REITファンドの効用
みなさんこんにちは。

REITの平均分配利回りが4.5%なのに、
なぜREITファンドになったとたん、分配率が18%にも
なってしまうのか・・・

皆さんの多くは、このような素朴な疑問をお持ちでは
ないでしょうか。

例えば手元に「ラサール・グローバルREITファンド」の
5月度のレポートがあります。

このファンドの5月末時点の基準価格は4,573円、
直近の分配金は一口当たり70円となっています。

仮にこのファンドを皆さんが100万円分買いますと、
毎月もらえる分配金は約15,300円(税引き前)になり、
一年に換算しますと約183,000円(同)となります。

銀行の定期預金で0.3%、日本の国債で1.0%、為替の変動リスクが
ある米国債ですら3%弱・・・インカムゲインがとりにくい
このご時世に、なんと分配率18%の商品です。

果たして世の中に、こんなおいしいお話が転がっている
ものでしょうか・・・

今回はそんなお話をしましょう。

まずこのレポートをみてゆきますと、2ページ目に
「組み入れ不動産投信の予想分配金利回り(年率換算)」という
表が掲載されています。

なかみの数字をみますと

・アメリカ(3.45%)
・カナダ(5.98%)
・オーストラリア(5.93%)
・欧州(6.59%)
・イギリス(4.06%)
・その他(4.97%)


で、ファンド全体で4.37%とあります。

これ、どういう意味か解りますか?

このファンドに限らず、REITファンドは自らREITを運営
しているわけではなく、上場された不動産投信(すなわち
REITです)を購入しているだけです。

上記「ファンド全体で4.37%」といいますのは、このファンドが
組み入れているREITの、平均分配率を意味しているわけです。

仮に皆さんがこのファンドに100万円投資した場合、組み入れている
REITから受け取る分配金は100万円の4.37%相当額ですから、43,700円と
いうことになるわけですね。

では、組み入れているREITからは43,700円しかもらえないのに、
なぜ皆さんは183,000円の分配金をもらえるのでしょうか・・・

この疑問を解くために、これらREITファンドの分配金は
何を原資にして支払われるか、この点をしっかり理解して
おく必要があります。

REITファンドの分配金の原資は、以下のように分解する
ことができます。

1.組み入れREITから得られる分配金
2.組み入れREITのキャピタル・ゲイン(値上がり益)
3.為替変動による利得


上記の43,700円は1に相当します、一方で183,000円と43,700円の差額、
即ち139,300円は2と3の合計を原資としているわけで、
言い換えればこれは、『組み入れREITの値上がり益と為替の差益』です。

逆に言えばこれが得られなければ、皆さんご自身の持ち分を
取り崩して分配を受けていることになります。

これは純粋な資産運用という視点からみれば、全く合理性に
欠いた投資ですし、専門性が高い人ほど、この手の商品には
厳しい評価を下す傾向にあるといってよいでしょう。

私自身も全く同感なのですが、一方で多くの個人が
ワールドREITを購入する理由もよく解ります。

個人が資産運用を行う最大の目的は、もちろん自らの資産を
増やすことにあるわけですが、私自身は、それ以外に
メンタルな効用を人は求めているのではないか・・時々そんな
ことを考えることがあります。

そして投資家のメンタルケアという観点でみれば、このように
一見合理性に欠く金融商品も、一概に切り捨てることはできないと
いう気もするわけです。

私はいままで多くのお客さんと、資産運用のお話しをして
参りましたが、人はいくら多額の資産を持っていても、
それをとり崩しつつ生きてゆくことに、大きなストレスを
感じるように出来ているようですね。

例えば10億円の資産を持っている人がいるとしましょう。

この人は、毎年1000万円づつ使っても100年は生きてゆけますので、
はた目にはどう考えても一生お金には困りそうもないのですが、
このような人でも定期的な収入が無ければ、お金を思いきって
使えないという心理が強く働くようですね。

このように人間は理屈ではなく、むしろ心理的な要因で、
お金の使い道を狭める傾向にあるようです。

私は本来お金は人生を楽しむため、有意義に使うべきだと
思うのですが、多くの方にとって、お金を増やすこと、残す
ことが目的になってしまっているのは、なんとも悲しい
気がいたします。

そういう観点で、定期分配型の商品をみますとどうでしょうか。

確かに上記のワールドREITは、いびつな商品には違いないのですが、
保有者に定期的な収入をもたらし、それがその人の気持ちを楽にし、
なおかつ生活を豊かにするのであれば、私はそれもアリだなと
思うわけです。

ただ少なくとも私たちのようなアドバイザーは、
ワールドREITが持ついびつさを理解したうえで、
その効用を引き出してあげるべきだと思いますが・・・

その点でこの商品は、医者が投与する擬似薬
に似ているかもしれません・・・

では、今回はこのへんで。
(2010年7月6日)




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