方で依然ヘッジファンドの力はあなどれないものがありますが、
EUの支援であれIMFの支援であれ、それが時宜を得たものであるなら、
投機マネーも積極的に動きづらいはずです。

以上の点で私自身はこの問題に対して、それほど悲観はして
おりません、が一方でギリシャ問題は同国が国債の発行を迫られる
3月が勝負といわれています。

私たちもやや「危機慣れ」した観はありますが、この問題は決して軽視
すべきではなく、少なくともここ数カ月、私たちはこの問題に最大限の
注意を払い続けるべきではないでしょうか。



では、今回はこのへんで。
(2010年2月16日)




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